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10月12日 Getting Others to Buy The Decision 組織としての意思決定

おはようございます。今日も #ドラッカー #365の金言  からやっていきましょう。

こちらの続きです

本日 #10月12日  テーマは、 #Getting_Others_to_Buy_The_Decision  

#組織としての意思決定  です。

#意思決定を行なってからその中身を売り込むのでは満足な実行は期待できない

 組織としての意思決定でなければ決定とはいえない。意図があるにすぎない。そもそものはじめから、組織の意思決定としてスタートしていなければならない。この点は日本的経営に見習うべきである。日本では最初から全員を巻き込む。
 日本企業の多くでは、意思決定の結果にかかわりをもつ者は、自らの部局への影響を明らかにすることを求められる。賛否を問われることはないかもしれない。しかし、トップマネジメントは各部局の考えを知ることができる。そのうえで意思決定を行なう。そこには参加型経営の要素はない。しかし影響を受ける者は、意思決定の意味を知り、自らの立場を知り、備えることができる。
 意思決定を売り込む必要はない。それは、すでに売られている。(『マネジメント-課題・責任・実践』、eラーニング教材『意思決定の要因』)

ACTION POINT 
#意思決定にあたっては実行にかかわりのある人すべてを巻き込んでください
#そのうえで実行にあたる人を決めてください

面白いことに、効果的な決定をトップ・エグゼクティブに勧めてきたドラッカーは、戦後「決断が遅い」「時間ばかりかかって身にならない」と欧米から批判が強かった日本企業の意思決定方法に理解を示すどころか、非常に有益である、と肯定的に理解していました。

それは業務提携や取引先を増やすといったアイデア(企画案)を役員だけに売り込むのではなく、関係部署の幹部や現場など関わる人全ての耳に入るようにして、「合意」によって意思決定を下すやり方です。

 1974年に発刊された『マネジメント-課題・責任・実践』において、非常に肯定的に日本企業の意思決定について記しています。

 東レは、日本最大の人造繊維の製造業者であるが、1950年代の半ばごろになっても、人絹しか作っていなかった。その後、合繊に切り替えることに決定したが、切り替える際に、欧米の会社ならどこでもやっているような人絹生産の「段階的縮小」と言う方策を取らなかった。東レは、日本の雇用制度の下では、一人たりともレイオフできなかったにも関わらず、人絹工場の全て一夜にして閉鎖してしまったのである。この問題について私が役人と議論していた1966年当時の通産省は、日本企業の「多国籍化」と、製造業の海外進出に対して、断固として反対していた。ところが、その3年後には、同じ通産省の役人が、同じ保守政権下において、完全に回れ右をして日本の製造業の海外投資を推進していた。(『マネジメント-課題・責任・実践』1974年版 下巻 146ページ)

 欧米人と日本人とでは、同じ「意思決定」といっても、その意味が違う。欧米では意思決定というとき、問題に対する回答だけに力点が置かれているのに対して、日本人にとっては、意思決定の際の重要な要素は、「問題を規定すること」なのであり、そもそも決定を下す必要があるかどうか、その決定は何に関するものか、これを決めることが重要かつ重大な段階であり、この段階において、「合意」を得るための努力を惜しまない。この段階こそ、日本人には意思決定の過程の核心となる。

 ここに記された「日本」とは、もちろん1950−70年代の日本であり、2021年の現在の日本とは違うかもしれない。しかし、戦前から続く伝統的なわが国の意思決定方法は、今とは違い、「寄り合い」で決められていた。「忘れられた日本人」(宮本常一 著)に記されている通り、村の長老らが寺のお堂などに集まって開く「寄り合い」によって、村の問題を、場合によっては何日も掛けて、さまざま話し合っていく間に、解決の道筋を発見していく昔の日本の意思決定プロセスを見ることができる。


 日本では、決定を下す前の過程においては、「解答」がどのようなものになるかについては一言も言われない。これは関係者の立場を、あらかじめはっきりさせてしまうことを避けるためである。立場をはっきりさせてしまえば、決定が下された時、勝者と敗者ができてしまうからである。このようにして、意思決定の全過程は、問題に対する解答がどのようなものであるかについてではなく、問題そのものの内容を明らかにすることを中心に考えられている。その結果得られるものが合意であり、それまでの行動を変える必要があるか否かについての合意である。もちろん、こうしたやり方は時間がかかる。日本人と取引する欧米人は、この長い過程に全く参ってしまう。一体何が行われているのか理解できない。引き延ばしされているのではなるまいかという感じさえもつ。(『マネジメント-課題・責任・実践』1974年版 下巻 147ページ)

取引が始まると、関係するであろう社内の利害関係者、担当者たちに部署ごとに何度も説明をさせられる欧米のセールスマンがイライラするのであるが、

 日本人は、契約が結ばれた暁にそれを実行しなければならない人たちを、契約を結ぶ必要があると同意させる過程に巻き込んでいき、関係者全員が契約の必要を認めた時、はじめて契約の締結が進められる。この時はじめて「交渉」が本当に開始される。こうなれば、その後の日本人の行動は極めて迅速なのが通例である。(『マネジメント-課題・責任・実践』1974年版 下巻 148ページ)

  この意思決定方法は、非常に時間がかかるものの、効果的な決定が行われるようになる、とドラッカー。欧米のやり方では、決定した後で、決定内容を社内に「売り込む」必要があり、社内での関係者の協力と実行に時間がかかる。しかし、日本では決定後の「売り込み」には時間がかからず、交渉の後で、非常なスピードで行動が始まり、呆気に取られるということもあるそうだ。

というわけで、問題の理解に焦点を合わせる、わが国伝統的な意思決定方法にも利がある。何でもかんでもスピード決済すればいい、ということではない、ということで、今日もやっていきましょう。

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