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モドリッチの未来

モドリッチの現時点でのマドリー の契約が今シーズンで切れようとしている。今年で35歳になったモドリッチのマドリーでの出場試合数は350試合を超えた。12-13シーズンにトッテナムから加入してきた彼の在籍年数も9年目となり、その間、17のタイトル獲得に大いに貢献した。個人でも2018年にバロンドール、FIFA年間最優秀選手賞、UEFA男子最優秀選手賞などを受賞している。ピッチ上を俯瞰し、圧倒的なキープ力やドリブル、ゲームメイク能力に加え、運動量が豊富で守備も申し分ない。まさに攻守にコンプリートなMFと言えるだろう。怪我をした時以外はほぼピッチに立ち、マドリーでは重要な役割を任されてきた。個人のパフォーマンスとして素晴らしかったのは16-17シーズンだろう。怪我もあったシーズンではあったものの素晴らしいプレーを披露しUCL史上初のCL連覇に貢献した。17-18シーズンはマドリーでUCL三連覇に貢献したのち、W杯においてクロアチアを牽引し準優勝に導いた。これらの活躍もあり先ほど述べたように、個人タイトルを2018年には総なめした。

しかし、18-19シーズンには調子を著しく落としてしまう。らしくないミスもみられ、どこか気合の抜けたプレーが散見された。W杯による精神的な消耗が多く、回復しないままにシーズンが始まってしまったために難しいシーズンになってしまったという。モドリッチの運動量の低下により前線と中盤をつなぐ選手がいなくなりチームの攻撃は停滞。クリスティアーノの退団ももちろん色濃く影響しているが、このシーズンのリーガでの得点数は合計63得点だった。モドリッチ自身、ワールドカップによって大いに精神的に消耗したとFIFProのインタビューで話している。

「多くの感情を乗り越えて自分のベストのレベルに戻るのは簡単ではないし、時間が必要だった。W杯の後に、僕は完全に疲れていたし、三週間しか休みがなかった上にその休みのうちの一週間はお祝いに費やされたよ…今はシーズンが始まっているし、ロシアで起こった全てを忘れてシーズンに集中する必要がある。」

ちなみに、FIFProがこの年に行った調査によると543人の選手のうち300人が5週間の休暇が必要だと答えたという。多くの選手にとって消耗が激しいシーズンであったにもかかわらず、選手たちは満足のいく休暇を取れないまま新シーズンに突入したということだろう。

W杯後の燃え尽き症候群により、今までの安定感が消えて不安定なプレーを見せるようになったモドリッチ、、、チームも無冠という散々な成績に終わった。19-20シーズンからは18-19シーズンの最後から復帰したジダンが引き続き指揮することに。前半戦は若手のフェデリコ・バルベルデの台頭もあり影は薄く、一時期は完璧な世代移行が進んだとも言われた。モドリッチは出場した際に確かに素晴らしいプレーも見せるのだがやはり従来のモドリッチというほどではなく、ボールロストなども多く見られるようになっており、衰えも指摘された。そんな中、リーガでのベティス戦を最後に世界的な新型コロナウイルスの流行により一時シーズンが中断。イレギュラーなシーズンとなった。感染拡大が縮小傾向になり、リーガが再開されるとモドリッチはチームを牽引。キレのあるプレーでジダンのいう11回のファイナルを戦い抜くためのキーマンとなり、「モドリッチが一度しかとったことがないのは普通ではない」リーガタイトルの獲得に自身も大いに貢献した。

「モドリッチがたった一度しかリーガをとったことがないのは普通ではない」発言をしたジダンとの関係性は素晴らしく、モドリッチは心底ジダンを慕っていることがインタビューなどからもわかる。

「ジダンは世界でもトップの監督だ。彼が私たちと成し遂げたことはもう一度繰り返すことは不可能だ。彼は監督としての技量を疑われることもあるが、彼は素晴らしい監督だし、全ての人が彼をマドリードに置いてアンタッチャブルな存在であるとみなしてくれるように願っているよ。(中略)彼のやり方は僕たちに完璧にフィットしているし、マドリーにとって最適の人物でイングランドにおけるファーガソンやヴェンゲルみたいになれるよ!」(El Partidazo de Cope radio)

ジダンが長くマドリーで指揮するのを望むように、モドリッチは自身の未来がマドリー にあることを望んでいる。冒頭でも述べたように20-21シーズンで契約が終了するモドリッチだが、マドリーと新たな契約を結びマドリーで引退したいとクロアチアのメディアやスペインのメディアを通して述べており、MARCAの報道によると給料のカットも受け入れる方向性もあるという話も出てきている。食生活やトレーニングルーティーンの見直しも行い、マドリーでうまくシーズンに入るために代表への帯同を断りマドリーのプレシーズンに合流した。モドリッチは本気でマドリーで自身の能力を証明し新契約を勝ち取ろうと努力している。その一方で、彼はクラブの問題になりたいわけではなく、マドリーとの関係は良好な状態に保ちたいとも述べている。

フェデの台頭によりおそらくモドリッチは途中出場する試合が多くなるだろう。少なくとも今のマドリーはフェデを中心に回っており彼なしではハイプレス戦術は成り立たない。しかし、モドリッチも全盛期ほどの運動量はないにしても効果的にプレスを続けファイナルサードではフェデよりも素晴らしいパフォーマンスを見せる。モドリッチの良さはそれだけではない。彼はフェデと組むときは少しゲームメイク寄りに、クロースと組むときは少しポジションを前に上げるなど臨機応変にプレーすることができる。途中出場であっても先のクラシコのように仕事ができるし、今もなお貴重な戦力だ。

35歳のベテランと契約延長をするというのは、セオリー通りに考えると良くは映らないのかもしれない。若くて優秀な中盤の選手を連れてくるべき、セバジョスを復帰させるべき、スーパーサブとしての役割を受け入れたとしても本来サブで出場機会を得られるはずの若手選手の成長を止めてしまう可能性もある...等々、モドリッチの契約延長に対して否定的な意見もあると思う。それでもなお、今の彼のパフォーマンスや若手の手本にもなる彼の姿勢を見るとまだまだ白いユニフォームを着てピッチを駆け回るモドリッチの姿を見ていたい。この先どうなるかはわからないが、どちらにせよ彼の今シーズンのプレーを目に焼き付けておきたいと心の奥底から思う。

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