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へんけん!!ご!ぜん


これは超有名スーパー名門学園「坂道学園」にある
通称『変なもの研究部』略して『変研』で巻き起こる
ドタバタラブコメディ?の一遍である。


俺が『変研』に入れられてから暫く経った。
毎日のように"アノ"猛獣二人の世話をする事にも
大分慣れてきてしまったみたいだ。

〇:嫌よ嫌よも好きのうち、かぁ。
松:なぁにが好きなん?〇〇ちゃんっ。

突然肩に手を置かれ、
背筋を驚くくらいビクンと跳ねさせた。
それといつからだろう。
松村さんが俺の事を"〇〇ちゃん"と呼びだした。

〇:なんでもないです。
  それより珍しいですね、
  いつも俺が部室行く頃にはみんな揃ってるのに。
松:レディーには色々あるんよぉ〜

一瞬だけ渋そうな顔をするも、
スグにいつも通りの笑顔を見せた松村さん。
スキップして俺を抜かしていく背中が
なんだか寂しそうに思えたのが気の所為であってくれ。

〇:お疲れ様でーす。

雑な挨拶を発しながら部室に入ると、
既に白石さんと松村さんが
お茶をしながら談笑していた。

白:〇〇君やっほー!
松:遅かったなぁ〜
〇:松村さんもそんなに変わらないでしょ。
松:まちゅはとっくにお茶してるもーん。

下唇を突き出しながら意地ける彼女を見ていたら
先程の心配は杞憂であったと、肩の力がすっと抜けた。

白:なになに〜、〇〇君まちゅのこと見すぎじゃない?
松:そんなに見られたら…まちゅ、ドキドキしてまう…
〇:はいはい、俺で良かったら
  いくらでもドキドキさせてあげますよー。

ニヤニヤしながら悪ノリを始める白石さんも
ここ数ヶ月で慣れてしまった。
「あーあー、〇〇君がスレてきちゃった〜。」
なんて言われることもしばしばだ。

〇:てか、七瀬は?
西:ずっと後ろに居るねんけど。

背中にピッタリとくっつく様に立っている七瀬。
それよりなんだかご機嫌…斜め?

西:なんだか今日は体調悪いんで先帰りますね。
〇:あ、ちょっと…っ痛ぇっ。

ぶん、と小さく振り回したカバンが
見事に脇腹を捉えた。
出ていく寸前に睨まれたのは、
今度はきっと気の所為じゃない。

白:お大事に〜
〇:軽いですね。
白:そういう日もあるのよ。

「女の子って面倒ですね。」と
思わず口からこぼれそうになった。
しかしギリギリ間に合った喉の蓋が
既のところで言葉を閉じ込めた。

松:わーわー、なんか今日は気分乗らんわ〜
白:そうねー。
  明日はお休みだし今日は早めに終わりますかぁ。
〇:早めにって、来たばっかりなんですけど。
松:まぁまぁ、帰ってゆっくり出来るならええやん〜。

白:あ、気の利く優しい男の子が居たら
  なぁちゃんにお見舞い行ったりするんだろなぁ。

わざとらしく横目でチラチラ見ながら言ってくる。

〇:言われなくても行きますよ。
白:おぉ〜かっこいい〜
松:惚れるわぁ〜

柄にもなくムキになってしまった事に
ちょっとばかり後悔しつつ、
ゆらゆらと手を振る二人に
背中を向け部室を出ていこうとした。

松:あ、ちょっと待ちーや!

袖口を摘んで無理矢理に動きを止められる。
「明日までやから使ったってや!」と
乱暴に封筒を渡されると、
されるがままに身体を翻され背中を押された。

〇:あの、これ。
松:ええからええから!はよ行ったり!

急かすように部室から追い出され、
一呼吸置いて俺は歩き始めた。
その一瞬に再び脳裏にあの顔が浮かぶ。



「なんでそんな寂しそうなんすか。」



無意識に漏れた言霊が、
弾かれることなく床へとくっ付いた。

全寮制とはいえ、
基本的にユルユルなこの学園は
男子寮と女子寮が
長方形の中庭に挟まれて建てられている。
ど真ん中に聳え立つ桜の木の下で告白すれば…
なんて噂も絶たないが科学的根拠はきっと無い。

夜間以外の出入りが自由なのも、
きっと校長がアレでアレだからだろう。

とはいえ、造りは同じでも
醸し出される雰囲気が全く違えば
別世界に来た感覚になる。
ドギマギしながらも七瀬の部屋へと向かい
扉をノックすれば、
怪訝そうな顔で部屋着姿の七瀬が顔を出した。

西:なに。
〇:いや、まぁ、大丈夫かなって。
西:部活は?
〇:白石さんが今日は終わりって。
西:そ。

素っ気なく扉を閉めようとするので、
急いで閉まる扉に足を挟んだ。

西:なんなん、ほんま。
〇:そのさ、明日とか…暇?
西:デートでも誘ってくれん。
〇:そのつもりだけど。
西:…、!

言葉に詰まりながらも顔を赤くする七瀬。
「揶揄ってんやったらええから。」と
強がるように言う唇が震えている。

〇:その、遊園地のチケットをさ、まっ…

咄嗟に口を閉じた。
松村さんに貰った、なんてバカ正直に伝えれば
それこそ七瀬の機嫌を損ねかねないからだ。

西:どないしたん?
〇:あぁ、適当に応募した懸賞当たってさ
  誘えるような相手七瀬しかいないから…

懸賞なんか出したことないけど、
今はそれしか思いつかなかった。

西:あ、ありがとう。楽しみやわ…

顔の赤さが増すのに比例して
声がドンドン小さくなっていく。
それでも輝かせた目で見つめられ、
心臓が二重跳びしてもおかしく無さそうだ。

〇:じゃ、明日10時に桜下で。
西:うん!

あまりにも可愛い目で見られ、
恥ずかしくなって目を逸らしながら言ってしまう。
足早に自室に戻り、
明日の服をあれこれ考えていたのは
誰にも見られたくない。


翌日。
すっかりピンク色を失った桜の木の下で七瀬を待つ。
予定より10分前。
少し寝不足で欠伸をひとつした時だった。

「デートやのに欠伸とかサイテーやな。」

ニコニコし、指さしながら
近付いてくる七瀬に思わず見とれてしまった。

西:じゃ、行こー!
〇:お、おー!

どちらともなく。ただ自然に。
俺の左手と七瀬の右手が重なっていた。

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