「栄養療法に効果がない」と言われる件について
栄養療法には効果がないの?
「栄養療法にはエビデンスがない」ようなことが言われますが、論文はたくさんあります。
例えば、
このサイトは、日本語文献のみですが「ビタミン」で検索すると55000件以上も論文があることがわかります。
ただ、多くの論文のエビデンスレベルは「5」や「6」に分類されてしまいます。
エビデンスレベルとは?
エビデンスレベルとはその論文の科学的根拠の精度の高さや、栄養もしくは栄養による治療の効果を表すものです。
エビデンスレベルは細かく分かれていて以下の通り。
引用 一般社団法人日本肝臓学会
引用 https://www.jsh.or.jp/liver/PDF/evidence_level.pdf
栄養療法のエビデンスはレベル5に相当するものが、たくさん存在します。
治療の推奨グレードについて
治療の「推奨グレード」は、主にエビデンスのレベルによって決まります。例えば、有効性が示された「レベル1」のエビデンスがいくつかあれば、推奨グレードは「A」に分類されます。
推奨グレードはエビデンスの「量」よりも「質」で決められます。
エビデンスレベルが低い論文がたくさんあっても治療への推奨グレードが上がりません。
なぜ栄養に関する論文はグレードが低くなるか?
エビデンスレベルを1にするためには「ランダム化比較試験」を行う必要がありますが、これには莫大な費用がかかってしまいます。
ビタミンやミネラルなどの天然成分には特許がかけられず、研究側からするとお金になりません。だから、ランダム化比較試験を行うことが困難になっています。
結果として、栄養療法のエビデンスレベルをあげることが難しく、推奨グレードも低くなっています。
エビデンスを重視しすぎるデメリット
エビデンスレベルにこだわることは大事なのですが、エビデンスばかりに囚われていると治療の選択肢を狭めてしまいます。
診療ガイドラインの作成方法を指導したり、利用促進活動の中心的な存在となっている日本医療機能評価機構EBM医療情報部Mindsの吉田雅博部長(国際医療福祉大学教授)によると
ガイドラインは情報収集や対話、意思決定の土台になる資料です。ガイドラインに書かれていることが常に適切な医療とは限らないし、それにはずれたものは間違いである、と決めつけるのも良くないのです。まして、「標準的な医療をしているから良い医療機関で、そうでないのは悪い医師」、などとは決して言えません。「ガイドラインは、主治医の判断に勝るものではない」というのは世界的な合意となっています。
引用元:「診療ガイドライン」とは?よくある誤解と、私達自身での使い方 QLIFE https://www.qlife.jp/square/oshiete/story785.html
ともおっしゃっています。
診療ガイドラインは正解ではありませんので、エビデンスに従っているから治療法として正解であるというのは間違いです。
個人によって、さらにその状態によって必要な栄養素は異なります。だから個別に状態を把握しながらの治療が必須です。
多くの人をランダムに選択して、研究して効果を調べるには栄養素は向いていないと言えます。
じゃ、どうすればいいのか?
エビデンスレベルも推奨グレードも高い治療でも効果がない場合は、患者と医師が相談して納得した上で、レベルもグレードも低い治療法も検討すべきです。
注意すべきは、副作用などのリスクが高いものは避けること。
その点では、ビタミンやミネラルの摂取にはリスクが低いことが多いですが、一度にたくさん摂取する際には、副作用についての注意が必要です。
個人の整骨院などの治療院でできること
大きな病院や大勢の患者さんを診ないといけない個人の病院とは違い、個人の治療院では比較的、患者一人に多くの時間を割くことができます。
その利点を生かして、一人一人の状態を把握して、治療方針を納得いくまで話し合うことができます。
そして、エビデンスレベルの低いものでも説明しながら試してもらう。
そうすることで、症例の数を積み上げていくことができます。栄養療法による効果のエビデンスは、できるだけ多くの改善例が積み上がっていくことでレベルが上がっていくはずです。
まとめ
そもそも科学自体が仮説と証明の連続です。
証明されたものだけが正しいとは限りません。それは医学においても同じはず。
現時点でエビデンスがないから、治療の効果がないと言うわけではありません。
栄養療法の効果については、前述の通りエビデンスレベルが上がりにくいと言う実情があります。
しかし、患者と治療家が膝を付き合わせて、納得するまで対話を続ける事で効果のある、リスクの低い栄養療法を選択することができるはず。
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