見出し画像

依存症

起きてしまったことは仕方がない。先ずその問題解決を優先し、全力を注ぐのみだ。
だけど起きてしまったことを解決する気もないのに相談され、その相談に乗ることは、正直時間の無駄だと思う。
…丁度それに近いことがここ数日間起きていて、私もなまじ知り合いだったので迂闊に時間とエネルギーを注ぎ過ぎたことを後悔した。

依存症は本人だけがその状況に気付かないので、最終的には医者の力を借りないとそこから脱することはなかなか容易ではない。

中には意味のある依存もあると思うけれど、どう…誰が見てもうだつの上がらない夜店のカンツォーネ歌手に、相手の言うままに数日に一回の頻度で深夜のATMに走り数百万近くを注ぎ込んで行く人を見たら、まっとうな神経を持った人ならば誰でもそれは危険だと言うだろう。
だが依存症に陥っているその人は最早注ぎ込んだお金の最終形を見たい一心で、それが無駄だったかどうなのかを確認するまでは危険な投資を辞めたくないと、内心は思っている。
なのに私に相談して来た。

既に答えが出ていると私は彼女に話したけれど、彼女の答えは最悪な最終形を見届けるところにあったようだ。なので最初から、自分の置かれた最悪な状況から撤収する気は無かったらしい。
それが依存症だと薄々分かっていても、自分が投資した大金を捨て金だったとはどうしても認めたくない一心で、最後には…、
最初に私に送って来た悩み相談がまるで冗談だったかのように、本来加害者でもある歌手の仮面をかぶった詐欺師の方を擁護するかのようなメールを置いて行った。

別にいいのよ、夜店の歌手の溜り場の世界をその人が心底楽しんでいるならば、私がそういう客層とは最初から付き合わないだけのことだから。
でも彼女は明らかに、それぞれのメールでカンツォーネ歌手の金蔓にされたことに憤慨する内容の文章を長文で送って来た。

私もそこで無視すれば良かったけれど、私にとっても彼女は善きリスナーだったので、そう若くない彼女の身の上を案じて長時間・長文のメールに付き合い続けた。

お金の問題に関しては、往々にして詐欺をはたらく方にも詐欺のターゲットにされる方にも、双方に問題点と隙があると私は思っている。
先ず少なくとも家庭が円満で、家の中に楽しみや幸福の樹がきちんと育っていればそうした被害に遭うことも無いだろうし、わざわざうだつの上がらない夜店の歌手に入れ込むこともない筈。
だけど彼女は至って夫婦仲は円満であり、彼女自身の趣味の世界は絶対に家庭には持ち込まないと決めていることや、夜店ライブバー通いを奪われることは人生の一部を否定されるに等しい…とまで言って来る、のであれば、
なぜ私にそこで起きたトラブルの相談をして来たのだろう。

最終的には彼女が最も批難していたかのように見えた夜店シャンソン歌手数人の魅力や長所等を書いたメールが早朝に私のメールボックスに送信されたので、私はそれを絶縁状とみなし、金輪際彼女との関係を断ち切る意思をメールで伝えた。
最早彼女は私が関わる相手ではないだろうし、ほぼ犯罪に片足を突っ込んでいる夜店のカンツォーネ歌手をそれでも擁護し続け大金をはたいてコンサートに出掛けて行く人を止める手立ては、私には持ち合わせていないのだし、
まして私は精神科医でもないわけだし。


依存症は本当に恐ろしい。

私も彼女の今の心境はよく分かる、というのも、私も一度目の結婚の時に重度の買い物依存症に陥ったからだ。
やはり後々振り返ると、幸せそうに振る舞っていた家庭の軸がとても危うかったのだ。でも周囲への意地もありその危うい自分崩壊の原因から目を背け、私は幸せだと強く自己洗脳することで自分自身を徹底的に偽り続けた結果、かなりの大金を使い込んでしまった。
そのさなかにある時には誰が何と言おうと、自分自身の欠点には一切耳を貸さず、自分の愚かな行動を武勇伝のように思っていた。完全に病気だ。

或るきっかけで買い物依存症やその他の心の病いから無事脱することが出来て、当時の自分を振り返ると、カンツォーネ歌手に言われるがまま大金を注ぎ込んでいる彼女の心境やメンタルの中身が万華鏡を覗くようによく分かる。
そしてかなしくなる。

私を失ってもなお彼女がその生き方を突き進んで行くのだとしたら、それも彼女の人生。その代わり二度と私の嫌がる話に付き合せないで欲しいと思い、彼女のメールを絶縁状として受け取った…という事実が乾かないうちに私から、十数年の彼女との関わりに幕を引いた。

物事引き際が大切だ。
何かを確かめたいと願い最悪の最終形を追ってボロボロになるまで止められない人は、結局のところ自虐的な性格なのだと思う。
私はそういう自虐性を肯定出来ないので、これ以上彼女のそういう危うい性格と向き合っているといつか自分まで感化され、家庭を壊してしまうことになりかねないという危機感を感じた。

最後に不思議に思ったこと。
それは彼女が、大金を注ぎ込んでまで足げく通っている夜店系シャンソン・カンツォーネのライブバーの世界を、一切彼女のご主人とは共有しない、その状態で「家庭は至って円満、夫婦仲もいい」と彼女が思い込んでいること。
彼女のご主人がそのカンツォーネ歌手に彼女が数百万円もの大金を援助したと知ったら、どうするだろう…。

少なくとも私が彼女のご主人の立場だったら先ず精神科医に連れて行くか、或いは離婚するかの何れかを選択するだろう…と思った。

夫婦の中に隠し事を持つようでは、その夫婦関係が上手く行っているとは私には思えない。
そしてそういう隠し事を夫婦間に持つことも一つのライフスタイルだ…というような、私はそういう裏表のある生き方を推奨しないし共感出来ないと思った。

記事を気に入って下さった暁には是非、サポートで応援して下さい。 皆様からのエネルギーは全て、創作活動の為に使わせて頂きます💑