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ゾンビ返しにゾンビ垣

1.アフターゾンビ時代

 ゾンビが差し当たって脅威ではなくなるも、対策しなければ日常生活がままならない時代。おそらくゾンビ化ウィルスへのワクチンや抗体が上手いこと開発できたのでしょう。生者はゾンビ化を過度に恐れる必要がなくなり、そろそろゾンビ発生前の生活に戻ろうかという頃合い。

 しかし家の外を見てみましょう。ゾンビが歩いています。腐乱した骨肉の塊が全身に虫を沸かせながら、栄養分を求めてさ迷っています。そんな奴が列をなしている。おぞましいですね。

 この状況に至るまでに、我が日本の住宅はどうなっているでしょうか。

2.増改築による武装防御住宅街

 ゾンビは思考力が無く、五感で捉えた獲物に向かって真っすぐに進んでいきます。壁をよじ登ったりジャンプしたりはしません。全身を細切れにして換気口の中に入ったり、合体巨大化して壁を破ったりもしません。

そのため多くの建築の1階は城壁化しているでしょう。

戸建て住宅群
 1階は軒並み塞がれていることでしょう。板があればまだいいほうで、おそらく室内からテーブルやタンス、大型テレビなんかで塞がれていると思います。出入りは2階の窓やベランダから脚立、カーテン縄梯子でしょうか。
 昨今の隣棟感覚の狭さも、こういう事態になると有利かもしれません。お隣との窓、あるいは屋根との間に板などを渡せば、日常の物々交換、あるいは下の道を使わず屋根の上を歩いて移動する即席ペデストリアンデッキ等を作ることができるでしょう。
 そうした自治体の屋根にうっかりゾンビが昇ったらと思うと、怖くてたまりませんね。

 造成された宅地は、地内を走る道路の出入り口を封鎖することで日本のお城でいうところの平城のようにできるかもしれません。住宅内の通過交通車が発生しないよう、道路がループするようになっているケースがあるためです。この場合、幹線道路沿いの住宅は狭間を備えた城壁の如く、ゾンビ迎撃用住宅となるでしょう。

■集合住宅
 罹患者のいない集合住宅はなお要塞化すると思います。元々城塞のようなコンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の堅固な建物は、1階の外周を自家用車と家具で作った合成バリケードに守られ、いざゾンビが近づけば2階の不寝番達が手製の武器を撃ち降ろすことでしょう。建物への出入り時は安全かもしれません。

 ベランダや屋上は全て、日の当たる廊下も耕作地と化し食糧自給率をあげているところでしょうか。水漏れや雨漏りが心配ですね。

3.新築される城郭

 地上を満足に移動できないことに変わりはありません。従って多くの人工や資材を必要とする建物の新築はかなり難しいと思われます。

 戦争時における工兵のように、自衛隊や警察に護衛としてついてもらって工事に臨まなければなりません。重要な公共施設や都市インフラ設備は自衛隊が手掛けることになるでしょう。大手ゼネコンが海外からPMCを招き入れて武装するかもしれません。

 そうして作られる建物はどうなるか。

 大きな建築物の周囲は空掘、水堀が巡らされるでしょうか。1階から住空間が消え、壁の間に狭間やガンスリットが設けられ、出入口に向かって迷路のような壁が続き、ゾンビたちを惑わす事でしょう。
 出入口の頭上には石落としが計画され、追いすがるゾンビを撃ち降ろす絶好の射撃ポジションとなるでしょうか。

4.変容する都市

 2.でざっくり書ききりましたが、現在の街並みが大きく変わることは無く今ある建築物を生かした対ゾンビ街区が形成されていくと思います。その結果、住宅街が古代城柵都市にかわり、やがて城郭都市になり、最後にはゾンビたちを都市圏の外へ追い出すでしょう。
 野山を彷徨いクマと格闘するゾンビたち。生態系が心配ですね。


以上です。


追記
社会はゾンビSF小説ならこれでしょう!


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