これが“焼酎のノンアルビール割り”だ

先々週の金曜日に酒屋の前を通ったとき、「なんとなく、のぞいてみるか」という気になった。
まずビールコーナーに行く。ぼくだけだろうか。お酒を飲むときはまずビールから初めて芋焼酎や日本酒にいくのだけれど、酒屋の店内を回るときもそれと同じで最初にビールコーナーから見てしまう。
「財布も軽いし、ビールじゃなくて発泡酒・・・いや第三にするか。するとやっぱり『ホワイトベルグ』かなぁ」
そんなことを思いながら冷蔵ケースのノブに手を掛けようとしたとき、隣の冷蔵ケースに見慣れないビールがあった。新製品か?

よく見るとそれはビールではなく、ノンアルコールビールだった。普段ノンアルコールビール(以下、ノンアルと表す)を飲まないので、新製品ビールかと見間違ったのだ。
「一本あたり100円ちょっとか、ビールと比べるとほんと安いなあ。でもノンアルだしな」
ここで啓示を受けた。天啓である。
ノンアルビールがノンアルコールなら、有アルコールに作り替えればいいのである。
ぼくのバイブルの一つ、藤子A先生の『まんが道』ではトキワ荘の先輩漫画家のテラさんが焼酎のサイダー割り「チューダー」を主人公の満賀に振る舞うシーンがある。そのシーンが唐突に脳裏によぎった。

ノンアルコールビールに、焼酎を混ぜてビールと同等の度数にすればいいのである。

ようするにホッピーのようにノンアルを使えばいいのである。
ビールよりもはるかに安いし、焼酎なので翌日にも響かない。
我ながら、驚くほどの意識低い発想である。

さっそく、手頃と思うオシャレなパッケージのノンアルを一本持ってレジへと向かった。
その日の晩、キンキンに冷やしたノンアルを取り出し、いざ焼酎を、と思ったが衝撃的なことに気づいた。焼酎を切らしていたのだ。

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一週間後・・・。

ぼくは再びあの酒屋に行き、今度は焼酎を購入した。

画像1

宝焼酎の『純』35度。
もっと安い20度の焼酎もたくさんある。札幌人ということで地元愛に配慮して『ビッグマン』の納入も検討されたが、ある理由においてこちらの選択となった。その理由については後述する。

次はアテである。どんな味の酒になるかわからない。なのでアテ選びも慎重に行わざるを得ない。繊細な味のアテだと、酒の味が個性的(配慮表現)な場合、負けてしまう。湯豆腐なんぞもってのほかだ。

熟慮を重ねた結果、鳥レバーを選んだ。鳥レバーにニンニク、甘口醤油で下品かつ豪快に炒めたものならばどんな酒が来ても負けはしない。

金曜深夜・・・。ついにその時がやって来た。
ノンアルも、焼酎も冷蔵庫で冷やしてある。割合も正確にいきたいので、水割りの計算式を教えてくれるこちらのサイトを使わせていただいた。

先だって、なぜこの焼酎にしたか後述すると記した。それは、この『純』が35度という焼酎界においては最もヘビー級の度数を持つ酒だからである。これが20度や25度のものであれば、それだけ入れる焼酎の割合が多くなり、ノンアルのビール風味が薄くなってしまうからだ。

まず焼酎をグラスに注ぎ、そこに追ってノンアル。
これが完成図である。

画像2

ノンアル焼酎割りと、アテの鳥レバーニンニク醤油炒めである。

前回、焼酎の買い忘れで飲めなかったという思いが、より期待値を激増させる。
緊張に震える手で、グラスを持って口へ運ぶ。
ごっくりと喉を鳴らして一口、ふた口と飲んでみる。


「あー、こんなもんか・・・」


それが感想である。ひとことで言って薄い。ビールの風味もコクもない。あと鉄っぽい尖った味がする。

飲めなくはない、だがもう一杯これにいくかと言われるとそれなら『純』の炭酸割りの方がこのアテには合うだろう。
悲しくなったぼくはすぐにテレビをつけてザッピングし、見る番組がないので撮りためていた『町中華で飲ろうぜ』を再生する。

主演の玉ちゃんのファッションに目を奪われながら、漫然と焼酎ノンアル割りを口に運んでるうちに、あることに気づいた。

「もしかして焼酎で割ったことじゃなく、もとからこのノンアルが不味かったんじゃねえのか!?」
慌てて台所へ向かい、余ったノンアルを口に運ぶと、やはり風味薄のコク薄の鉄臭がした。
そう、原因は焼酎で割ったことではない、このノンアルがアレだったからであった。

ぼくは負けた。だがそれは完敗ではなく、局地戦においての敗戦である。選んだパートナーが悪かった。
幸い、割るための焼酎はまだまだふんだんにあるし、その酒屋のノンアルコーナーはそれなりの充実度だったはずだ。

アイシャルリターン、脳内のマ元帥がそうつぶやいた。


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