子ども・子育て支援金は得なのか
子ども・子育て支援金が話題になっています。
「子ども・子育て支援金」であなたの負担はどうなる?保険加入者1人平均月350円~600円 被保険者 最高950円 | NHK | 少子化
この支援金制度は、政府によって策定された「こども未来戦略」における「加速化プラン」として、今後3年間に集中的に取り組む施策の財源の一部として設けられたものです。
政府は推進したいようですが、国民にとっては新たな負担となるため、国会の中でも賛否が割れています。
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連日のニュースを見ていると、負担増だけがクローズアップされて、何のために使われるものなのか、いまいちよく分からないので調べてみました。
1 子ども・子育て支援金制度について
この支援金は、こども未来戦略における「加速化プラン」のために使用されるとありますが、具体的にはどのような施策なのでしょうか。こども家庭庁で最近公表された資料によると、以下のとおりです。
・児童手当の拡充
・妊娠・出産時からの支援強化
・大学等の高等教育費の負担軽減を拡充 など
参考:子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について (cfa.go.jp)
この他にも、育休取得率目標 85%への引き上げや「こども誰でも通園制度」の創設など、直接的な給付だけでない制度や改正も行われるようです。
何事も施策を行うには財源が必要です。そのため、「子ども・子育て支援特例公債」に加えて、2026年度から医療保険料に上乗せして加入者から徴収する「支援金制度」を創設するというのが、ざっくりとした支援金制度の枠組みのようです。
2 具体的にどれくらい負担しそうなのか
加速化プランを進めるための支援金の額ですが、2026年度は6000億円、2027年度は8000億円、2028年度以降は1兆円が必要になると言われています。
30代後半の地方公務員は、いくら負担が増えることになるのでしょうか。
総務省の調査によると、大卒の15年ほどの経験年数のある地方公務員の平均月給は353,282円とのことです。給与12か月分と賞与4か月分として約565万円です。これに、手当や残業代を加えて、年収を600万円として計算することとします。
総務省|給与・定員等の状況|令和5年 地方公務員給与実態調査結果の状況 (soumu.go.jp)
2026年度から徴収が始まり、年収600万円だと月に600円が徴収されるようです。そして、必要な財源は28年まで段階的に増えていくため、2027年は800円、28年からは1000円となる想定です。
「支援金制度」年収別 拠出金額の試算まとめる こども家庭庁 | NHK | こども家庭庁
2026年から10年間支援金を支払うと、どのくらいの額になるでしょうか。
2026年:600円×12カ月=7200円
2027年:800円×12カ月=9600円
2028年から8年間:1000円×12か月×8年=96000円
合計 11万2800円です。後半になれば給料も上がることを踏まえると、もう少し額も上がるかと思うので、10年間の負担は12万円ほどでしょうか。年間1.2万円です。
もう一つ別の角度で見てみましょう。この支援金は、政府が公的医療保険を通じて集めるため、保険者一人当たりの負担額も公表しています。公務員などが加入する「共済組合」はすべての保険のなかで最も高くなっています。
こども家庭庁の公表資料によると、共済組合の保険者一人当たりの負担額は、2026年で550円、2027年で750円、2028年以降は950円です。
子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について (cfa.go.jp)
この10年間の負担額は、6600円(2026年)+9000円(2027年)+91200円(2028年から8年間)=106800円です。
先ほどより低くなったのは、この保険者一人当たりの負担額の想定が、すべての加入職員の平均額によるものであるためでしょう。実際は少し上振れすることになるため、やはり10年間で12万円程度になりそうです。
3 子育て世帯はどれほど得ることが出来そうなのか
今回の加速化プランの中で、一番の目玉は児童手当の拡充でしょう。
具体的には、次の3点が変わります。
・支給対象を高校生年代まで拡大(今までは中学生)
・所得制限の撤廃(目安として年収1000万円以上には支給なしだった)
・第三子は支給額が3万円に増額(今までは1.5万円)
所得制限は自分には関係ないとして、支給対象年齢の拡大と、第三子の支給額の増額は大きなニュースです。負担と同様に2026年時点からの10年間で、長男9歳、次男6歳、三男3歳の子どもがいた場合に、どれくらいの負担が増えるか、計算します。
今の制度でも、第三子は3歳から月1.5万円となる加算がありますが、10年間のモデル世帯の児童手当合計額は372万円です。
長男:48万円(12万×小学校4年間)+36万円(12万×中学校3年間)=84万円
次男:72万円(12万×小学校6年間)+36万円(12万×中学校3年間)=108万円
三男:1.5万円×12か月×10年=180万円
これが、拡充をした場合は大幅に増額することになります。高校生まで対象年齢が広がることになるので、皆10年間丸々児童手当を受給できることになることに加えて、第三子の支給額が倍になり、モデル世帯の児童手当合計額は600万円です。
長男:12万×10年(小学校4年間+中学校3年間+高校3年間)=120万円
次男:12万×10年(小学校6年間+中学校3年間+高校1年間)=120万円
三男:36万×10年=360万円
拡充後は児童手当だけで230万円ほど得をすることになります。子どもが三人いる世帯は、負担額の10倍以上の支給があることになります。
加えて、すでに施策に反映されていますが、「出産・子育て応援交付金」として、妊娠・出産することで、出産一回につき10万円、出産費用を補助する「出産育児一時金」も8万円増加しています。
4 まとめ
ポジショントークを承知の上で、子育て世帯ならば、ぜひ進めてほしい制度であるかと思いますが、世間の反応は割れています。
子育て支援金、反対42.1%=賛成は3割強―時事世論調査|最新医療ニュース|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト (jiji.com)
上の記事の中で、子育てをしている人が多い40代の賛成が反対を上回っているのは、児童手当等の恩恵を受けるためと納得できるのですが、「学生は賛成42.4%に対し、反対21.2%」となっている所に驚きました。
学生の多くは子どもがいないでしょうから、自分たちの負担が増えるにもかかわらず、この制度に対して肯定的な見方をしているのは、少子化は自分たちの喫緊の課題と考えている人が多いのかもしれません。
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