Ⅲ.習近平新時代中国特色社会主義思想・学生読本・初中 p.27【3-1-2】

2.“五位一体”战略目标是建设富强民主文明和谐美丽中国

2.「五位一体」の戦略目標は「富強」「民主」「文明」「調和」「美麗」な中国を建設すること。

①五位一体:中国共産党の骨太方針で経済・政治・文化・社会・エコの5本柱からなる。鄧小平の「改革開放」(1978)の時点では経済・政治・文化の三位一体だったが、第十七回全人代(2007)の報告で「社会」が追加されて四位一体となり、さらに第十八回全人代(2012)でエコが加わり五位一体となった。
②富强・民主・文明・和谐・美丽(富强・民主・文明・和諧・美麗):最初の四つは習近平が掲げる24個の「社会主義核心価値観」のうち、「国家が守るべき価値観」に分類される概念である。字面は同じでも日本語とはニュアンスが異なる場合があるので、注意が必要である。
③富强:富国強兵。
④民主:中国語の「民主」は、日本語の民主主義(民以て主と為る)・デモクラシーではなく、民本主義(民を以て主と為す)・人民ファーストという意味合いである。たしかに中国にも直接投票で地方議員を選出する制度はあるが、そもそも立候補には中国共産党の認可が必要であるし、また地方政府の首長は官選である。たしかに政府は民意に充分配慮はするのだが、制度として民意が政府方針を決定する仕組みになっていない。
⑤文明:“野蛮”の対義語で、科学水準ではなく公衆マナーや民度、文化水準の高さを指し、日本語の“文化的”に近い。明治時代の「文明開化」をイメージ。ちなみに男性用トイレの小便器の上に「向前一小步、文明一大步」という標語が貼ってある。
⑥和谐(和諧):調和・協調という意味だが、「民族調和」を意味合いが強い(と思う)。
⑦美丽(美麗):美しさという意味だが、ここでは特に自然環境の美しさを意味する。

補説:社会主義核心価値観(社会主义核心价值观)
習近平が、2012年11月「第十八回全人代」で国家主席となった後、それまでのひたすら物質的豊かさを追求する「改革開放」に代わる社会理念として打ち出した24個の二字熟語。

  国家が目標とすべき価値観:富強・民主・文明・和諧
  社会で大事にすべき価値観:自由・平等・公正・法治
  中国人民が守るべき価値観:愛国・敬業・誠信・友善

中国では公共空間のあらゆる場所にこれら24個の概念を記した啓発ポスターが掲示されている。

 日本人としては、「政府が国民共通の価値観を定めて、それを国民に押し付けている」ことに強烈な違和感を覚えるが、逆に言えば、戦前の日本の『教育勅語』の問題点がよく分かる。つまり内容がどうこうという話ではなく、「精神の自由」を基盤とする立憲君主政において、政府が有権者の「良心」を定義するという行為自体に矛盾がある(ということを、『教育勅語』の起草者井上毅本人はよく理解していた。)
 昨今のヘイトスピーチ解消法やLGBT法といった理念法の問題点も、ここにあるように思う。内容や目的の是々非々以前に、良心のあり方を「法律で定める」という手段について、もっと慎重に議論するべきではなかったか。

2-1:“五位一体”总体布局是经济、政治、文化、社会、生态文明建设全面发展的总体布局,蕴含着富强、民主、文明、和谐、美丽的目标。统筹推进“五位一体”总体布局,就是不仅要推动经济社会的发展,还要推动民主法治的健全、文化艺术的繁荣、社会秩序的稳定、生态环境的美丽,建设富强中国、民主中国、文明中国、和谐中国和美丽中国。

意訳:「五位一体」の総体的な布陣とは、経済・政治・文化・社会・エコ文明の建設と全面的発展という布陣であり、「富強」(富国強兵)・「民主」(人民ファースト)・「文明」(文化レベル)・「和諧」(民族協調)・「美麗」(自然環境の美しさ)という目標を含んでいます。
 「五位一体」の総体的な布陣を統一的に推進することは、経済や社会の発展を推進するだけでなく、さらに「民主」(人民ファースト)と法治システムの健全さ、文化と芸術の繁栄、社会秩序の安定、エコ環境の美しさを推進し、豊かで強い(富強)中国、人民ファースト(民主)な中国、文化(文明)的な中国、〔55の民族が〕協調(和谐)する中国、〔自然環境が〕美しい(美丽)中国を建設しなければなりません。

①统筹:統一的に計画を立てる。 统筹全局:全局面に対して統括的な計画を立てる。
②法治:“人治”の対義語。“人治”とは、今どきの若者には通じにくい比喩だが、『遠山の金さん』や『水戸黄門』のような、為政者の心情と判断で判決や量刑が決まる仕組みである。判決を下す人物の道徳性に全てかかっているので、聡明で公正無私な人物がその役に就いていればいいが、そういう人物はそもそも少ないので、大抵の場合、収賄やコネが幅を利かすことになる。“法治”とは、為政者個人の道徳性や聡明性に依拠するのをやめて、明文化されたルールに沿って処理していくやり方で、為政者個人の資質に関係なく一定の入力に対して一定の出力が出されるので、「法の下の平等」が(完全にとはいわないまでも)ある程度担保される。

2-2:富强是社会主义现代化国家经济建设的要求,是中华民族梦寐以求的美好夙愿,也是国家繁荣昌盛、人民幸福安康的物质基础。发展是解决我国一切问题的基础和关键,我们要贯彻创新、协调、绿色、开放、共享的新发展理念,不断提高我国的经济实力和综合国力。

意訳:富強(富国強兵)は現代化された社会主義的国家経済の建設という要求であり、中華民族が夢にまで見る素晴らしい宿願であり、国家の繁栄と隆盛、人民の幸福と健康という物質的基礎です。発展は我が国の一切の問題を解決する基礎であり鍵であり、私達は「創新」(イノベーション)・「協調」・「緑色」(エコ)・「開放」、「共亨」(シェア)という新しい発展的理念を貫徹し、我が国の経済的な実力と総合的な国力を絶えず向上させなければなりません。

①新发展理念(新発展理念):「五大发展理念」(五大発展理念)ともいい、中国社会が発展していくために必要な5つの理念、すなわち「创新」(創新:イノベーション)・「协调」(協調)・「绿色」(緑色:グリーンエコロジー)・开放(開放:規制緩和)・共享(シェアリング)を指す。2015年の第十八回全人代の第五次中央委員会全体会議(中全会)において、「“十三五”规划」(十三五規画:十三個の五ヵ年計画」を達成するうえで必要な理念として提出された。

○参考:
新たな発展理念〉(国政運営を語るⅡ)・《キーワードで中国を知る》
习近平在安徽调研时强调 全面落实“十三五”规划纲要 加强改革创新开创发展新局面〉《共産党網》

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