見出し画像

ウルフズ・ワンナイト・スタンド ep-8 #ppslgr

◆前回までのあらすじ

スーパーロボット、ソウルアバター(略称:SA)乗りロックミュージシャンのリキヤは、襲撃者達を操る非道洗脳装置に怒り心頭し、演奏を再開する。その音は五感断絶された襲撃者達を震わせ、ついには洗脳を乱して無効化した。勢いづいたD・Aは砲撃塔を破壊しつつ、次なる行動に移った。


 ◆

「じゃあ結局、彼らを機体から引きはがすってことか」
『乱暴にやるんじゃないぞ。いわばSAからのパイロット摘出手術じゃ』

 機体操作をするD・Aの横に、図入りの資料がホログラフ表示される。そこには棺桶型容器に拘束された男性の写真に細かく脚注が入り、解体方法が記されていた。

『ハウツーを簡単にまとめて送った。お前さんかA・Zの機体ならできるはずじゃ』
「ありがとう。助かった」
『なあに、高くつくだけよ!』
「一杯奢る、じゃすまなさそうだね。覚悟しておく」
『で、援軍は本当にいらんのか。お前さんの支払い次第じゃろうが、そっちまで行けるもんは揃っとるぞ』
「援軍のあてはできた。問題ないよ。それに、隠れてた相手の影も見え始めた」

 そう言ってD・Aはレーダーを見つめる。砂漠のあちこちに口を開ける爆発クレーター。その一つに影が浮かんでいた。

「リキヤさんの音が干渉してくれたのかもしれない。さっきまでは見えなかったのに」
『まぁ深入りし過ぎんようにな。何かあれば言ってくれ』
「ありがとう、J・Q」

 通信を切るとD・Aは戦場に散らばったドローン群の状態チェックをはじめる。ダメージ、残弾、合体のためのエネルギーは残っているか。大方問題がないことを確認すると、改めてレーダーの影と向き合った。

「さて。どうせロクでもないやつが隠れているんだろうが」

 ◆

「これで最後よ。今はね」

 ラフィングジェミナスが棺桶数個を手に砂丘の影へ滑り込む。待っていたA・Zが慎重な手付きでそれらを受け取った。

「残りのやつらには、効果が薄いのかな」
「うーん。曲の好みが違うだけかもしれないわよ?」

 アイネとA・Zは砕けた調子で言葉をかわす。その視線の先で、また一機が粒子化した。すでに6,7割のSAがリキヤの演奏で粒子還元した。いまだに歩みを止めない機体もいるが、ノロノロとした動きのおかげでリキヤにたどり着くものはいない。

 静かな旋律を奏でながら、リキヤは視線操作でセットリストを呼び出す。

「だったら曲風を変えるぜ。リクエストはあるかい?」
「曲風を変えるならいっそ、クラシックとかにします?」

 そこへノイズの交じるD・Aの通信が割り込んだ。

「お疲れさん。どうだい、J・Qのほうは?」
「ばっちりだ。いまそっちに手引書を送った。それともう一つ。君の感じた異音の正体を見つけたかもしれない」

 一同の眼前に解析データーが表示される。複数の爆発クレーターの中心、ひときわ大きいその中心に影が現れた。霞のようなそれは長い部分で300mを超える楕円形を成していた。

「でかいな」
「振動が小さいんで確証はないけど、かなり大型の機械みたいだ。連中の母艦かもしれないね」
「……こんな大物を見つけられなかったなんてね。相手のステルス性能は相当のものってことか」
「おそらくその通りでしょう。もう少し調べてから近づい―――」

 彼方の地平が光った。傾きつつある太陽よりなお眩しいその光は一瞬あたりを照らし、遅れて轟音と地響きが一行を襲う。土砂混じりの噴煙が高らかに上がった。

「D・A?!いまのは!」

 返事がない。A・Zは素早くコンソールを叩くが、先程まで通じていた通信は一切捉えられなかった。

「……やられたの?」
「いや」

 A・Zは足元の機体を見下ろす。D・Aが寄越したキャタピラクレーン車が駐機している。無人のコクピットでは緑の光が明滅していた。

「ドローンの制御は失われてない」
「でも彼の位置が掴めない。無事ではないでしょうね」
「とりあえず、生きてる。と思う」

 A・Zが言いおらないうちに機体が警告音を発し、レーダー上に巨大な物体が映し出された。位置は爆発が起こった方角、そしてD・Aの報告と一致している。

 三人がその噴煙を見上げると、その茶色い膜の中から巨体が浮かび上がった。

 黒いエイのようだった。黒く光る滑らかな全翼機がゆっくりと浮上していく。地上を穿ったと思われる熱線照射装置が余熱で赤々と染まっている。ステルス性能のためと思われる曲線装甲がばたばたと展開し、その機影は見る間にハリセンボンのごときものへと変じていく。

「……戦艦かよ」
「なるほど。確かに母艦だわ」

 黒色戦艦が滲むように発光する。艦から放射状に波動が放たれ、砂地の上を強く震わせた。

 A・Zが咄嗟に足元の棺桶郡を見下ろすと、操作パネル部分が激しく明滅していた。

「あいつ何かしてる。ほっとくとこの人達がやばいかもしれない」
「上等!俺のリスナーに手出しはさせない!!」

 冥王が運指を早め、静かな曲調はなめらかに転じて激しさを増す。紫電が唸りを上げてギターより迸り出、運指と共に弦から弾きだされる!
 意思持つ雷光の獣が数匹、数十匹と空をかけ、黒きエイを食らいつくさんと踊りかかった!

 ◆

 【目次】

 ◆

本稿は以下の物語の二次創作小説です。スーパーロボット活劇!

筆者は以下の物語を連載中です。


サポートなど頂いた日には画面の前で五体投地いたします。