髪と歯の関係

髪と歯科の関係は深い。

15世紀頃、ヨーロッパでは床屋さんが歯科治療をしていたらしい。刃物とか毛を扱う(髪の毛ではなく、床屋さんの髭に塗る毛や歯科で使う筆のイメージ)点ではそれも不思議なことではない。

夫は歯科医。夫の母は美容師。髪結いとも呼ばれていたそうだし、自分では職業婦人だったと言っている。現在88歳なので、さすがに鋏を置いたが、ついこの間まで現役だった。高齢者施設にカットのボランティアなんかにも行っていた。自分より年下の方が多かったようだ。そんな母が育てた息子。刃物を扱うのはやはり小さな頃から得意だったらしい。

嫁いでから私はお店の大掃除を手伝ったりした。息子も小さな頃は、お客様のいないときにちょこちょこと片付けを手伝った。
いわば馴染みの空間。さすがに歯科医院から学ぶようなデザインはなかった。置いていた雑誌は週刊女性とかそんな感じだったし。
近所のおばあさんが、野菜を持っておしゃべりがてら髪を切り、終わると義母が違う野菜を持って帰ってもらう…そんな昔ながらのお店だった。

さて本題は美容室と歯科の共通点。

まず鏡。鏡はもちろんピカピカである必要がある。(歯科の場合はたいてい手鏡。これは手垢がつきやすい。油断するとすぐに曇ってしまう)もっとも、三宅さんのところでは鏡がピカピカかどうかなんてどうでもいいことだった。鏡を見るのではなくて、鏡越しの三宅さんの手と、まぁたまには自分の髪を確認の意味でみたいのだから。私は手鏡ではなく、ミラーを左手ときに右手で見るのでミラーテクニックは必須なのだけど。大きな鏡越しに見る右手っていうのは意外に難しい動きをしていた(ような気がする)。

そしてブラシ。ヘアブラシと歯ブラシ。言わずとしれたセルフケアの基本アイテム。きれいを保つためには、何をどう使うかが重要なのかな。歯ブラシにも歯ブラシ、ワンタフトブラシ、歯間ブラシ…まぁいろいろなものがある。そして、ヘアブラシ。ロール型とかウェット用とか大きさも含めていろんなものを持っている。キャラクターものもある。
何をどう使うのかは私次第…
(実は買って満足するタイプ。マメじゃない)

さらにシャンプーと歯磨剤の関係。
今は洗浄目的のもの。仕上げに使うものにトリートメントまであるので、シャンプーに例えて説明をしている。サロンのシャンプーを使わなければいけないことはないのだろうし、使ったら良いとあくまでも提案をして使っていただくという点もたぶん同じかな。
さらにハサミ。私の場合は、ハサミではなくスケーラーという歯石を取る器具がそれにあたるのだけど…マイスケーラーを自分で買う人もいるし、医院で用意してあげるところも、みんなで共有するところもある。スケーラーは繊細でいろんなグリップ、シャンクのものがある。それを各自シャープニングして大事に使っている。美容師さんのハサミは、その比じゃないぐらい高価だと聞く。言ってみれば、大切な商売道具。

三宅さんは、アッという間にカットを終えた。私は、ただひたすら(やや大きめの声で)話しをしていたのだけど。髪を切るって平面じゃない。まして、髪は線。
線を切って立体的に仕上げるってすごい技術だと思う。これは歯科でいうと総義歯かな?
ってなんとなく感じている。

私はスケーラー使用中あまり話しが出来ない。患者さんが口を開けているため、そんなに話す必要もないのだけど。集中して考えているために話す余裕がない。そういう点では話しながら握るお寿司やさんもすごい…。

さて、ダラダラと長々と共通点を探してきた。一番、気がかりな部分はセルフケアとプロケアについて。私は、歯の手入れについて人に伝える仕事をしているのだけど髪の手入れはすごく苦手。美容にいいということだけで継続できるほど美意識が高くない。だから、歯を磨けない人の気持ちがわかるというか。買うだけ買って、使いきれない人の気持ちだとか。髪を構えないほど疲れている人についても。

その点で三宅さんとは意気投合。
私があれこれ言わなくても、手入れが楽なカットにしてくださった。

シャンプーが楽々。ドライヤーも楽々。

あー。ずいぶん切ったんだって思ったのは、どのタイミングだろう。

髪の物質としての質量を感じることなくカットが終わったのは左手のせいなのかしら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?