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小説版ダークソウル弁明の仮面劇はシリーズのDLCなのか?

 小説版ダークソウル弁明の仮面劇を2周したのでそろそろ感想文をまとめようと思います。

 2周している時点でマジ面白いファンタジー小説。
剣戟がある。魔法がある。未知の土地への冒険がある。まだ読んだこと無いが氷と炎の歌ってこんな読み味なんだろうかと想像しました。別の作者の別作品読んで氷と炎の歌が読みたくなった次第。

■以下ネタバレ込みの感想兼考察

 大きな問題がひとつ。暗い魂の話がありません。
火継ぎの儀式も大王グウィンもいない。
 あるいはダークソウル2みたいに言及はされないけど登場していたのかもしれない。そこでちょっと考えてみることにしました。

■ゲームシステムのたましい

 物語の構造はダークソウルシリーズのゲームシステムを大きく重く扱っている。
・主人公などの死者=亡者という、死んでも復活する存在がいる。
・亡者の復活地点は『篝火』という霊的な炎。
・亡者はあらゆる生物を殺害してその『本質』を吸収し、その知識と経験を得ることが出来る。
・偉大な力を持つ王(ラスボス)がいて、その近親(中ボス)もまた大きな力を持っている。
 
 初代ダークソウルは大王グウィンから分けられた偉大なソウルの持ち主が3人いた。最初の死者ニト、イザリスの魔女、白竜シースがそれだ。
今作では、アルキンドア王パーニア。黄金の次男ツァレリク。美の長女ジャラネッサ。そして力の長男ドラレッドがいる。
 原作ダークソウルには、グウィンから分けられたソウルに匹敵する強大な存在として四人の公王がいた。しかし公王は『闇の王エンド』分岐に関連し、今回の小説ではそれが無いために公王ポジションが無いものと思われる。

■そもそもの世界の話

 この物語がダークソウルを冠する以上『暗い魂』と呼ばれるものがこの世界人類の中にも宿っているはずだ。それが亡者の手にすることが出来る生命の『本質』なのだろう。
 ツイッターで拝見したがこの『本質』をゲーム本編の『人間性』と仰っている方もいて成程と思った。自分は小説の描写からソウル=経験値取得の表現と思っていたが、これが『人間性』だとしたらイコール『暗い魂』つまりダークソウルなのだと思う。

 ここで原作の設定を考えると、ソウルは手にしたら即レベルアップに使えるものではなく、篝火や火守女の助けが必要なのだーとか言いたくなるが、そこは小説的表現で省略したのかと思う。
 ただ篝火や火守女はダークソウルの物語でかなり重要な地位を占めており、それがあまり重視されていない本作はゲーム『ダークソウル』につながる世界観の物語ではないと考えられる。

■世界荒廃の謎

 物語の最終盤でアルキンドア王パーニアの目的が明らかになった。

・王国崩壊は避けられない運命だと悟り、魔法を駆使して世界を作り替えると決める
・そのために自身は安全なところに避難し世界の時間を早め、意図的に数世紀分荒廃させた
・荒廃した世の現状と、原因となる現象や人の心の動きを、自身の息子たちに観察、収集させる
・息子やかつての部下である騎士たちに刷り込みを行って操り、収集物を収穫する
・収穫結果を基に世界を再構築する

世界の荒廃も主人公たちの旅もぜんぶこいつが原因。

さてこれらに対して疑問がいくつかある。

・作り替えはどのように行うのか。イマジネーションで世界を歪めることが出来るのか。
・時間の流れは本当に操作されていたらしい。王のセーフハウス外は荒廃しきっていた。これを巻き戻すことも王には可能なのか。

 これはたぶん可能なのだと思う。
 パーニア自身が、息子であるバラリオンにより世界再構築が行われた場合を語っている。王の力があればそんなとんでもないことも可能なのだろう。
 しかし万能の力ではないはずだ。世界創造の力を持つ王がこんな回りくどいことをやる必要はない。思い立ったらサクッと全部つくりかえてしまえばいいんだから。それをしないということは、たぶん大量の『本質』が必要だったんだろう。息子=自身の代理に荒廃世界から『本質』を集めさせ自分に送り届ける。それを元手に世界を再構成する。

 この時点でもうダークソウルではない。
 ダークソウル本編も十分に情報は無いけども、あの世界はそれほど自在な存在ではなかった。熱と岩と魂が永遠に輪廻する物理的な魔法世界だった。

■でも面白い

 原作と違う。それでも『ダークソウル』的に面白いのがこの小説の凄いところ。小説が序盤から中盤へ向かう中、たびたび現れるダークソウル感に思わず引き込まれた。
 ふいに強敵に出くわして死亡しリスポーンポイントまで戻され愚痴を言う。自分のキャラクタービルドでは勝てない強敵になんべんもなんべんも挑んでは敗れて相手を分析する。あげく死に戻りまでする。強大な3人の王子、王女たちごとに全く異なる国=ステージを冒険する。

 原作のゲームシステムをなぞっただけで、それがこの小説世界のシステムそのものと結びついているわけじゃないと批判することもできるが、自分は楽しめたのでOKです。

 それはそれとしてパニ王、めんどくさがってトドメをフェーラノスに任せた結果、大量のソウルがフェーラノスに流れ込んだ結果がこの結末だったんじゃなかろうか。慢心しすぎであります。

■総評

 面白いダークファンタジー小説。貴方はこの小説からゲームのダークソウルをはじめてもいい、といった一編。
 シリーズファンには物足りなかったりコレジャナイという感想もあるかもしれませんが、小説として劣るものでは絶対に無いし、ダークソウル無くして生まれなかった作品でもあります。この小説未見の方がこの記事を読むことはないかと思いますが、そんな方にもおススメの作品です。

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