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3月29日 マネジメント・サイエンスの陥穽(かんせい)

おはようございます。今日も #ドラッカー365  から始めましょう。

#ドラッカー #365の金言 #3月29日 #マネジメント・サイエンスの陥穽   #部分は全体があってはじめて意味を持つ

このNoteは、「ドラッカー365の金言」に記された1日1テーマに対して、自分の感想や想い、そして、私自身の実践について書いたNOTEです。本文そのものを全て引用することはありませんので、ドラッカー博士の論文をお読みになりたい方はぜひ本書をご購入されることをお勧めします。

https://amzn.to/3qUQZtj

“汝の時間を知れ“ ドラッカー

上記は本書の扉の次のページに記されていたメッセージです。これは「時間は無限ではないから集中せよ」という意味かも知れません。ドラッカーの65年以上にわたる著作集を読み続けるほどの時間がない方のために、本書がある、という意味かも知れませんね。

編者のマチャレロ教授は

“最後にACTION POINTとして取るべき行動を示唆した。ここでお願いしたいことは、読者ご自身が「すでに起こった未来」を探すことである。新たなトレンドを見出したならば、ドラッカー学校の伝統に従い、自ら行動していただきたい。“


と記して、本書を実践する書、として欲しいと述べています。

著作権等の関係から、日々のドラッカー論文(つまり、本書の本文)を全文引用することはしませんので、ご関心の方はぜひお手元にお持ちになることをお勧めします。


今日のテーマ:マネジメント・サイエンスの陥穽

今日のアクションポイント: #全体の成果を上げるためには手を抜いた方が良い活動はありますか ?それはなんでしょうか

今日のテーマ、マネジメントサイエンスの陥穽とはどんな意味でしょうか。まず、先生どうして「陥穽(カンセイ)」なんて、馴染みのない訳語を使われますかなぁ。

1 動物などを落ち込ませる、おとしあな。「陥穽にはまる」

2 人をおとしいれる策略。わな。「詐欺師の仕掛けた陥穽に陥る」

原文タイトル見てみましょう

Why Management Science Fails to Perform (なぜ経営科学(マネジメント・サイエンス)はうまくいかないのか)

罠にハマるハマらないという議論ではなく、今日は、経営科学はうまくいかない理由をドラッカー博士は述べています。

今日の提言は、経営科学は部分の最適化に焦点が絞られているけれど、実は、企業全体の最適化を図ることがパフォーマンス改善につながるのだ、というお話と解釈しました。

全体最適化をはかるための品質管理という考え方

さて、本来、個々人のパフォーマンス改善の集積が組織全体のパフォーマンス改善につながる、という思考で成り立っているのが西欧的、アメリカ的思考というか、個人主義を中心にチーム構成する考え方です。

各自は、己のパフォーマンス改善のために技術を磨き、能力を高める訓練に励み、より能力の高い人財になろう、より良いパフォーマンスを生み出せる人財となろうと自己研鑽を積み重ねていきます。

どんな結果にせよ、結果はコントロールできるものではないからこそ、結果に至るまでのプロセス改善をおこなうことに個々人は努力する、という考え方です。

そして、能力が高まった個々人が集まった結果、パフォーマンスが改善し、それがチームに好影響を与え、その結果高い報酬に還元され、また個人は能力を高めるために研鑽を積み重ねる、という循環です。

個々の最適化の集積が全体のパフォーマンス改善を実現する、と言う考え方です。今回ドラッカー博士は、「全体のパフォーマンス改善のためには、弱い部門も作っておいた方がいい、という場合もある」と述べています。

これに対して、「それだけではグレートたりえない」「ワールドチャンピオンにはなりえない」という考え方がNFLやMLBなどの一流のスポーツチームに浸透しているようです。

チーム・ケミストリー(組織全体の化学変化)やチーム・アトモスフィア(組織の雰囲気・空気・風土)もパフォーマンスに影響するので、その部分を改善するコーチングを取り入れるチームが増えています。

個々人の能力だけメンバーを選定してチーム作りを行うのではなく、相性や人間力も選定基準に入れることで、チーム内にユーモアあふれる人物が存在し、その人物によって、チームにリラックスできる「ゆとり」が生まれたり、結束力が高まったりするため、結果、1+1が3にも5にもなる、という「チーム・ケミストリー」現象も重要とする考え方です。

あるチームでは、そういう役割をベテランが担うこともあります。チームによっては、いわゆる、「クオリティ・コントロール・コーチ(品質管理コーチ)」や「クオリティ・アシュアランス・コーチ(品質保証コーチ)」を雇っているところもあります。

例えば、マイク・ナポリさんはMLBシカゴ・カブスのクオリティ・アシュアランス(品質保証)・コーチです。

ナポリ氏は、1981年生まれ。LAエンジェルス、テキサス・レンジャーズ、ボストン・レッドソックス、クリーブランド・インディアンズと所属チームで捕手、一塁手、DHで活躍。レンジャーズ、レッドソックス、インディアンズでワールドシリーズ出場。レッドソックスでは上原投手、田沢投手と同僚でWS優勝経験をもつ元選手です。

所属したどのチームでもチームメンバーとの人間関係が良好で、特に、2016年インディアンズ時代は、諦めかける若手グループを鼓舞し、ワールドシリーズ最終戦までもつれこませた人望の厚い人物です。

カブスのデビット・ロス監督とは、2013年から2年間ボストン・レッドソックス在籍時の同僚で、打力のみならず、話しやすく、人間関係構築・コミュニケーションが巧みな好人物としてチームの誰からも愛される人物として知られていました。

この記事によると、QAコーチとはどんな役割かというと・・・

実際には、コミュニケーション/コーディネーション・コーチの方が近いですね。彼の役割は、基本的な基準とチームの哲学を開発し、教え、維持することです。現在のところ、シフトやバックアップなど、ディフェンス全般のファンダメンタルに傾いているようですが、それはチームによります。
(クオリティコーチと)従来のコーチングとの違いは、学際的であること(ランニングコーチ、ヒッティングコーチ、フィールディングコーチ、ピッチングコーチに限らない)と、QCコーチが双方向であることです;彼は情報を選手に紹介するだけでなく、選手の反応や改善のための提案をします。また、ベンチコーチではなく、チームボックスで試合を観戦することが多いので、チーム全体のプレーを把握することができます。

コミュニケーション/コーディネーションを中心に、打撃、守備、投手、といった機能に特化したコーチではなく、機能や部門を超えた役割。各部門コーチと選手との双方向コミュニケーションやビデオ分析の役割も担っているという。

ドジャースがこのコンセプトを導入したのは2016年のフアン・カストロの採用だったと思いますが、それ以降、モノとして盛り上がってきています。デイブ・ロバーツ監督は、スタッフを準備しているうちにこのポジションが浮かんできたと言っていましたが、品質管理コーチは、専門分野(オフェンス、ディフェンス、スペシャルチーム)に分かれていますが、NFLではしばらく前から存在していました。
しかし、各球団のコーチングスタッフに合わせて、その役割を決めているようです。ジョー・マドン監督の下では、QCコーチはビデオレビュークルーを率いて、プレーに挑戦する価値があるかどうかを判断する役割も担っていました。ナポリがその役割を担う可能性もあります。

2019年ナショナルリーグ中部地区3位に沈み、プレーオフに進めなかったカブスは名将ジョー・マッドン監督との契約を満了(マッドン氏は2020年から大谷選手が所属するLAエンジェルスの監督に就任しています)。

2020年、ロス新監督の元、ナポリ氏はQAコーチに着任。カブスはダルビッシュ投手の活躍などもあり、ナショナルリーグ中部地区優勝(ワイルドカードシリーズでマイアミマーリンズに敗退)するなど前年の成績を上回りました。

ナポリ氏QAコーチが果たした役割の成果が出た、と判断するのは早計ですが、結果だけで見ればコロナ禍で困難な2020シーズンでありながら、チームに良い影響を与えたようです。2020年シーズン前のインタビューですが、ナポリ氏は、

「全ての人たちと質の高い人間関係を構築したい」

と意欲的に取り組んでいたからです。

ドラッカー博士は、「全体パフォーマンスの改善こそ重要」と語り、「ある部分は逆に弱体化させた方が全体パフォーマンスが改善することも場合によっては致し方ない」という立場で語ってくれました。

今日の米企業では、全体パフォーマンスの改善のために、クオリティ・コントロール・コーチやクオリティ・アシュアランス・コーチを配置して、組織のパフォーマンス改善とゴール到達に向けて努力する方向にあります。

そして、わが国の組織では、全体最適化のために個性を殺し、チームに埋没することが全体のパフォーマンス改善に有効、という理解がなされてきました。

能力に突出した個性的な人物は、マネージャーにとっては使い勝手が悪い(マネージャーよりも能力が高いことが多い)ようで、「出る杭は打たれる」ということわざが象徴するように、個性を伸ばす、ではなく、個性を削りとり、全体の「和」の中に押し込め弾圧することを「調和」と言ってみたりして、どちらかといえば、邪険にしたり、敬遠するやり方を取ってきました。

それが、組織全体パフォーマンスの改善につながってきたか、というと、「失われた平成30年間」と言われるように、必ずしも、パフォーマンス改善にはつながってきませんでした。

個人的には、全体最適化、全体のパフォーマンス改善のためには、個々人の能力研鑽も必要と思います。そして、これからの組織には、ベテラン社員などをQCコーチ、QAコーチ的な存在として、企業の中に置いてみるというアプローチも試してみる価値があるのではないか、と思います。

組織全体のパフォーマンスを改善するためには、場合によっては、システムを強化しないで、ある部分を弱めること、つまり精度や効率を下げた方が良い場合があるのかもしれません。

どのようなシステムにおいても、重要なのは全体のパフォーマンスであり、それは単なる技術的な効率性ではなく、成長や動的なバランス、調整、統合の結果でしょう。

今日もやっていきましょう。



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