競技能力を決めるのは?【先天的vs後天的】

ドイツで学んできたライプツィヒ学派コオーディネーショントレーニング。ここから、自分が思うことを付加していくつか話をしたいと思います。今回は、「能力を決めるのは遺伝??それとも環境??」ってことを絡めていきます。

まず、コオーディネーション能力とは?

一言で言うと
「数多くの動作/行為の前提」
です。
コオーディネーション は、7つの能力に分類し定義されています。
(詳しくはまた別の機会に)
従って、この能力が高いと様々な目標達成に貢献することが期待されると。スポーツ技術習得にも影響を与えると言えます。

コオーディネーション能力は、”活動”(トレーニング、学習、練習)によって上達することができるとなっています。つまりは、後天的な要素で上達することができる。”環境”によって変えられると言うことです。

ただ、一方で”素質”も成果に影響すると。。。。結局、そこって”遺伝”ですよね。

結局、両方、大事ってことですよね。。。で、話が終わるんですけど、もう少し、話を続けて行こうかと。

誰もがトップレベルに。「10000時間の法則」

マルコム・グラッドウェル(イギリス生まれのジャーナリスト)の著書:Outliers(邦題:天才!:2009年。訳者:勝間和代さん。って、あの勝間さんでいいんですよね?)で主張された「10000時間の法則」。皆さん、ご存知ですか? フロリダ州立大学のアンダース・エリクソン教授の研究内容をもとにマルコム・グラッドウェルは書籍を書いています。めちゃめちゃ簡単に言うと、
「誰でも、計画的練習をきちんと継続すれば、
その分野のエキスパートレベルになれる。」

ってことです。

実際、エリクソン教授は、1993年にベルリン西部の音楽学院にて、バイオリストを「最優秀」、「優秀」、「優秀でない」の3段階のレベルに技能レベルを分け、聞き取り調査を行なっています。どのグループも、8歳くらいからレッスンを受け始め、週に50.6時間をバイオリン練習に費やしていました。上位と下位の違いは、

個人練習の時間:上位⇨24.3時間/週。下位⇨9.3時間/週。
平均睡眠時間:上位⇨60時間/週。 下位⇨54.6時間/週。
18歳までの総練習時間:最優秀⇨平均7410時間、優秀⇨5310時間、優秀ではない⇨3420時間

といった感じだったそうです。つまり、レッスンを受け始めてから、早いタイミングで個人練習時間を中心にトータルの練習量が多いという傾向があったと言うことです。ここから、バイオリンの技能と練習時間の累計値は相関関係があると結論付けをしました。これ以降、様々な書籍で触れられ、議論された研究になります。

ディヴィッド・エプスタイン(アメリカ生まれのジャーナリスト)の著書;スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?2014年でも、「10000時間の法則」は説明され、そして、いくつかの事例が紹介されています。

チェスマスターの事例:
マスターレベルに到達するための練習時間は、約11000時間。
ただ、3000時間で到達した者もいれば、23000時間かかった者もいた。
走り高跳びの事例:
18年間トレーニングをしてきた熟練者が、トレーニング歴8ヶ月のルーキーに世界選手権で負けた。
他スポーツのアスリートがエリートレベルに達するまでに必要な計画的練習時間:
バスケットボール⇨平均4000時間
フィールドホッケー⇨平均4000時間
レスリング⇨平均6000時間

と言うことで、種目によって一定レベルに到達するまでに、練習時間の”バラツキ”があるし、種目によって、必要時間が変わってくるし、そして、”個人の素質”によって変わってしまうのかなと。
この書籍の中には、聖書の言葉を引用して、
「持てる者はさらに与えられて富み栄え、
持たざる者はその持てる物さえも取り上げられるであろう。」

と言っている。
つまり、トレーニングをすると、全ての選手が上達はする。
でも、その上達率は一定して異なっている。
結局、同じことをしても、伸び率は個人差がどうしてもあるということですよね。

ジョージア工科大学の研究者:フィリップ・アッカーマンの研究によると、「訓練の積み重ねによって個人差は減少しますが、被験者間の分散が完全に消滅する研究は一つもありません。」と言っています。
やっぱり、そうですよね。。。
どんなにきちんと計画的な練習をしても、全員がエリートアスリートになれるわけではない。これは現実だと思います。

ただ、”プロ”にはなれなくても、”アマチュアトップ”レベルにはトレーニングで到達できるのでは?とは思ってます。
もしくは、その個人の特性を理解し、別のキャリア=他競技への転向などをうまく促せば、高いレベルで活躍できる人がもっと増えると思っています。

もちろん、選手個人の趣向はあると思います。
どうしてもその競技がやりたいなら、それを止めることはできない。
ただ、スポーツ界全体を見ると、"タレント発掘・育成・キャリア転向"などを、もっと考えてもいいのかなと。

個人が輝けるように、基礎能力を磨く。
個人の特性を見出してあげる。

そう言うことが、幼少期にできればいいのかなと、
ドイツに行ってさらに強く感じてきました。

よろしければ、サポートをお願いします。情報発信するためのトレーニングセミナー開催費用や、ジュニア世代へのコオーディネーショントレーニング指導などの活動費として活用させていただきます。