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19-20シーズン総括

コロナの影響でイレギュラーだった19-20シーズン。CLを嫌な形で敗退してしまったために後味は悪いものの、リーガを奪還できたのはとても大きなことのように感じる。MVPはクルトワ、次点でベンゼマだろうか。前者は安定したセーブでリーグ優勝に貢献し、後者はマドリーの唯一の替えの効かないFWとして継続して結果を残し続けた。その他にもカゼミロやラモス、クロースやカルバハルなど3連覇メンバーの偉大さを実感した。加えて、若手選手の躍動も見逃せない。

世代交代と若手

今シーズンのマドリーでは顕著な世代交代が進んだ。フェデとメンディ(若手ではないが、新加入選手としてよくやってくれたと思う)の台頭はマドリーの今後にとって、重要なものとなるだろう。後半戦になるとモドリッチが本来の力を発揮したが、前半戦でのフェデの輝きは素晴らしかった。もちろんフェデの後半戦での失速は見過ごせない問題ではあるが、常に最高パフォーマンスを求めるのも酷なものだ。彼はまだ若いし、これからどこで自分が力を抜くべきなのか、スペースの使い方だけでなく時間の使い方を学ぶ必要がある。

トップフォームがなかなか戻らないマルセロの穴をSBとしてしっかり埋めたメンディも素晴らしかった。テクニックよりはフィジカル的に優れており、攻撃でも守備でもパワフルなプレーを見せた。右足の精度も高く意外と器用だ。強いてケチをつけるとしたらビルドアップの面で少し物足りないところだろうか。トラップなどのボールコントロールはマルセロに遠く及ばないが、後ろからドリブルで持ち上がったりする能力は素晴らしいものがある。インナーラップも実は得意であり、そのようなプレーが見られるようになってくるとさらに重要な選手になれるのではないだろうか。

この二人は特に今シーズン象徴的な選手たちだったが、ロドリゴやヴィニシウスといった若手選手もそれぞれポテンシャルの高さを大いにみせた。ミリタオもヴァランとタイプは被るものの素晴らしいポテンシャルを見せたと言えるだろう。

世代交代が進み、優秀な若手選手はいるが、右SB、アンカー、ラモスの後釜はいまだ見つかっていない。後釜どころか控えすらいない状況だ。ベンゼマがいなくなった後のことも考える必要性がある。クリスティアーノがいなくなった穴は中盤の得点力などによってある程度補填したものの、完璧には穴埋めができていないのが実情だ。CL三連覇メンバーは偉大だが、新たな歴史を築くためにチームに新しい血を入れていくことも重要なことのように思う。

補強

メンディ、ロドリゴ、ミリタオの補強は総合的に見ても当たりだったと言えるのではないだろうか。特にメンディは前述した通りシーズンが進むにつれて能力の高さを証明した。ロドリゴは前半戦での爆発やシティ戦でのアシストなど何かと印象に残るプレーヤーだ。ミリタオはまだ軽いところはあるものの、シティ戦でかなりチームの中でも良いパフォーマンスを見せていたし、ポテンシャルの高さは証明したのではないだろうか。ただし、シティ戦でも露呈したようにヴァランとタイプがかなりかぶっており、立ち位置が微妙なのは少し気がかりではある。

一方、大金をかけて獲得したアザールとヨビッチはそれぞれ期待外れに終わった。特にアザールについてはメディアが一時期タブーにするレベルで失敗してしまった。怪我に関しては不運な部分があるが、シーズン前の重量オーバーなど彼自身にも責任はあるように思う。もともと、数字を残すというよりはピッチ上で輝きを放ち周りの選手のためのスペースを作るタイプの選手なので得点力などを求めているわけではない。ただ、現在の彼は本来の輝きを放つまでには至っておらず、身体のキレがさほど戻っていないように見えるのも気がかりだ。本人も今シーズンの出来についてはキャリアで最悪の出来と言っているので危機感はあるだろう。また、ヨビッチについてはピッチ上よりもピッチ外での行動が槍玉にあげられ厳しいシーズンとなった。ベンゼマの控えとしてしか見なされていなかったのはかわいそうではあったが、資金捻出のために売りに出されるのか、来シーズンに適応させて戦力としてカウントするのか、どちらになるかは今のところわからない。(レイニエルについては割愛。来シーズンは武者修行でしょう)

戦術とCLとリーガ

今シーズンのマドリーには大きな誤算があった。アザールの稼働率の低さとアセンシオの長期離脱だ。攻撃のキーパーソンとなる予定だったであろうこの二人が戦力として数えられなかったのは痛かった。活きのいいヴィニシウスやロドリゴ、持っているベイルやマリアーノなど攻撃のコマ数だけは無駄に多かったものの、絶対的な選手はベンゼマのみで両WGは実に様々なプレーヤーが使われた。招集メンバー発表の画像でFW陣だけ異常な人数がいたのを記憶している人も多いのではないだろうか。

フットボールというゲームの性質上、点を決めるFWを終着点として戦術を考える。クリスティアーノがいた頃のマドリーはまさにそのようなチームだった。彼にどうボールを渡すか、彼のためにどのようにチャンスを生み出すかを考えていた。しかし、今はクリスティアーノはいない。昨シーズンのマドリーはこの穴に対する答えを見つけられず崩壊した。そこで、ジダンは中盤の得点力などFW以外の得点によってこれらの穴を埋めた。いや、完全に埋めているとは言い難い。クリスティアーノがいた頃は1試合平均で2得点はできていたが、今のマドリーにはできていない。しかしながら、中盤の得点力と堅い守備によってマドリーは試合に勝つことはできるようになった。唯一替えの効かないFWとして奮闘したベンゼマの貢献も素晴らしかった。

故に今シーズンのマドリーはDFとMFが中心となっていたように感じる。WGとして起用されていた選手にもまず求められたのは守備力だった。そのため、爆発力はさほどなく、安定したスコアを継続して出していくようなシーズンだった。何度か不安定さを見せてはいたものの、特にシーズン再開後のマドリーの安定感は抜群であった。堅実な戦いを展開する試合が多く、ある意味マドリーらしからぬ試合展開の時が多かった。安定感を得た代わりに、最大火力はさほど出なかったために、CLではなかなか厳しい結果となってしまった。シティ戦でもしミスがなかったとしても2点目を取れていたかどうかは怪しい。

何度も繰り返すようだが、アセンシオやアザールを思うように起用できない中、新たに構想を練り直し、リーガを奪還したジダンの手腕は見事だったように思う。(マジョルカ戦など不可解な采配や選手起用があったのも事実ではあるが…)

シティ戦見て思ったこと

かなり厳しい敗戦となった。なんとしても2得点したいマドリーだったが、試合序盤で失点。この状況でも2得点してPK戦にまで持ち込めれば良かったもののその後もミスによって失点。ヴァランにとっては最悪の試合だっただろう。相手のプレスによって誘発されたマドリー側のミスからの失点だっため非常に印象の悪いものだった。結局反撃の狼煙を上げることもできずにマドリーはベスト16で姿を消してしまった。

今回の試合について細かく記すのは心の健康上の理由から残念ながら避けるが、個人的に気になったことは示しておきたい。まず第一にシティのプレスが非常に効果的であった。特にカゼミロへのコースをフォーデンで抑えたのはマドリーを苦しくさせた。シティとしても前からはめていく方が守備的に理にかなっていたのだと思う。前からはめていって後ろの人数が数的同数になってマドリーが前線にフィードを送ったとしても所詮クルトワのフィードであるため、決定的なものとはならない。個人的にはマドリーがパワプレーに切り替えて戦えば、後ろから繋いでいくよりは勝機があったように思うが、CBからのロングボールも少なく、なかなか見られなかった。マドリーが組み立て時にラモスに大きく依存していることが改めてはっきりした格好だ。また、個人的には全盛期のマルセロがいればもう少しうまくプレスを回避できたのかとも思う。今までは、クロース、マルセロ、ラモスの三角形で今までプレスを回避できていたので、そのメンバーの二人を欠くとこれほどまでにビルドアップに苦労するものなのだなと感じた。

ジダンの交代策もいまいちだった。スタメンで起用した選手たちが想定外に試合に入れていないことなどが判断を鈍らせたというのはあったのかもしれない。少なくともアザールをスタメンで引っ張り続けたのはミスだったように思う。CLということもあり一番得点の匂いのするFWを出したのだとは思うが、後半の最初の10分で交代を決意するべきだったように思う。ジダンなら...そう言った微かな希望的観測による期待もあったが、うまくはいかなかった。3連覇メンバーが衰えていく、或いはいなくなっていく難しい状況のマドリーをどう舵取りしていくのだろうか。少なくとも今シーズン、リーガをこの歪なスカッドで獲得したのはイレギュラーなシーズンだったとはいえ、素晴らしいことだと思う。来シーズンの補強や戦力の整理がどのようになるかはわからないが、来シーズンに期待だ。

ある意味、今シーズンの限界を感じさせられた試合でもあった。先ほども述べたように爆発力には乏しい戦い方ではあるため、そもそも2得点できていたかもわからない。シーズン序盤戦の頃のマドリーが一時期大量得点していた頃のスタメンがロドリゴ、ベンゼマ、アザールであったこともあのスタメンだった理由なのかもしれないが、結局覆すには至らなかった。特にアザールは微かな輝きを放つにとどまってしまった。来シーズンは中盤の得点力だけではない攻撃の形を見つけ出す必要性があるだろう。

来季に向けて

すでにマドリーはシティに負け、CLを敗退してしまったため、これからは移籍情報の流通が活発化するだろう。9選手が放出の可能性があるとして取り上げられたりしているほか、ウーデゴールやセバジョスの帰還が噂されたりするようになった。放出筆頭候補であるベイルやハメス、前ジダン政権下では象徴的なプレーヤーであるイスコの放出など噂されている。(ピルロの話が数年前のものである上に、ジダンがイスコを重宝しており年俸も高いことから買い手もいなさそうなので残りそうだが・・・)

兎にも角にも放出オペレーションが進まないことには、新たな選手の獲得やレンタルバックが枠の関係上できない。コロナによってスタジアム収入なども減ることが見込まれ、できるだけフットボールクラブとしては出費を抑えたいだろう。また、マドリーが放出したがっている選手は年俸も高い。このようなことからも、昨年の夏同様、かなり放出には手間取ることが予想される。人員整理したとしても、マドリーが新たな選手を獲得できるかは別の問題だ。少なくとも顕著になった中盤の層の薄さだけでも改善して欲しいところだ。本来であればワールドクラスのFWも欲しいところではあるが、今シーズン苦渋をなめたアザールが復活することに期待することになるかもしれない。先が読めない状況ではあるが、マドリーがより強くなって来シーズンも見られることを心の奥底から期待し、信じている。

19-20シーズンもおつかれさまでした。

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