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そっけない君の隣しか


明日は僕の誕生日。
朝起きたらきっと君が祝ってくれるんだろう。
なんて淡い期待を持ってみる。

スヤスヤと寝息を立てる君の隣で
僕は眠りについた。

午前6時。
目覚ましの音とともに起床し、
隣でまだ眠る天使の顔を拝む。

『飛鳥、起きて。』

少し体を揺さぶると
天使はゴソゴソと体を動かしはじめた。

『おはよう。』

そう言うと君はまだ寝ぼけているのか
「よっ」という口で軽く手を挙げた。

ほんと一つ一つの仕草が可愛いんだよなぁ。

完全には目を覚ましてない飛鳥を置いて
僕は1人先に寝室を出た。

キッチンへ向かい、珈琲メーカーに電源を入れる。
そしてカーテンを開け、朝食の準備に取り掛かるまでが僕のルーティーン。

朝の心地いい風が部屋に流れ込み、
1日の始まりを告げる。

『祝ってくれるかなぁ。』

無意識の内にこぼれた呟きに
少し恥ずかしくなる。

『いい歳して何言ってんだろ。』

自分でツッコミを入れて
また朝食に取り掛かった。

出来上がりも近づいた頃
寝室から二度寝をしたであろう飛鳥が顔を出した。

眠気眼を擦りながら
呆然と立ち尽くしてる姿でさえ愛おしい。

「おはよ、りっくん」

力なく放たれた言葉に笑顔で返事をする。

『もう出来上がるよ。』

まだ完全に起動してない君の隣に座り
二人一緒に手を合わせる。

『「いただきます。」』

「ねぇ、食べさせて。」

これもいつものルーティーン。

朝だけは甘えてくるこの天使。
可愛すぎかよ。

『そろそろ自分で食べれるようにならなきゃね』

なんてちょっと意地悪を言ってみる。

少し拗ねた顔の君に
そっとご飯を近づける。

小動物のように食いた君は本当に可愛い。

「美味しい。」

一言で僕をコントロールするなんて
なんて可愛いやつだ。

「今日は早く帰れるかな。」

モデルの仕事をしてる天使は
いつも遅くまで撮影に追われている。

それでも
今日は早く帰ってくるなんて言われたら
期待しちゃうじゃないか。

『ご飯なに食べたい?』
「お粥。」
『言うと思った。』

他愛もない会話がすごく幸せに感じる。

でもさ
やっぱり君に祝って貰いたいから
少し攻めてみよう。

『今日ってなんの日だっけ。』
「知らない。」
『え。』

いやいやいや、そんな訳ないでしょ。
あなた僕の彼女ですよ??
嘘でしょ!!

おっと
ここは冷静に行こう。

これはあれだな
早くに帰ってきて準備してくれるやつだな。

なんて自分に言い聞かせる。

食卓を片せば、互いに準備を済ましていく。

『先に出るから鍵よろしくね?』

結局朝は祝ってくれなかったなぁ
なんて思いながら会社へ向かう。

ありがたい事に
慕ってくれてる後輩や、
信頼出来る先輩に誕生日を祝ってもらえたからこそ
君に祝ってもらえなかったことが悔しいな。

時計の針は午後9時を指す。
まずったなぁ。
誕生日にミスして残業かよ。

なんとか仕事は片付いたが
君からの連絡は一切無し。

『やっぱ覚えてねぇんだろなぁ。』

ってまた女々しい僕が顔を出す。

家に着いたのは10時前。

静かに扉を開けても
君の声は聞こえてこなかった。

寝ちゃったかな。

なんて思ってたら
ダイニングテーブルに突っ伏して寝てる
飛鳥を見つけた。

可愛い。

『こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ。』
「あ、りっくんおかえり。」
『遅くなっちゃった。』
「お疲れ様。ふぁぁ。ベッド行こーっと。」

結局、
寝ぼけたまま寝室に向かっちゃった。
よちよち歩く姿が可愛い。

置いてあったコンビニ弁当を温めながら思う。

飛鳥にも料理教えないとなぁ。

でも料理してる姿の飛鳥を想像して思う。

絶対可愛い。

時刻は23:30

寝る準備を済ませ寝室に向かう。

ダブルのベッドの片隅に身を潜らせると
飛鳥はくるっと背を向けてしまう。

『今日はなんの仕事だったの?』
「撮影だったよ。」
『楽しかった?』
「普通。」

「お粥食べたかったんだけど。」
『遅くなってごめんね。』
「帰ってきたから許す。」

「今日ってなんの日?」

『え?』

「朝言ってたじゃん。」

『ああ、なんだっけな。』

「知ってるよ。」

「誕生日おめでとう。」

少し震えた肩が愛おしい。

気づいたら君を抱きしめていた。

「なに?急に」

『いいじゃん。たまには。』

「暑いんだけど。」

そういう君の体温と

赤く染まった顔色の濃さが

高まっていくのを感じてた。

やっぱり
君じゃなきゃダメみたいだわ。

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