誰しも熟眠時に神様の元へ還っている?
まずはじめに
今回からバーダラーナヤナ著『ブラフマ・スートラ』をシャンカラ師が解説しているものをご紹介していきます。とはいえ、英訳本を私が持っているわけではないので、講義を文字起こししたブラフマ・スートラの各節に符合するものをシャンカラ師がウパニシャッドの節を引用しているもののご紹介になります。
約1600年前に『ブラフマ・スートラ』を著した人物がバーダラーナヤナとされてますけれども、実在していたかは定かではありませんし、この時代は、『ヨーガ・スートラ』が編纂された時期となり、仏教徒とヴェーダンタ学派の論争が激しかった頃のようです。
以前にも触れましたように、『ブラフマ・スートラ』は、『ウパニシャッド』と『バガヴァッド・ギーター』と共にヨーガ行者やヴェーダンタ学徒にとって必読の三種の学として重視されています。
四つの意識の状態
■第一の意識状態【ジャグラト(覚醒)】
覚醒という名を冠していますが、ここで言うところの覚醒状態とは、私たちが日常で生活している意識の状態となります。つまり、眠っていない意識の状態です。
ヨーガ的に話しますと、肉体と結びついている意識の状態であり、外の世界側に知覚している事物が実在するとして、楽しい苦しいなどと二極の対立感情によって翻弄されている意識状態となります。
■第二の意識状態【スワプナ(夢眠)】
夢眠とは、読んで時の如く、寝ていて夢を見ている意識の状態となります。
起きている覚醒状態時に、印象に刻まれたことごとを夢の中で再度印象づけるような夢やほんの少しでもその印象を解消するような夢を見ている意識状態となります。
ここで注目していただきたいことは、目を瞑っている状態でありながら、何ごとかを観ることができる、すなわち、観察することができて知覚する能力が私たち誰にも備わっていることです。外側の世界だけではなく、内側の世界をも知覚する心の内的器官があることとなります。
■第三の意識状態【スシュプティ(熟眠)】
第三の意識状態までは、知性や能力そして修養の程度に関わりなく、誰にでも等しく公平に訪れ、特に、熟眠中に関して、すさまじく賢い人もあきらかな愚かな人も、素晴らしい善人も非道な悪人も、同じ状態になっていると下記の15節に述べられています。
講義において、このお話を伺った当時、寝るのがとても楽しみになっていました。しかし、また、起きた時には、その意識状態の記憶がまったくないことも起きるたびに実感したのでした。しかし、ここでこのことをご紹介したのは、毎日、誰もが神様の元に還っているということです。
13節に関して、シャンカラ師は、以下のウパニシャッドを引用しています。
私が最初にヨーガの早朝で提供された質疑応答にて先生に質問したのは、「アートマン(真我)はどこにありますか?」に対して、「ここで答えても良いがあなたは自分で見つけたいでしょう?」のネタバレをしてしまいましたが、先生のお答え通りに文章を読んだとしても、その体験がなければ絵に描いた餅と同じなのでお赦しください。
ヨーガの行者が何十年も瞑想をして到達するサマーディ(三昧)の境地のひとつである純粋意識に私たちの誰もが毎日毎日、床について眠り熟眠時にはもうすでに行っている。
しかし、まだ無智であるので、熟眠時にはよくわからないということになります。それは、虚偽によってその意識状態と隔てられている無智に陥っているからだと述べられているわけです。
■第四の意識状態【トゥリヤ(第四の意識)】
智慧に満たされた優秀なヨーガの行者方は、起きている覚醒状態でも熟眠状態と同じ純粋な意識の状態に到達しながら日々の生活において、淡々と営みをごく普通人として演じていることとなります。
起きている時のいろいろな起承転結の事象に、個別化した無智な個我(ジヴァートマン)は真我(アートマン)とは隔てられた形で、喜びや悲しみに対して思い煩って翻弄され、日々の熟眠で癒されて、再び起床してまた同じように翻弄され、癒されるという意識状態で繰り返していることになっています。
しかし、これらの背後にあって黙って観察している第四の意識に、眼を閉じた瞑想において、また、日々の生活においても同じように集中していくことによって、外の事象に依存した意識状態ではなく、内から常に観察している純粋意識と共に観ることによって、その思い煩いから解放されていくのです。
最後に
前回の「共通のものは重なるし競争しない」でも述べましたように、個の世界だけを見ているのではなく、共通の世界を観ている意識状態が誰しもあるんだということを知って欲しいなと思って、今回はその想いで書いてみました。
粒子だとして見ると互いにぶつかり合いますが、波動つまり波だとして観れば重なり合いますし、平安な波の意識状態を重ねて共有することが可能だということも知っていただければ嬉しいです。
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