ベートーヴェン：ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73 ｢皇帝｣
19:14 II. Adagio un poco mosso
27:28 III. Rondo. Allegro
（ピアノ）マルグリット・ロン
シャルル・ミュンシュ指揮
パリ音楽院管弦楽団
1944年6月11日&18日録音
ベートーベンのピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」は、ベートーベンの5つのピアノ協奏曲の中で最も有名であり、最後の作品です。この協奏曲は1809年に作曲され、1810年に初演されました。
### 背景
- **作曲時期**: ベートーベンはこの作品を1809年にウィーンで作曲しました。この時期、ウィーンはナポレオン戦争の影響を強く受けており、ベートーベン自身もその影響を受けました。
- **愛称「皇帝」**: この協奏曲が「皇帝」と呼ばれるようになったのは、ドイツ語で「Kaiser-Konzert」とも呼ばれ、帝国の力強さや威厳を象徴するような壮大な音楽が特徴的だからです。ベートーベン自身はこの愛称をつけたわけではなく、後世の人々がそう呼び始めました。
### 構成
この協奏曲は3つの楽章から成ります。
1. **第一楽章：アレグロ**
力強いオーケストラの序奏に続き、ピアノの華やかなカデンツァが現れます。この楽章は、威厳とエネルギーに満ちた主題が展開されます。
2. **第二楽章：アダージョ・ウン・ポコ・モッソ**
静かで美しいメロディが特徴の緩徐楽章です。深い感情と瞑想的な雰囲気が漂う、まるで夜の静けさを思わせるような音楽です。
3. **第三楽章：ロンド・アレグロ**
明るく、活気に満ちたフィナーレ。軽快なリズムと華麗なピアノの技巧が際立ちます。第一楽章のテーマを想起させる要素があり、全体を通じての統一感を感じさせます。
### 音楽的特徴
- **ピアノとオーケストラの対話**: ピアノとオーケストラのやり取りが巧妙に組み合わさり、相互に補完し合う関係が見事に描かれています。
- **カデンツァ**: ベートーベンのピアノ協奏曲では、伝統的にソリストが即興で演奏するカデンツァが含まれますが、この「皇帝」協奏曲では、ベートーベン自身が全てのカデンツァを作曲しました。
- **独創性**: ベートーベンはこの作品で、古典派の形式を超えてロマン派への橋渡しをするような革新性を示しています。特に、第一楽章の冒頭にピアノがオーケストラと同等に重要な役割を果たす点がその例です。
### 初演と評価
- **初演**: 1810年にライプツィヒで行われましたが、ベートーベン自身は聴覚障害が進行していたため、自ら演奏することはできませんでした。
- **評価**: 初演時から非常に高い評価を受け、今日でも最も愛されるピアノ協奏曲の一つとして広く演奏されています。
「皇帝」協奏曲は、その壮大さと美しさ、技術的な挑戦が組み合わさり、ピアニストや聴衆を魅了し続けています。
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