Diar13

詩、歌詞、短歌や小説を紡いでいきます。

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美しい逆説

明るい星をみたいなら 明かりのない地へ行くこと 自分が満たされたいなら 他人の心をあたたかくすること 弱さを知った者は弱くなく 卑小さを知った者は もう卑小ではない 強さを恐れるものは強く 偉大さを知れる者は 既に十全に偉大なのだ 生き続けることが 死へ向かいつつあるように わたしたちは 美しい逆説

    • 【小説】メッセージ・ボトル第2話④

      「いやぁ、マスター。さすがにそれはないですよ。今、令和っすよ。って、理由になってないっすね。 いや、でも、あれか、センパイ。ひょっとしたら、ね。願掛け的には、ありかもですね。ちょっと、ぼくじゅ……っていうか、個性的な色だけど、その分効きそう、っていうか、ね」 どう対応したらいいか分からない生田をよそに、腕を組んだまま小林は黒ワインと紙とペンを眺め、 「昔、どこかの本で読んだ気がするな、黒ワインの話。あれは小説だったか。いや、ちがったか……。いや、まぁ、ものは試しだ」 といいな

      • 【小説】メッセージ・ボトル第2話③

        「すいません、柄にもなく小難しい話を長々と」 マスターは照れくさそうに言った。 「いや、マスター、めちゃめちゃ詳しいッスね。すごいッス」 生田はそう言いながら、ジントニックをごくりと飲んだ。 隣の小林は右ひじをついた手のひらにあごを乗せたまま、ためいきまじりに「俺の学歴コンプレックスもなくなれば、少しは自由になるのかな」とつぶやく。 「センパイ、そんなん気にしなくたっていいっすよ。そもそも学歴で人を判断するようなヤツに、ロクなのいないんすから。」 「あのなぁ、それを学歴のある

        • 【小説】メッセージ・ボトル 第2話②

          私自身、学歴とは程遠い生活をしてきましたのでお話できるほどのことはありませんが、以前、そういった研究をされている大学教授の方が1人でいらっしゃって、私に教えてくださったことがあります。 なんでもその方によりますと、学歴社会が始まったのは明治の頃のようですね。ですから約150年くらいのことですかね。 これを長いと捉えるか、短いと捉えるかは分かりませんが、近代国家の成立とほぼ時を同じくして出来ていますからその力は根強いかもしれませんね。 学歴社会の前の日本は身分階級社会でした。

        • 固定された記事

        美しい逆説

          【小説】メッセージ・ボトル 第2話①

          「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」 店を出る30代そこそこの男女の背中にマスターが声をかけると、店内には仕事帰りらしい2人だけになった。 1人は40代前半、もう1人は20代後半の男である。 「センパイ、もうくよくよしなくていいじゃないですか。我々としてはやれることはやったんですから」 「生田はいいよなぁ、さっぱりしてて。俺はね、分かってても引きずっちゃうんだよね」 「小林先輩、だって今回のはしょうがないじゃないですか。我々が試算したコストの3分の

          【小説】メッセージ・ボトル 第2話①

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話④

          マスターは慣れた手つきでメモ帳、その上に万年筆、それから新しい、ステムのないワイングラスを男の前に静かに置いた。 「青ワインはこれで飲むのが決まりなのか」 「いえ、そんなことはありません。 単なる私の気まぐれですが、こちらの方が一気に飲める人が多いので」 「……まずいのか」 「いえ。味わいとしては赤ワインとさほど変わらないんです。 ですが、やはり見慣れない色をしておりますので、一気に飲み干す人が多いですね。とはいっても、それは人間の場合ですが。違うグラスで召し上がりますか」

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話④

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話③

          キャンドルライトを見ていた男はそう話すと、少しだけ微笑みながらマスターの方を向いて続けて言った。 「それで今日、ここに来たって訳だ」 マスターはゆっくりうなずきながら、 「そうでしたか。それでここに。 ……時の流れというものは、あ、いや、何というか、……変わらないものはないんですね」と言った。 「青ワインを飲む前に、普通の、赤か白、お召しになりませんか。 お客様の気持ちの整理も必要かと思いますので」 「ありがとう。 それならバローロをグラスで。 時間だけはたっぷりあるから

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話③

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話②

          全ての形あるものに無化する力が働くように、私のような時を明示する者たちにも、その役目を終える時がくる。 かつて人類は、太陽が作る影の動きをヒントに日時計を作り、また、容器から水が減っていくのをヒントに水時計を作った。 燃焼時計もそれから、マスターが今言った、砂時計も、長い間、時の流れを示し続けていた。 それまでの時計は自然の力を利用していたから、それぞれに正確さを欠いていたものの、人間が時を自覚するのに大いに役に立った。 知ってるかい、砂時計の砂は繰り返し使うことで、擦

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話②

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話①

          都内のとある場所にひっそりと店を構えるバー、「メッセージ・ボトル」。 ここは不思議なワインとお客さんが集まる、一風変わったお店です。 今夜もまた1人、このお店にお客さんがやってきたようです。 —————————————————— 細身で背の高い男が、最終電車がなくなって1時間ほど経った頃、細い階段を下り、透明で重たいガラス戸を開けた。 「まだやってるか」 「ええ、もちろん。いらっしゃいませ」 カウンターの席が7つしかない、こじんまりしたバーだ。 店内は薄暗く、

          【小説】メッセージ・ボトル 第1話①

          【短歌】人のため

          人のため生き抜くことが出来なくて 涙を流すあなたが素敵

          【短歌】人のため

          【短歌】我が生は

          我が生は知る所から 我がことを 他人事では なく、今、ここで。

          【短歌】我が生は

          【短歌】この世をば

          この世をば神の見えざる手としても 我の手を添え叶えてく秋

          【短歌】この世をば

          【短歌】沈みゆく

          沈みゆく夕日であれどあしたには 素知らぬ顔でまたはじめてく

          【短歌】沈みゆく

          【短歌】遅すぎる

          遅すぎることなんてない いつだって そう決めた時がスタートの時

          【短歌】遅すぎる

          【短歌】微笑まし

          微笑まし 怒らず叱る親の愛 祈りにも似た姿がそこに

          【短歌】微笑まし

          【短歌】救いない

          救いないニュースを見ては手は止まり 一体何を思えばいいのか

          【短歌】救いない