中澤一棋

フランツ・カフカ偏愛アカウント。『カフカと私』主宰。カフカと日常について書きます。

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フランツ・カフカ『息子たち』の生成過程

    • 【翻訳】フランツ・カフカ「ジャッカルとアラビア人」

       わたしたちはオアシスに宿営していた。同行人たちは眠っている。背の高い色白のアラビア人が、わたしの傍を通りすぎて行った。彼は駱駝の世話をして、寝床へ帰るところだったのだ。  仰向けになってわたしは草地へ倒れた。眠りたかったが、できない。ジャッカルの嘆くような遠吠えが聞こえた。わたしはふたたび上体を起こす。そして、あんなに遠くにいたのに突然、近くにきていた。ジャッカルの群れがわたしの周りを囲んでいたのだ。くすみながらも金色に煌き、光の消えた瞳をしている。細い身体は、笞の支配下に

      • 【小説】静かな宴

         チャンネル登録者数が十五万を超えたあたりから頭打ちになり、いわゆる一軍たちが五十万で伸び悩んでいると匿名掲示板で嘲られるのを傍目に、むしろこのくらいの規模のほうが熱心なファンの名前を全員覚えていられるし、専用のアンチスレを立てられて執拗に誹謗中傷されることもないし、ボイスを録ったり、運営から送られてくる案件をこなしさえすれば、ひとまず暮らしていける収益を上げることはできている。いつまでこうしていけるのかは分からないが、いまはただこうやって生きていくしかない。そのようにして二

        • Amazonで購入したゼンハイザー製品が故障したとき

          私の環境私はほとんどApple製品を使用している。 しかしオーディオ機器はApple製品にしていない。利便性よりも音のこだわりが強いからだ。ヘッドホンにMOMENTUM 4 Wirelessを愛用していた。 https://amzn.asia/d/5rYQOk1 ほとんど一日中、音楽を流している。ゼンハイザーのヘッドホンはこれで2本目だが、かなり満足感があった。低音がかなり効いているし、中音域から高音域まで繊細な音まで拾ってくれる。ここ数ヶ月は外でも家でもずっとつけていて

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          カフカをめぐるプラハ旅行記

          2017年の秋にプラハへ旅行に行ってきました。まだ日本は暑く薄着のままでオランダ経由でチェコに行きました。航空会社はKLMです。 前の座席についているタッチパネル式のディスプレイがあまりにも高性能で驚きました。昔は壊れてる座席があって点かなかったり、音が出なかったりして、使えても映画を見たり、落ちゲーみたいな簡単なゲームしかなかったのに、今では世界各国の音楽やラジオが聴けて、スマホの充電ができるようにUSBポートがあって技術の進歩を感じましたねー。特にいつもは安い飛行機で移

          カフカをめぐるプラハ旅行記

          ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセン「虫」翻訳【未邦訳作品】

          著者紹介虫私はセビリアに住んでいた。床が中央に向かって次第に窪んでいく地下の部屋だ。ここには下水溝に通じている蓋がある。開ければ灰色の蚊の大群が上ってくるため、私はたった一度しか開けなかった。小さな虎斑の本物の蚊だ。セビリアの地下に巣食うその神秘の口は湿っている。処女のように空腹で荒々しかった。まだ血を味わったことがなかったのである。不良のおてんば娘のように痩せこけて熱風に歌を響かせていた。まるで飛行する極小のオルゴールといったところだ。そのかぼそい音があまりに近くで聞こえ

          ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセン「虫」翻訳【未邦訳作品】

          フランツ・カフカにおける馬の形象【全編無料】

          序章 「火夫」の成立過程 この日記は「判決」を一晩で書き上げた一九一二年九月二十三日の二日後に書かれた。バウムというのはオスカー・バウムというカフカと同い年の友達である。目の見えない作家としてドイツ語圏文学のなかに作品が残っている。一九〇四年にプラハサークル(Prager Kreis)という文学・思想集団をのちにカフカの遺稿編纂者になる小説家・翻訳家・シオニストのマックス・ブロートが創設した。その一員である。他に哲学者フェリックス・ヴェルチェなどがいる。詳細は以下の本を参照。

          フランツ・カフカにおける馬の形象【全編無料】

          『未来のイヴ』読書会の記録【感想・ネタバレ】

          底本 ※この記事は『未来のイヴ』のネタバレを含みます。 読書会までの道のり  きっかけは去年の12月17日(土)に遡る。私は友人とジュール・ヴェルヌ『月世界へ行く』で読書会を行った。その一月ほどまえから私はイーロン・マスクを通して宇宙開発に関心を持っていたのだ。自分の小説のために読んだのである。そのとき『未来のイヴ』も一緒にやりたいと提案されたのだが、テーマが違いすぎる。決定的な点で言えば両作品とも長かった。  私は現在のところ無職だが、いろいろな用事を入れて忙しくして

          『未来のイヴ』読書会の記録【感想・ネタバレ】