見出し画像

【美しい彼 考察3】幸せな束の間の夢 Season1 – 3

さて第3話!2話で仲を深めたように見える二人だがどうなったのか、3話は主に平良の気持ちに軸を置きながら、その後の展開を見ていきたい。

尚、3話は5話と内容がリンクしていて、切り離すことが難しい回となっている。基本的に5話を見てることが前提でレビューするため、5話をまだ見ていない方はすぐにこのページを閉じてほしい。

平良の告白

ついにボーイズコンテストの最終審査まで進んだ清居だったが、落選し夢だった芸能界入りの切符を逃してしまう。
清居がボーイズコンテストに本気だったことは平良だけが知っている。
自分が清居にかける言葉なんてないし、言葉をかけてもウザがられるだけだと分かっているのに、平良は落胆する清居を追いかけてしまう。

案の定(?)、平良は清居の逆鱗に触れ、お前も俺をかわいそうだと思っているのか!と激高される。
ここで引き下がればよかったのだが、他の取り巻きたちと同じだと思われたくない、誤解を解きたい一心で、平良は「死ぬほど清居が好きだ!」と事実上の「告白」をしてしまう。

告白のタイミングとしては最悪で、心に余裕のない清居に「俺は死ぬほどお前が嫌いだ!」「お前マジでキモいな!」と突き飛ばされ、ドラマ史上でも類をみない、思いつく限りで最もひどい振られ方をしてしまう。

普通の神経なら、好きな人に告白してこれだけのことを言われたら、切腹して絶命したい気持ちになる。平良も相当のショックを受けただろう。
しかし、平良はここまで言われても清居への想いを止められない。
むしろここから更に、平良の清居への想いは募っていく…

頂点からの転落

清居がコンテストから落ちたことで、清居を頂点としたヒエラルキーに揺らぎが生じる。
そんな中、平良が取り巻きの一人(城田)から八つ当たりされ、それを制止したことが決定打となって、清居は仲間たちからハブられてしまう。
「(城田と清居)どっちにつく?」という囁きの中で、ピラミッドの頂点にいても、友達となじめてなかった清居は、ついに頂上から転落する。

個人的にこの清居が平良を助けたシーンは印象に残っている。
だって、清居にとって平良を助けることに実利がない。
前回、掃除を押し付けようとする吉田から平良を救ったときは、自分の命令が後回しにされそうになったという点で、助けることに清居側にもメリットがあった。(※1)
今回は清居にはなんの得もない。
むしろこれがきっかけで頂点から転落し、「ぼっち」になり(平良はいるけど)、トマトジュースをぶっかけられるというイジメにすらあうのだ。

一人になりたくなくて、たいして楽しくもなさそうなのに、友人たちと過ごしていた清居。
そんな清居にとって、波が引いたように周りから誰もいなくなり、クラスから「浮いた」存在になるということはきっと耐え難いことだったはずだ。
落選したことをクラスメイトからバカにされて、どれだけ自尊心が傷ついただろうか…。

それでも、「ぼっち」になってもイジメられても、全然高潔さを失わない清居は普通にかっこいい。
トマトジュースをぶっかけられた後、相手の胸倉つかんですごむシーンなんて、平良が信仰心を抱くのもわかるくらい、本当に強くて「美しい彼」だ。

その後、平良がブチ切れて城田に殴り掛かるまでが、いわゆる「トマトジュース事件」である。

キングと臣下のキス

トマトジュース事件の後、平良は一人音楽室にいる清居を見つけ、二人は印象深い会話をする。
清居は普段、他の友人たちといるときは恋愛や性の話題(※2)なんて全然興味なさそうだったのに、そんなことなかったんだと分かるやりとりがあって、まずそのことにちょっと萌えるが、詳細は注釈に譲る。

「お前、男が好きなのか?(※3)」
清居の確信をつく質問に、平良が「分からない」と答えると、清居はあからさまに落胆したような溜息をつく。
この質問をしたということは、清居にとって、3話前半の平良の「告白」は、恋愛対象としての好きという「告白」なのか確信を持てていなかったようだ…。

しかしその後、平良は、他の男子も女子も好きではなく「清居だけが特別」(※4)と語り、気をよくした清居は平良に手の甲にキスすることを許す。
平良は跪いてキスをするけれど、それは姫と王子というより、キングと臣下といった感じだ。
キングに永遠の忠誠を誓うかのようなキスは、とても美しく、尊さすら覚える。

束の間の夢

仲間から疎外された清居は、平良と過ごす時間が多くなり、二人の仲は急激に深まる。
清居はこの時期に付き合う寸前くらいの仲になったと思っていたようだが(5話及びSeason2参照)、ここでも二人の心情にすれ違いがあり、平良は全くそうは思っていない。
たまたま今清居がハブられているから一緒にいるだけの「ボーナスステージ」的なとらえ方をしている。
ある種自分は相変わらず清居に「利用されているだけ」と思っているのだ。

しかし、平良がそう思ってしまうのも無理はない。
だって平良は、告白して盛大に振られている。
「死ぬほどきらい」「マジでキモい」と言われた言葉とその痛みは、確実に平良の心にぶっ刺さっている。

そもそも平良は清居が同性愛者であることも知らない。
「お前マジでキモいな」という言葉は、「(男に告白するなんて)キモい」というニュアンスも含まれていると受け止めていたっておかしくない。
そんな平良からすれば、この時間がつかの間の夢であって、清居に再度告白してこの関係を進展させるなんて、とても考えられないのも無理はないだろう。

その後、清居はファッション雑誌にモデルとして掲載されたことで、また清居の周りに人が集まるようになる。
そして平良の予想通り、二人の秘密の時間は終わるのだった。

卒業式のキス

卒業式の後、平良と清居は校舎裏で二人きりになり、清居は「お前さ、俺になんかいうことないの?」と問う。
後にこれは「好きって言ってほしい」という意味だと判明するのだが、平良は当然そんなことを清居が考えているとはこれっぽっちも思わない。

平良が何も答えられないでいると、清居は突然平良にキスをして、その後思いっきり突き飛ばす。
実は清居にとってはファーストキスで、戸惑いと恥ずかしさから突き飛ばしてしまったのだが(5話で分かる)、平良はそうは受け取らない。
「お情けみたいなキス」…清居にとっては不本意だけど、キモい自分に同情して、最後にキスだけ恵んでくれたのだ、と。
キスしたことで平良は清居への想いが溢れてしまい、好きすぎて辛くて苦しくて耐えられなくて、平良はついに清居への想いを封印する決意をする。

そして、清居と会わなくなって数年たつのだった…
って、えー!!会わずに数年たったの!?
というところで3話は終わる。

次回大学生編!

(※1)とはいっても、この解釈には平良のネガティブバイアスがかかっている。実際の清居は単に吉田に使われる平良が見てられなくて助けたのだろう。自分だって平良を使いっパシリにしてるくせに中々矛盾しているが、すでにこの時点で清居にとって、平良はなんとなく気になる存在だったと思われる。

(※2)「おかしなことにつかうなよ…抜いたり」というセリフには、清居はクールぶってるけど、そういうこと考えたりするんだね!とその健全な男子高校生みに感動すら覚える…。同性愛者であることを隠す清居にとって、こういう話題自体が初めてなんだろうな、ドキドキしながら会話してるんだろうなと思うとその尊さに悶えたくなる…。
その後の平良の「1回だけ。したあとすごくいやな気分になって…」については、本当に1回だけなのかはオタクの間でも見解が分かれている。私は1回だけは嘘だろう!派(単にそっちの方が萌える派)で、だって男も女も興味なくて清居にしか反応しないなら、清居でするしかないし、したあとの罪悪感というか背徳感もセットで楽しんでると想像している。

(※3)ちなみに原作では「お前、やっぱホモなの?」と、まるでホモファビアの異性愛者を装うかのように、ドラマより強い言葉を使っている。清居は同性愛者だが、この時点では明かされておらず、平良も視聴者もどっちなのかは知らない。清居が平良に好意を抱いているようにも見えるし、異性愛者だけど興味本位で聞いているようにも見えるし(平良は後者の解釈をしているだろう)、清居はどっちにも転べる状況を作っている。

(※4)ゲイじゃないけど彼だけは特別!というのは非常にボーイズラブらしい設定。本作では、清居はゲイで(ドラマではハッキリ言及されていないが、少なくとも原作では)、平良はボーイズラブ的ファンタジー設定(男だろうが女だろうが清居であれば好き)でバランスをとっている。

この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,388件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?