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確信

苦しみながらの勝利だったが、マドリーはさらに後続のバルサと距離を開けることに成功した。シュートチャンスは少なく、決定的なものはラモスのPK以外だと前半のヴィニシウスのシュートくらいだった。それでも、勝利の女神は最終的にマドリーに微笑んだ。

今節の勝利は後半での修正によって生まれた。ヘタフェの守備は中央にコンパクトであったため、マドリーはサイドで何度かチャンスを作ったものの、特に前半のマドリーの攻撃は停滞していた。モドリッチを中心としてマドリーはヘタフェのプレスをうまく交わすこともできてはいたが、だんだんと中央にチームが偏っていった。イスコは右WGとして起用されていたが、サイドでの突破力やフリーランよりは自らが周りの選手を使うことで生きる選手であるし、何よりスペースが狭過ぎて彼の活躍の場所はなかった。彼と空回り気味だったヴィニシウスにかえてアセンシオとロドリゴを入れてからのマドリーは一変。クロスの量も増え、シンプルなサイドアタックができるようになった。前半にあったヴィニシウスの決定機もサイドからの攻撃から生まれており、中央を固めてくるヘタフェにはシンプルなサイドアタックが有効であった。その後のPK獲得までもサイドアタックから生まれているのは偶然ではないだろう。マドリーは交代枠によって流れを変え、勝利を手繰り寄せたのだ。

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再開後のマドリーはジダンのもとで苦しい試合もうまくコントロールし、修正を加えて勝利を重ねている。前節のエスパニョール戦のような苦しい試合もなんとか乗り越えたし、今度はヘタフェを沈めた。マドリーのリーガ優勝への執念は凄まじい。カルバハルは試合後のインタビューで次のように述べている。

コロナによる中断後にジダンから言われたのは11試合の決勝で勝ち点33を獲得することだった。(中略)僕らの成功は失点が少ないことだ。再開後は2失点しかしていない。他のチームよりも少ない失点数に抑えてきたし、これを続けていけば優勝トロフィーにたどり着けることを僕たちは知っている。

クルトワも失点数が少ないことがこれからも重要なことであると説いている。

今節やエスパニョール戦のような食うか食われるかの試合においてクリーンシートは重要になってくるし、クリーンシートが勝利につながるのさ。だから、これからもクリーンシートをし続けることがとても重要になってくる。

マドリーの選手たちは今の戦い方に疑いを持っていない。もちろんゴールを決めないとチームは勝利できない。しかし、今のマドリーは1点さえ決めることができれば勝つことができるという自信もあるのではないだろうか。確かに攻撃陣はメンツの割にはかなり物足りない。ただ、少なくとも今のリーガにおいてはこの戦いで貫いていけるだろう。確信のある戦い方はチームの自信になる。ヘタフェも周りになんと言われようとあの戦い方を続けてきたことでかなりの強いクラブになった。選手たちが確信を持って戦うチームは強いのだ。

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そして、今節の後のジダンのインタビューも印象的だ。

我々は良い仕事をしたが、最も大事なのは選手たちの信念。守るときにチームとして考え、全員が集中している。ボールを失ったときに守り、とても良い形でそれをやっている。もしかすると攻撃的にはフレッシュさが少し足りていないが、実際チームはとても手堅く、これが我々の強みだからこの形を続けて行きたい。中にいるから私は感じないが、監督は選手と同様に苦しむ。なぜなら試合では戦わなければならないのだから。我々には簡単な瞬間なんて全くない。最終的にはそれが好き。苦しむことなく何かを得るなんてことはできないんだから。

カルバハルやクルトワのインタビューと重ね合わせると、選手とジダンの間には太い信頼関係があることを感じさせる。

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マドリーは苦しみながら勝利を得た。勝ち点3を得て、バルサとの差は4ポイントだ。簡単な状況ではなかったはずだ。イレギュラーなシーズンで、再開後は次の試合がすぐにやってくる。これからも勝ち続けていくためにはフレッシュな状態を保ち続ける必要があるだろう。次節のサンマメスでのビルバオ戦はかなり厳しい試合となるだろう。しかし、それでもマドリーの選手は苦しみながらも勝利を求めて戦うはずだ。

別れ

アクラフ・ハキミのインテルへの移籍が決まった。4000万ユーロでの移籍金が発生したと報道されている。2006年からマドリーに所属していた彼はトップチームでプレーした27-18シーズンに少なくない印象を残した。リーガでは9試合、その他のコンペティションを含めるとシーズンの17試合に出場した。未来への投資として、カルバハルが歩んだようなキャリアを描くと良いと思ったのだろう。マドリーはカルバハルがレンタルされたクラブのライバルクラブであるドルトムントへと2年間レンタルされた。その間に彼はマドリーのトップチームで初年度にプレーした試合の4倍以上の73試合に出場し、12G17Aを記録している。守備能力は拙い選手ではあったが持ち前のスプリントを生かした攻撃参加で、ドルトムントの右WBとして活躍した。

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アクラフの移籍は夏の移籍市場で奮発したマドリーにこのコロナの状況下では珍しいレベルの移籍金をもたらしたが、カルバハルの控えはまた考慮する必要が出てきそうだ。実力不足を指摘されるオドリオソラがどのように扱われるかはわからないためなんとも言えないが、カルバハルの控えを探す必要があるのは間違いないだろう。

いずれにせよ、アクラフはミランの地へと旅立っていった。所属したドルトムント、マドリーへの感謝の言葉を忘れない彼が次の所属先でも輝くことを願って...




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