見出し画像

89日目(写真で振り返る2014年5月25日【当日】)

前日はライブの余韻を噛み締めながら晩酌して寝たのは朝方四時くらいと思っていたが、当日のツイットを見返してみると寝る前のツイットが朝方5時。

スクリーンショット 2021-05-25 18.00.05

日曜は特に予定もなく、今みたいに朝から酒を飲む習慣も無かったので(車移動じゃないと自販機へも行けないくらいの山間部)惰眠を貪るのみ。
のはずだった。

本腰入れて寝ていた頃、玄関がガラッと開いて(田舎なので戸締りの概念が無い)隣家に住むオッサンが

「火事や!!!!!!」

と叫んで飛び起きた。
飛び起きたものの、玄関を開けっ放しにして隣家のオッサンはどこかへ行ってしまった。
寝ぼけた状態で「火事?どこが?」と思いながらフラフラと外に出る。周りを見回しても火事のような場所は見当たらない。一緒に寝ていた犬もフラフラと外に出てきて、犬を抱き抱え一旦家の中へ入って犬をケージに入れてまた外に出る。

隣家と僕の実家の距離感はほぼ無く、段差はあれど家と家の距離は二メートルも無いくらい。
火事だと叫んだ隣家のオッサンは見当たらず、山でも燃えているのかと思ったがふと隣家と僕の実家の隙間を覗き込む。隣家から火が吹き出し、あと少しでその火は僕の実家に迫ろうとしていた。
火事は隣家からだったとその時初めて知った。
隣家から噴き出る火を見てまず何をしようとしたか。
「バ、バケツ!バケツ!」と独り言を言いながらあたふたとバケツを探し始め、そこにバケツは無い裏庭へ行こうとしたところでハッとする。
「いや、バケツじゃ無理や!」

その頃になると実家から30秒の位置にある兄貴の家から義姉も出てきて近所のオバチャン含めてパニック状態になっていた。
そんな中で義姉は「犬は私が連れて行くけん、大ちゃんは車をうちん家に移動して!」と冷静な指示を出してきた。
急いで家の中に入り、犬にリードをつけ、義姉に犬を託し、財布と携帯と車の鍵を掴んで玄関前の車に乗り込んで、兄貴の家の駐車場へ行こうとすると道の真ん中をあたふたと犬を連れて義姉が通行の邪魔をしてくる(さっきの冷静な指示から一転)、クラクションを鳴らしてどいてもらい兄貴の家の駐車場に駐車。
今思えばすぐ家に戻って土足のまま家に上がってPCとかくらいはサルベージできたんじゃないかと考えるけど、家に戻って隣家との間の火が実家に燃え移ってるのを見た瞬間そんな考えも思いつかなかった。
それでもちゃんと写メを撮っているんですからね。

画像2

左に見える事故物件みたいなのが僕の実家、右手前が火事を知らせに来たオッサン夫婦が住む家で、右手奥が出火元となった母屋でオッサンの義弟が一人で住んでいた。

画像3

「火事や!」の声で目覚めてから1時間経たないうちに完全に実家へ火が燃え移った。

画像4

画像5

燃え移ってから本当にあっという間。
この後半年ほど世話になる親戚もすぐ駆けつけて「大介が集めよった人形がようけあるけん、よう燃えよるわ」と普通の家庭ならこういう会話すら交わされないであろうが、兄貴家族と親戚と燃え落ちる実家を見ながらこんなこと言ってヘラヘラしておりました。
まあ、笑うしかないってのはある。

スクリーンショット 2021-05-25 18.45.32

もうあとは見届けるしかないと達観した瞬間ツイットするツイ廃、否、ツイHIGH。
これを見たダイちゃんとかから電話かかってきたりする。

画像7

画像8

画像9

消防車来てから割と早く消火はした。この頃は隣家の母屋に住むオッサンが見当たらないという話が出てて、タンカに運ばれて出てきたら消化活動中に怪我をした消防隊員だったが、そのすぐ後に出火元となった隣家の母屋に住むオッサンの遺体がタンカで運び出された。

画像10

画像11

画像12

画像13

画像14

画像15

画像16

画像17

燻ってはいるものの火は収まったので焼け跡を探索。
真っ先にマーク・ライデンの「ANIMA MUNDI」の無惨な姿を見てなんとも言えないフィーリンに。発売当初に通常の値段で買ったけど、これ今となってはめちゃ高いんやで!

一事が万事、今までコツコツ集めてきた色んなコレクションは一気に焼失してしまった。

画像18

こうなったら、とことん今の現状を笑い飛ばすことでしか消化できない!メンタル持たない!と、普段は口も聞かない兄貴に頼んで実家の焼け跡前で写真を撮ってもらった。
最初こそ、そんな罰当たりなことするなと撮ろうとしなかった兄貴だけど、撮り終えると「俺もちょっと撮りたいの…」と撮りたそうにしてたけど無視!
この構図、兄貴にしてはなかなか良いのが撮れたなとも思っていて、色調変えれば独りBLACK METALのジャケとしてもいけそうでしょ?ねえ?

画像19

夕方頃にボーッとしてると
「大介!見てみい!ニュースにお前が映っとるで!」
と親戚がテレビを指さす。実家と隣家の火災の様子が地元ニュースで伝えられていて、焼け跡を派手な色の尻職人Tシャツを着た僕がウロウロしている様子が遠目から映されていた。
これはテレビ画面を撮ってツイットだ!と、すぐさま写メを撮ろうとしたと同時に画面が切り替わり、非常に気まずい場面だけが撮れてしまった。

画像20

当時どうしようか迷った挙句この画像をツイットしたんだけど、事情を知らない人から「人が亡くなってるのにこんな画像出すなんて…」みたいなリアクションを数人からもらって、結局そのツイットは消したんだけど、まだこの時は僕自身も焼身自殺による類焼だなんてわからなかったし、そんな事情を知らない人にとってみれば不謹慎なことではあるのだなと。

画像21

画像22

この日は兄貴の家に1日だけ泊まって、翌日以降はすぐさま駆けつけてくれた親戚の手袋工場の一室で半年ほどお世話になる。

画像23

画像24

画像25

残ったものといえば車と車に積んでいた物、財布、携帯、尻職人のTシャツ、ユニクロのジャージ、クロックスの偽物くらいだったけど、火災当日から井川君がTOONICEに募金箱を設置してくれたり、翌日にはナビを頼りに荒木さん(唯一の火災現場目撃者)が兄貴の家まで衣類や靴やかまど商品を持ってきてくれたり、ダイちゃんやシホちゃんが食事誘ってくれて支援物資をも渡してくれたり、それ以降関わりのあった人やSNS上でしか知り合っていない人まで全国津々浦々から様々な形の支援物資が届く異常とも言える事態になって行くのでした。
その一つ一つにちゃんとしたお礼をできていないのは重々承知していますが、その一つ一つに「生きろ!」とのメッセージが乗せられていると勝手に思っています。
2014年以降、毎年5月25日が近づくとソワソワゾワゾワしだして、その日を通過するとホッとするようになりました。
何故ならその日で、ある部分が死んだ日であり、ある部分が生まれた日でもあるから。
お世話になった方々、その節は本当にありがとうございました。

この記事が参加している募集

#みんなの防災ガイド

2,825件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?