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After playing my Tango

以前私が関わっていた仕事が原因で、ずっとリズム音楽にはトラウマを抱えていた。
あくまで私は歌手の伴奏。なので歌手の速度やエモーションを後ろから支えることが仕事と割り切っていたけれど、何かと歌い手の要求は横暴だった。

特にテンポの問題。
歌手のテンポに合わせているにも関わらず、「どんどんテンポが速くなって歌えない。」などのクレームが後を絶たなかったのだけど、よくよく現場録音を後から聴き返すと歌手の方のテンポが突っ込んで行くのがよく分かる。
でもそれを言えば仕事を失う…、だから言えない…の悪循環だった。

先週久し振りにタンゴを録音してみて、私のマイペースの速度を楽曲全体でずっとKeep出来ていたことが分かって、それが大きな収穫だと思った。
勿論エモーションの部分で過熱し過ぎないことも含めて、最近は極力クールな演奏を一曲全体を通してKeep出来るようになったのも、やはり長きに渡って関わり続け私を苦しめて来た夜の歌の世界ときっぱり決別したからだと思っている。

先週末、その世界で最後のリスナーであり、私が業界を去った後に少しだけ友人関係を持っていた女性とも決別。
結局彼女はあちら側の世界にしっかりと染まっていて、大海原を漂流する世界の本物の音楽や本物の考え方を受け入れるには彼女の見ている世界が狭すぎると感じ、必然的に関わりが切れて行った。

私もずっと地下室の音楽を奏でていた人。でも心は地下水に染まっては居なかった。
皮肉にも過去の世界で散々演奏していたタンゴを再演したことで、私自身も地下室の音楽に対する大きな禊を済ませたと感じている。

2枚目のCD(来年秋にリリース予定)には、実はそれ以上の禊となる楽曲が数曲収録される予定。
今回のタンゴよりももっと過酷な禊を既にそこで済ませてはいたものの、私が過去に関わって来た音楽に対する私の答えを全て音楽で明示して行くには、まだまだ長い時間がかかりそうだ。


This is new piano track of Didier Merah. Enjoy the "Tango"! ?

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