安井息軒〈文会社約〉06

(06)

原文-06:一、會之文、分而評之。各一篇、人若少文多、從宜分之。主人掌其政、旣歸之後、盡心討論、不腹非而口善之。果係合作、亦粗加評點、以獎賞之。
 夫旣有賞、宜立罰以濟之。若有文不成者、酒客禁其飲。戸小者浮白七舉。可以飲、可以無飲者,專任批評之責。

訓読-06:一、會の文は、分ちて之を評す。各々一篇、人若(も)し少なく文多ければ、宜しきに從ひて之を分つ。主人は其の政を掌り、旣に之を歸して後、心を盡して討論し、腹非(そし)りて口之を善みせず。果して合作に係るも、亦た粗く評點を加へ、以て之を獎賞す。
 夫れ旣に賞有れば、宜しく罰を立てて以て之を濟(ひと)しくすべし。若(も)し文成らざる者有れば、酒客は其の飲を禁ず。戸小さき者は浮白七舉。以て飲むべきも、以て飲む無かるべき者は、專ら批評の責を任ず。

意訳-06:一、本会(會)の詩文は、〔参加者全員で〕分担して批評する。各々一篇〔を担当するが〕、もし〔当日の〕参加者が少なくて〔提出された〕詩文が多ければ、〔文字数などを加味して担当量が平等になるよう〕適宜分ける。幹事役(主人)が〔誰がどの作品の批評を担当するかという割当を〕仕切り、〔みなが担当した作品に目を通し、作者の手元に作品を〕返した後は、〔互いの作品について〕本気で討論し、〔悪いところがあれば忌憚なく指摘して、決して〕腹の中で誹謗しながら口では称賛するような真似はしない。〔複数人の〕合作による作品にも、ざっと評点を加え、〔最も評点が高かった作品を〕報奨する。

 そもそも「賞」があれば、「罰」を立ててバランスを取らなければならない。もし〔会合当日までに〕作品(文)ができなかった者がいれば、酒好き(酒客)であればその日の飲酒を禁じる。酒量が少ない者は、ペナルティとして罰酒を7杯空ける。〔本来なら多少〕飲めるが、〔健康上の理由などで〕飲まないほうがいい者は、〔罰の設けようがないので、他人の作品の〕批評という責任に専念させる。

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