妄想-私があなたなら-

あの時
そのリズムがふわりと私の中に飛び込んで
なんだか舞いたくなった
舞っているうちに
嬉しくなって
空気と一緒になりたくて
纏っている全てから解放されたくて
着物をハダケタ
腰にまとわりつく着物も邪魔になって
ひよいっと抜き取った
残るのは腰に結んであった紐
解くひとときも惜しんで
ただ楽しくて舞い続けた

その姿は
裸に腰紐
結び目からはひらりと紐が垂れ下がり
ちょうどいい具合に秘めたところが隠される

その姿はなんとも官能的で
見ているものたちはどよめいた
周りのどよめきに目もくれず
ただひたすらに
音に合わせて舞いたくて

周りが響めくほどに
ますます激しく深く舞に入り込む
無意識の中でただ心地よく幸せで
カラダの一つ一つの細胞が音と共鳴して
とびはねる
その姿に人々は集まり
つられて舞うものも出てくる
熱気の中で
本能のまま
舞い続ける…

誰のためでもない
ただ自分のために

人々のエネルギーを受け
ますます内から込み上げてくる熱いもの
天に昇る龍の如く
胸を突き上げ天を仰ぎ
身も心も解放される

ふと気づいたら
仰いだ天がキラキラと眩しくて

自分が何をしたのか分からないけれど

久々のおひさまに
みんなの笑顔があふれかえっている

みんなの喜ぶ顔がなんだかとても嬉しくて
とてもら柔らかな気持ちになる

おひさまはいい

キラキラと輝く光のもとで
今度はみんなと手を取り合って楽しく踊る

とても
とっても
あたたかいきもち

私を踊らせてくれたあの音を奏でたのは
誰だったのか…

皆は私に礼を言うけれど
あの音がなければ私は踊っていない
着物をはだけることもなかった

人々に紛れ
姿を見失ったけれど
あれからずっと
その人を探している

いつかきっと出逢える

顔も分からないけれど
あの音を聞けば私の細胞が踊り出すだろう

この感覚…
そうこの感覚…

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