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表現の可能性の教育:ブルーノ・ムナーリのメソッドが求めてくる課題
ブルーノ・ムナーリのワークショップ・メソッドの面白さと難しさとは何か、ムナーリのプログラムをとりあげながら、すこし考えてみたいと思います。
ムナーリのワークショップのプログラムの一つに、「segni:サイン」と呼ばれるプログラムがあります。
イタリアの「ブルーノ・ムナーリ協会」のシルヴァーナ・スペラーティさんが来日して子どものワークショップをおこなったドキュメンタリー番組(2016)でも、こ
イタリアの人形劇と民主主義と幼児教育の不思議な関係
2023年末、研究調査のためにイタリアのレッジョ・エミリアを訪れました。
あわただしく調査を終えて帰国の途につく当日、ぽっかり空いた時間に市内の美術館で「マリオネットとアヴァンギャルド」と題した展覧会を訪れたところ、大変内容の深い、面白い展示を見ることができました。
展覧会の概要についてはHPの解説をざっくりと訳して紹介します:
MARIONETTE E AVANGUARDIA
Palazzo
ブルーノ・チアリの新しい教育技術とICTを考える
レッジョ・エミリアの幼児教育を調べていくうちに、レッジョの教育改革を牽引したローリス・マラグッツィに影響を与えたブルーノ・チアリという教育者の存在を知りました。
これまでにも断片的にチアリと彼が関わっていたイタリアの教育協力運動(MCE)について覚書を書いてきましたが、チアリについて日本語で読める資料が少なく、このところ拙いなりにチアリが1962年に出版した『新しい教育技術(Le nuove
ローリス・マラグッツィ国際センターのこと
先日「レッジョに見学に行きたいと思っています」という方からご相談を受ける機会がありました。私もレッジョ・エミリア(レッジョ)の街を訪れたのは一度きりの「ニワカ」なので、お伝えできることと言ったら自分が訪問したときの様子だけなのですが、この機会に振り返って整理してみようと思います。
レッジョを訪れたのは世界中に新型コロナウイルスが蔓延するパンデミックのすこし前、2019年6月のことです。
レッジョ
教育の越境性をめぐる闘い:ローリス・マラグッツィの言葉から
レッジョ・エミリアの幼児教育の革新の中心人物であったローリス・マラグッツィについては、日本でも徐々に詳しい資料が紹介されるようになっていますが、英語版で出版されている『Loris Malaguzzi and the Schools of Reggio Emilia: A selection of his writings and speeches, 1945-1993』(Routeledge, 2
もっとみるLa leggerezza del pensiero creativo:創造的思考の軽やかさ アルベルト・ムナーリ教授のインタビュー 〜創造性と障碍について
イタリア・トリノの「Area onlus」という、障碍のある人たちをサポートする組織が、2010年にジュネーブ大学名誉教授で認識論学者のアルベルト・ムナーリ教授へインタビューした記事を発見しました。
Area onlus Torino
https://www.areato.org/
L’Associazione prende vita da una solida tradizione fila
イタリアの「子どもを尊重する教育」に関わる人たち
論文にまとめるにはテーマが広がりすぎるのと、自分の興味の対象への理解を深めるために調べたあれこれの整理として、まとめてみました。
イタリアの「子どもを尊重する教育」というと、今日まっさきに思い浮かぶのはレッジョ・エミリアの幼児教育かもしれません。
レッジョ・エミリアの幼児教育の発展を牽引した人物、ローリス・マラグッツィの「子どもたちの100の言葉」という詩は、従来の教育が子どもに「大人の学びを強
ブルーノ・ムナーリ『触覚のワークショップ』
もともとデザイナー・ブルーノ・ムナーリに関心をもって追いかけていたのですが、あるとき出会ったこの一冊がムナーリの教育研究へと踏み込むきっかけとなりました。その『触覚のワークショップ』の冒頭の一節をご紹介します。
「さわることの意味」
子どもたちは自分のまわりの世界を理解するために、色々な感覚を組み合わせている。
様々な感覚の中でも特に触覚はひんぱんに必要とされる感覚で、見て、聴いて感じたもの