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ジダンの真価はここから(なはず)

 ロナウドが去って1年がたった。ベンゼマがどんなに頑張っても彼の穴を埋めることはできない。アザールをロナウドの穴を埋めるために獲得したが彼が怪我で離脱していたこともあり、なんの変わり映えもしないチームがスタメンを連ねている。プレーも変化は見られず、いまだにロナウドがいるかのようにプレーをしているように感じられるのは気のせいなのだろうか?そういう疑問から、そもそもロナウドがいたときのマドリーの戦い方はどういうものだったのか、記憶をたどってざっくり振り返る。

 ジダンの1次政権(?)はロナウドシステムを完成させたから偉大な成績を残すことができた。個性の尊重と規律が調和していたように思う。ジダン最終年は何とかCL三連覇という偉業によってうまく誤魔化した感はあったがそれでも立派な成績を残していたといえる。ロナウドシステムは単にロナウドを気持ちよくプレーさせてロナウドを最大限生かしただけでなく、プレーを単純化させたと自分は考えている。「ロナウドにボールを渡せば、ゴールは生まれる」そう信じて周りの選手たちはスペースを作りチャンスを作った。何をすればいいのか明確になったことでチームはうまく回った。事実、不調な時はあれど、ロナウドは最も難しい作業であるボールをゴールに入れることを事も無げに遂行した。たとえ陣形が間延びするようなプレーを強行しても、ロナウドが高確率でゴールを決めたためにマドリーの弱点である「攻め→守り」の貧弱さもそこまで気にならなかった。(勿論よくなかった時も多々あったが…)

 ロナウド在籍時のマドリーの強みといえば電光石火のカウンターだった。中盤で奪ってそのままカウンター。プレス回避能力の高い中盤で相手のプレスをかわし速攻に持ち込んだ。ポゼッション時でもボックス内に多少苦し紛れのクロスを入れてればロナウドがそのクロスをアシストに変えてくれた。特にその戦い方が顕著だったのは17‐18シーズンだろう。中央で構えるロナウド、ベンゼマに高精度のクロスボールを届けるためのチームを作った。左サイドにはアセンシオ、右にはバスケスという布陣。シンプルに利き足でクロスを入れることが得点につながると踏んでのチーム構成だ。サイドアタックからシンプルにクロスを入れることが重要だった。また、これは単純に効率的な攻撃を生み出しただけでなく守備の面でも機能した。守備ブロックを[4-4-2]としたことによりBBC時代よりは守備ができるようにした。

 ジダンが3連覇を成し遂げたマドリーにおいて常に選手から信頼されていることは目に見えた。ほぼ同じメンバーでUCLを3連覇するのは並外れたことだと思う。チーム内でうまく競争をさせスタメンの選手たちを最高の状況でCLの舞台に送った。

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 ここからが本題

 ジダンマドリーを思い出すととてつもなくジダンがマドリーの監督に向いている気がしてくるのは気のせいだろうか。マドリーは常に前線にいる圧倒的な個にあわせてチームが作られてきた。少なくとも自分はそう考えている。素晴らしい中盤の選手、ディフェンスの選手もいるが常に決定力の高い前線には注目が行く。ジダンは効率的に勝ちを得られるチームを作る。効率的に勝ちを得るためには効率的にFWがゴールを決められる環境を作る必要がある。そのためのチームを作った。そして選手の個性を無視することはなく折り合いをつける。少なくとも効率性という面では理に適っているチームだったのだろう。BBC(これは以前からあったが…)やロナウド、ベンゼマ、イスコの組み合わせ、さらに冒頭に触れたようなSHに利き足の選手を置くなど前線の個性をうまくかみ合わせた。

 このようなことを考えると、前線の個性を重視するマドリーにおいて前線の個性を考えたうえでチーム作りをするジダンはぴったりだと思うのだ。また、ジダンはレジェンド選手であり、マドリーのことをちゃんとわかっている。

 だからこそ今のマドリーが苦しむ理由もなるほど理解できる。「いる」前提で作られたシステムにロナウドがいないのだ。ロナウドがいないCL3連覇メンバーはメインがないコース料理のようなものでそんなもの意味がない。そして、ロナウドの穴を埋めるものとしてアザールを補強したのにもかかわらずアザールが怪我で離脱した。これではマドリーがうまくいかないのも当然だ。ジダンだってアザールやアセンシオがいることを前提にチームの構想を練っていたはずだ。

 アザールが戻ってきた時。その時にジダンの真価が問われる。アザールが攻撃の核として結果を残せばマドリーもそれに合わせて浮上するだろう。もし、アザールが戻ってきてもうまくいかなかったら…そう考えると恐ろしいことしか思い浮かばない。マドリードダービーまでに修正を施し彼らに近づきたいところだ。もしアウェイのPSG戦で波に乗ることができれば…良いことが起こるかもしれない…

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(追記):ジダンは常に落ち着いている。フットボールは最後の最後に上回っているチームが勝利するスポーツであることを理解した振る舞いをする。彼の落ち着きはチームに良い影響を与えるし選手に余裕を与える。ジダンの第一次政権ではその余裕がポジティブに働き良い結果を残せていた。ただ、現状、マドリーの周囲は騒々しいように感じる。なんとかジダンも落ち着いているよう振舞っているようには感じるが、彼に心の余裕がなくなってしまったらマドリー自体が瓦解しかねない。フロントがジダンを隠れ蓑としたことが結果的にマドリー自体の首を絞めることにならなければいいのだが…

 


 

 


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