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ウルフズ・ワンナイト・スタンド ep-4 #ppslgr

◆前回までのあらすじ

 スーパーロボット、ソウルアバター(略称:SA)乗りロックミュージシャンのリキヤがリハーサルの最中、何者かの襲撃を受けた。護衛のアイネが迎撃に出るとモグラ型巨大SA達に遭遇する。1体を片付けたアイネだったが、避難するA・Zの前にも同様の機体が出現するのだった。


「うっそ、新手?!」

 A・Zは慌てて輸送車両列のルート変更指示をタッチモニターに走らせる。行く先にはアイネが遭遇したものと同様の砂塵が3つ吹き上がっていた。指示を受け、レーダー上に緑の光点で示された無線誘導式車両群とその予定進路を表す光線がゆるやかに方向を変えていく。しかし赤で表示される砂煙の予想進路が、ゆっくりと緑線に重なった。

「こちらA・Z。おかわりが来た。そんでもって通せんぼされてる」
「こちらアイネ。確認した。悪いけど援護に行けそうにない。振り切って」
「アイ、アイ」

 砂丘の谷あいに続く走りやすい道をポイントし、車列は加速していく。A・Zはモニタで後続を管理し、振り返ってリアガラス越しに全車列を眺めた。輸送車両群は悪路での高速走行にも関わらず安定した走りでついてくる。だがそれは砂煙も同じだった。肉眼ではただの砂煙だが、レーダーの赤色予測進路表示はぴったりと追いすがってきている。

「こりゃだめだな」
「撒けないかい?」
「無理そうだ。俺がしんがりになって車を逃がす。D・A、援護頼む。アイネちゃんは敵の情報くれ」
「了解、ドローンをそちらに回す」

 輸送車両の貸し出し元への連絡。緊急時の走行ルート設定等を手早く済ませると、A・Zはサンルーフの引き戸を開けて車上へ躍り出た。

「マテリアライゼーション!」

 車両の屋根を踏みしめ、A・Zは鋭く右腕の端末を掲げる。画面には薄緑色に光る『START』の文字!その輝きがA・Zの全身を包んで浮かび上がる。一際強い発光と共に、細身の機械巨人が砂漠の青空の下へ躍り出た!

 それだけではない。線の細い巨人の周囲に4つのパーツが順次顕現していく。巨人は回転しながら右拳を振るい、レーザートーチを。左拳を払い、アンカーランチャーを。右足刀を打ち、左回し蹴りを放ちながらサンドモービル脚を装着する!
 砂地に着地したとき、その体躯は重機の複合体と化して一回り大きくなっていた。

 モグラSA達が砂煙を割って姿を現す。その鼻先は3点着地したA・Z機にぴたりと向けられている。短い腕と長いかぎ爪を大きく広げ、抱締圧殺せんとばかりに歩み寄る!

「先手必勝!」

 複合重機巨人の足、そのふくらはぎにマウントされた板状機構が倒れて砂地を掴み、カンジキ型無限軌道と化して土砂を巻き上げる。
 同時に左腕アンカーランチャーを手近なモグラSA頸部に照準、射出!アンカーヘッドは猛禽の足指のように巨獣の喉笛に食らいついた!

「おりゃあッ!」

 怒号一喝、体ごと左腕を回転させてワイヤーを引く。モグラSAはたたらを踏んで耐え、かぎ爪で金属索を切り捨てようと手を伸ばす。だがA・Zはその隙を与えない!

 複合重機巨人は背部スラスターをふかしてさらに強くワイヤーを引く!無限軌道とブースト炎が砂を巻き上げ、小規模の砂嵐が起こる!
 モグラSAはあまりの引張力に、地を踏みしめてあらがう!残りの2機がようやく事態に気づいたのか、のろのろと爪を掲げてワイヤーへ接近し始めた。拮抗する張力に金切り声を上げるワイヤーへモグラのかぎ爪が迫る!

 出し抜けに、ワイヤーが泣き止んだ。細い金属は緩やかにたわみ、モグラたちの爪の下へ垂れる。引張力を失ったモグラは自らの力で前に向かって倒れ込んだ。

 額を寄せ合うように頭を突き合わせるモグラ達、その頭上を複合重機巨人が跳んでいく。左腕アンカーランチャーの巻き上げ機構に導かれ、背部スラスターの推進に押され、機体はモグラの無防備な背面装甲に舞い降りていく。右腕レーザートーチに、青白い電光が走った。

「1機」

 A・Zが静かに呟いたとき、彼の機体は滑らかなモグラSAの背中を滑り降りて砂地を踏んでいた。降りぬいた右腕が、灼熱の砂漠よりもなお熱い蒸気を吐く。その後ろでモグラの背は無残にもズタズタに溶断されていた!巨躯が赤熱し膨張、遅れて爆散!
 マテリアライズされていた物質が拘束を解かれ、元の塵へと還っていく。

 その金属埃と砂塵の中で、細長いものがいくたりか落ちていくのをA・Zは捉えていた。

 ◆

本稿は以下の物語の二次創作小説です。スーパーロボット活劇!

筆者は以下の物語を連載中です。


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