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ウルフズ・ワンナイト・スタンド ep-9 #ppslgr

◆前回までのあらすじ

スーパーロボット、ソウルアバター(略称:SA)乗りロックミュージシャンのリキヤ。彼を手伝うD・Aは襲撃者たちへ反撃しつつ、洗脳者たちの救出方法を見つけ出す。続けて砂漠に潜む未知の敵に探りを入れようと動くが、返り討ちにあって消息を絶った。残された三人は、姿を見せた巨大戦艦に相対する。

 ◆

 傾きつつある太陽を背に、紫電の獣が空を行く。標的の漆黒エイ型飛行戦艦はゆるやかに高度を上げながら衝撃波を放った。微風程度の振動が砂漠とリキヤ、アイネ、A・Zの肌を震わせる。

 ラフィングジェミナスは紫電獣を追いかけ、戦艦めがけて疾走する。艦表面へ無数に突き出した針状の物体を拡大すると、果たしてそれは機関銃のようなものだった。

 戦艦の鼻先で紫電の獣達が散開、それらの兵装へ向けて突進する。だが着弾する直前で見えない障害物に阻まれた!

「バリアか」
「やっぱり無防備じゃないわよね……」

 紫電獣達は身を捩ってバリアをかわそうとするが、網で捉えられた魚の如く跳ね回るばかり。やがてその身を形作る雷光が衰えていき、最後には煙となって消えた。

 全ての紫電獣が片付いたとみるや、エイ型艦の上部ハッチが展開し白煙を吹き上げた。垂直に上昇したそれらは次々に光を放って姿勢制御し、一気に加速する。その先には冥王機!

「奥の手を切る。ミサイルはまかせて」

 アイネ機が砂漠をかけながらくるりと回転し、バックパックを切り離した。ジェミナスはそれを蹴ってブーストを噴かし、戦艦の直下へ駆け込んでいく。

 一方残されたバックパックは即座に変形し、砂地に着地した。

 ラフィングジェミナスの一部としての優美なデザインを脱ぎ捨て、工作機械のような無骨さを顕にした人型機体が大地を踏みしめる。背部にマウントされた大型銃器を取り出して両手で構えれば、リキヤを狙うミサイル群を照準し発砲!リズミカルな重低音とマズルフラッシュがあたりを照らし、次々にミサイルを撃ち落としていく!

 その噴煙を切り裂いて、リキヤの放った紫電獣が再度戦艦へ向かって飛行する。散開した先ほどとは異なり、まるで犬ぞり列の如き突撃陣形!

「貫けぇえ!」

 加勢とばかりに冥王の運指が速度を上げ、威力を伴った音波が戦艦のバリアを正面から叩く。不可視の盾はテスラコイルそのものの轟音を立て、大きく波打った。

 そこへ刺突剣の如く突き刺さる紫電獣隊!一匹、二匹と爆ぜていくがその爆発によりシールドの波が、うねりが大きくなっていく!

 獣のあぎとが波を越えるかと思われたその時、艦首が白光を放った。辺りを染めるほどの光量が空を一直線に貫き、紫電獣達を見る影もなく消し飛ばす。

 同時に全身の針がうぞうぞと蠢き、戦艦へ肉薄するライフィングジェミナスと支援機、後方の複合重機巨人をも照準し、発砲する。大口径弾の雨あられが面となって降り注いだ。

 A・Zは機体装甲でそれを受けつつ砂丘の影へ飛び込んだ。一瞬の交差で前面装甲がへこみだらけになっている。

「さすがの火力だな」
「接近すればどうにかと思ったけど、甘かったわ」

 アイネもまた弾雨に追い立てられ、艦影から外へ追い出されていた。身を寄せた岩肌がガリガリと削られていく。

「リキヤさんを死守するしか無い。僕もアイネちゃんも、あれのバリアを抜ける兵装がない」
「D・Aの置いていったドローンは?」
「すぐに蜂の巣になっちゃうよ」

 ふいに弾幕が止んだ。

「まずい……!」

 アイネが警告を発した刹那、戦艦の熱線照射装置が不気味に脈動した。艦全体を動かして照準したその先には砂丘がひとつ。その影には、先程無力化された棺桶型コックピットが無数に横たわっている。

「撃たせるかッ」

 A・Zは咄嗟に背部ブースターを切り離し、アンカーランチャーへ接続。アンカーケーブルを取り外し、上空艦へ向けて射出!即席の質量ミサイル弾が発砲間近の熱線照射装置を襲う!

 だがまたも不可視の盾がこれを妨げる。ブースターの力強い噴射も盾を超えることはできず、推進力を失った残骸はあっけなく落ちていった。

「駄目、だよね。やっぱ!」
「いいや。時間は貰ったぜ」

 艦主砲が再び鳴動する。その射線上に冥王機が、紫電をまとって立ちはだかった。急速に氷塊が成長、城壁を築き上げる。

「リキヤ、そこを離れて!」
「無茶だって?そうでもねえよ。頑丈さには自信ありだ」
「駄目だ!頼む逃げてくれ!」
「あっちは待たないってよ。……言ったろ。客に手は出させない」

 リキヤは全翼機を正面から見据えた。禍々しい口腔が赤く染まっている。まもなく白光が迸り、自身も含めて薙ぎ払っていくことだろう。
 1射なら間違いなく耐えられる。後のことは、耐えてから考える。リキヤは静かにギターを奏で、砲撃を待ち受けた。

 そこへ、白く丸いものが飛び込んできた。巨大な貝殻のようなそれはくるくると回りながら落ちてきて、リキヤの目の前の砂地に突き刺さった。

 それはただ一つ残った野外ステージの残骸。SAを覆って余りあるほどの大屋根だった。

 リキヤはそれが飛び来たった方角を仰ぐ。ウィンチをぶら下げた数機の大型ドローンがふらふらと飛び、すぐさまエイの迎撃機銃で撃ち落とされた。

「……粋な投げ込みじゃねえか」

 冥王機は天蓋を引き寄せ、その背に負った。

「これでお互い盾持ちだな、エイ野郎」

 深く、深く呼吸する。そして

「次の曲は!ジュピタァーズ!ゲイズッ!」

 熱線が放たれた。弦と三首狼頭が吠えた。天蓋は紫電によって包まれ、貝殻のごとき表面で複雑な雷光がうねる。

 その大屋根が熱線を受けた。アイネとA・Z機の計器は熱と光で測定しきい値を超え、リキヤを完全に見失う。二人は頭上の灼熱地獄に焙られながら息を呑むしか無かった。

 白光が晴れる。砂漠の砂がそのかすかな水分までも蒸発させられ、辺りを白く烟らせる。黒いエイは霧の向こうを覗くように機体を揺らした。

「いいこと思いついたんだ」

 静かな旋律が空気を揺らす。水蒸気煙が即座に凝固し、天気雨となって乾いた大地を濡らした。

 紫電をエンチャントされた盾は、その雨を余すこと無く弾く。白く巨大な傘の下から、冥王機のカメラアイが獰猛な光を放った。

「手伝ってくれ。そろそろライブの主導権を返してもらおうぜ」

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 【目次】

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本稿は以下の物語の二次創作小説です。スーパーロボット活劇!

筆者は以下の物語を連載中です。


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