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取り戻した守備戦術とベテラン組の奮闘

マドリーが息を吹き返している。ビルバオ戦の勝利によりリーガでは13試合を消化して勝ち点26でソシエダとアトレティコと並んだ。(アトレティコは11試合で勝ち点26を稼いでいる)その前にはUCLではインテル、ボルシアMGを倒してGS突破を決めている。リーガでは無敗で失点数が今季2という異常な硬さを誇るアトレティコ相手に2点を決め完勝した。12月2日にはシャフタール相手に完敗しCLのGS突破が危ぶまれる絶望的な状態に陥り、ジダンの解任の噂もされたマドリーだったが、その苦境は乗り越えたと言えるだろう。特にこの二週間のセビージャ戦からの4連勝は今後のマドリーにとって大きな糧となるのではないだろうか。4戦合計での失点数は1。昨シーズンの守備の硬さが戻ってきている。今シーズンのマドリー の守備は昨シーズンと比較するとかなり貧弱で、複数失点することが頻発した。バレンシア戦では3点をPKで決められ1試合で計4失点するなど不安定だった。しかしながらここに来てマドリーの守備の堅さが昨シーズンと同じレベルに戻ってきている。驚きなのは、マドリーはフェデ、ラモス、カルバハルといった昨シーズンの堅守に貢献したキープレーヤーを欠く試合もあった中でこの守備の堅さを誇ったことだ。この堅守を築けたのは中盤のモドリッチとクロース、さらにはWGからSBまで高い次元でこなしたバスケスの献身的な姿勢があってこそのものだっただろう。

先ほど挙げたバスケス、モドリッチ、クロースは一試合あたりの出場時間が70分をそれぞれ超えており、バスケスに関しては10試合連続のフル出場という意味のわからない記録を残している。クロースやモドリッチもここ最近は先発出場でフルで出ることも珍しくない。その中で気を抜くことなく献身的なプレーを見せている。クロースは守備はサボりがちの選手だが、ボルシアMG戦ではチーム最高走行距離を記録。もちろんスタッツだけが全てではないが、献身的に動き回っているのは事実だろう。もちろん持ち前のゲームメイクのクオリティは全く落ちていない。モドリッチも35歳とは思えないクオリティのプレーを見せている。相手陣内への侵入は減ったものの起点となりチームの攻撃のスピードを上げる。何よりこの二人は全くボールを奪われない。実際プレスをしてくるチームに対して相性がいいのはこの二人のプレス回避能力が際立つからというのもあるだろう。そしてカタールへの移籍も噂されていたルーカスバスケスはここにきて完璧なパフォーマンスを披露している。ジダンの戦術の正に根幹をなすプレーヤーのうちの一人と言える。他にも怪我から戻ってきたカピタンの安定感抜群の守備やベンゼマの好調などがマドリーの状況を好転させる助けとなった。(カピタン、ルキータ、ルーカスとの契約延長はいつ発表されるのだろうか…)

ここ4試合の失点数の少なさ、そして意外と1試合に2得点ペースでゴールを重ねているのを考えるとマドリーの今シーズンの型は今の戦いをベースにしていくのが無難だろう。今シーズン前半は442なども試したが、ベンゼマと組むFWの稼働率が低いこともありオプションにすらなれない始末。さらにはアザールやアセンシオなどに昨シーズンのチームへの攻撃面の上乗せを期待するもアザールの怪我による離脱やアセンシオのスランプなどから結局うまくいかなかった。結局ジダンの前に残ったメンバーは昨シーズンとほとんど変わらなかったのだ。故にジダンマドリー は原点回帰した。昨シーズンのやり方を踏襲し、433でサイドの選手には守備能力を求めた。サイドの選手の得点力は落ちるため中盤の選手には飛び出しやミドルシュートなどが求められる。最終ラインには守備強度を維持できる選手が並べられる。攻撃面で物足りなさはあるが、今後もこの戦い方がベースになっていくだろう。

ジダンはチームのバランスを見出すのがうまい。元々攻撃力のあったマドリーにカゼミロを配置することで攻守のバランスを整えた監督であり、守備戦術の構築はお手の物だ。もちろんファン心理として華やかな攻撃をするマドリーも観たいが、現状のメンバーを考慮すると今の戦い方がベストなように思う。幸いなことにベンゼマが点取り屋として機能しているのでなんとかマドリーの攻撃は持つのではないだろうか。怖いのは主力組が離脱したときだ。最終ラインはナチョが復活したこともあり、うまくターンオーバーもできそうだが、中盤はトニルカカゼの三人とフェデで回していくしかなさそうだ。前線はヴィニシウスとバスケスの守備強度はジダンの求めるものに合致しているので、今後も使われていくのではないだろうか。ここで、ロドリゴやアセンシオがスーパーサブとして相手を刺せることができるようになればジダンの目論見通りだろう。(アセンシオは単独でドリブルできるシーンも怖がってしまっていて、一回誰かに預けてからフリーで受けようとするのでカウンターを殺してしまう気もするが…)

ともあれ、まだ4連勝しただけである。幸いなことに今のところ全てのコンペティションで優勝できる可能性はある。特にリーガに関してはここからアトレティコが崩れてもおかしくはない。連覇できる可能性もある。安定した戦いができるという意味では今のマドリーはリーガ仕様であるし、ここから変に勝点を失わなければチャンスはあるはずだ。コパも始まり、選手にかかる負担も増えるだろうが、うまくコンディションを調整し怪我人を出さずにシーズンを突っ走れるだろうか。先のことは見通せないが、調子の上がってきたマドリー がこのまま波に乗れることを祈るばかりだ。


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