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2021年ドラフト会議総括 ~中日編~

指名選手一覧

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2021年10月11日、プロ野球ドラフト会議が開催されました。今年も未来のスター候補生たちの将来が決まる一大イベントに筆者も非常にワクワクしてこの日を迎えました。予想に反して今年は各球団の色が出たドラフトとなり、異例となった今年のドラフトを今日から振り返ってみたいと思います。今日は中日ドラゴンズの指名を振り返ります。中日ドラゴンズの指名選手は全部で6名。6名とも支配下選手の指名であり、今年は育成選手ドラフトには12球団唯一の不参加でした。以下指名された選手の総評を行いたいと思います。

1位 アドゥ ブライト 健太 上武大学 外野手

中日ドラゴンズは事前の予想では右の長距離砲の獲得が至上命題とされており、チーム内外からその1点を指摘する声が大きくスカウト陣もその方向性を示していました。そしてドラフト当日、大方の予想通り上武大学のブライト健太選手を1位指名し単独で交渉権を獲得しました。ブライト選手は今春からレギュラーを掴んだものの春のリーグ戦で活躍して評価を上げると、大学選手権では4球団競合となった西日本工大の隅田知一郎投手からHRを放ってその知名度を一気に上げました。走攻守にハイレベルなブライト選手は現在の中日には同タイプがおらず、来季から新監督となる立浪和義氏の前でアピール出来たら開幕1軍が十分狙える選手だと思います。ドラフト戦略としてはブライト選手を1位で行くことに筆者は疑問を抱いていて、中日のウェーバー順を考えると2位でも確保出来るような気がすると予想していました。しかしドラフト当日蓋を開けてみると楽天が昌平高校の吉野創士選手、ロッテが市立和歌山高校の松川虎生選手を1位で獲得しに行ってるのを見るとスカウト側の評価として今年も野手の需要が高く、我々側が想定するより上位で指名している傾向が見られたため、仮に中日がブライト選手を2位で行くと仮定して1位で投手を確保していた場合他球団にブライト選手を取られてしまった可能性が無くはなかったと考えられます。後述でも触れますが、近年の有望な野手の需要特に今年は右の長距離砲選手が軒並み高順位で指名されていることもあり、その経緯を踏まえるとブライト選手の1位入札に関しては英断であり、ドラフト戦略における強烈な一手であったと考えられます。中日の外野陣は中堅手の大島洋平選手を除くとOPS.700を超える打者がおらず、ポジション別wRAAでは全ポジションにおいて圧倒的なマイナス指標を叩きだしており、広いバンテリンドームを本拠地にしているという点を考慮しても残念な指標が並んでいると思います。身体能力に加え持ち前の打力を全面に出していけばブライト選手がレギュラーを早期に獲得する環境は今の中日にはあると思われ、キャンプ・オープン戦からアピールを続けていければ来年の開幕スタメンの一覧にブライト選手の名前があるかもしれません。

2位 鵜飼 航丞 駒澤大学 外野手

そして注目の2位指名ですが、中日は駒澤大学の鵜飼航丞選手を指名しました。筆者もこの指名には非常に驚きました。確かに鵜飼選手は今ドラフト候補の中では飛ばす力に関してはNo.1の実力者ですが、大学時代の成績を考慮するとコンタクト率の低さなどに課題があり非常に評価の難しい選手でした。そのため鵜飼選手の市場評価は3~4位という予想が多かったため、ウェーバー順の比較的高い15番目で鵜飼選手が指名されることは予想していなかったです。しかし先程も述べましたが市場評価に反してスカウト側の野手評価が高く、この鵜飼選手に関しても中日が3位で指名するとなると全体の34番目となり他球団に指名されてしまう可能性が高くなっていました。実際に楽天は2位で愛知大学の安田悠馬選手、3位で三島南高校の前田銀治選手といずれも市場評価的にドラフト中位予想されていた選手を上位の枠を使って指名していますし、広島も3位で右の長距離砲であるトヨタ自動車の中村健人選手を指名しておりこれらの選手の指名を考えると3位で中日の番が来る頃には鵜飼選手は指名されているのはほぼ間違いありません。そのことを踏まえると中日にとってはこの2位の枠で鵜飼選手を指名したことは戦略としては巧者の立ち回りと言えますし、他球団を動きを予想しリカバーしてまで欲しかった選手なんだと思います。中京大中京高校出身の地元選手ということもありますが、担当スカウトやチーフスカウトが惚れ込むその長打力にどうしても賭けたいという気持ちと何年も自前の長距離砲が育っていない現環境に風穴を開けるという強い意志が生んだ2位鵜飼選手だと思います。そのスカウト陣の覚悟を私は買いたいと思います。ドラフト直後には市場評価より上での指名や大学生外野手を2連続で指名したその戦略に多くのファンが疑問視、非難する事例が見受けられましたが、この2選手を上位で獲得したことは5年後チーム戦略的に成功だったと言える会心の指名であったと信じたいです。この鵜飼選手にもブライト選手同様今の中日外野陣に殴り込める素質を持っていると思います。チーム本塁打数69のリーグ最少の打撃陣の中で外野手の本塁打が19本と他チームでは1人の選手が積み上げそうな本数しか記録されていない惨状を見るに本当に長打力のある打者が少なく、この課題を克服するには長打を打てる素質のある選手の獲得が至上命題となり鵜飼選手に白羽の矢を立てたのだと思っています。戦国東都と呼ばれる東都大学野球リーグ1部において今秋はOPS1.000を超える長打力を披露しており、鵜飼選手がこれからの中日を変える選手になると筆者は思っています。2位指名鵜飼選手で落ち込んでいる中日ファンの方がいたら是非これを見て元気になっていただきたいです。次に5年以内に生え抜き選手30HRを達成するのは鵜飼選手だと思います。

3位 石森 大誠 火の国サラマンダーズ 投手

そして3位には火の国サラマンダーズの石森大誠投手を指名しました。この投手は独立リーグ初のドラフト1位が期待された選手であり、最速155キロの速球を武器に独立リーグでは奪三振率15.65の驚異的な数字を記録している独立を代表する剛腕投手です。中日の若手左腕事情は非常に苦しく、現在は来季25歳の小笠原慎之介投手のみ1軍に定着しており、2年前に指名された橋本侑樹投手や昨年指名された近藤廉投手のファーム成績を見るに両投手共にプロの壁に苦しんでいる状況も考えると1枚欲しいポジションではあったので、この順位石森投手を取れたのは大きいと思います。ただ欲を言えばリリーフ適正の強い石森投手ではなく先発としてゲームメイクできる左腕投手の方が理想的だったのかなと思います。しかしウェーバー順の兼ね合いで新潟医療福祉大学の桐敷拓馬投手や北海高校の木村大成投手などが指名されており人材的に苦しかったのも事実です。石森投手がこの順位で獲得出来たのも凄く奇跡的だと考えているので、これに関しては石森投手で良かったと思います。先発左腕に関しては将来性のある上田洸太朗投手や福島章大投手の今後の成長と来季以降の補強ポイントとして先送りにして、来季は石森投手にブルペン陣を支えてもらう1人になってもらうことを期待しましょう。

4位 味谷 大誠 花咲徳栄高校 捕手

4位には花咲徳栄高校の味谷大誠選手を指名しました。正直この指名に関しても驚きを感じました。中日は12球団の中でも捕手層の厚い捕手王国であり、正捕手の木下拓哉選手を始め2番手捕手の桂依央利選手やキューバ助っ人のA.マルティネス選手など戦力的に十分な上に次世代として郡司裕也選手や石𣘺康太選手が控えている盤石なポジションだと思っていたからこそ、今ドラフトの補強ポイントではないと踏んでいました。それが4位という順位で高校生捕手の獲得に至った経緯を考察したいと思います。中日の捕手は全員支配下選手で7名、最年長は今季35歳の大野奨太選手で続いて木下拓選手と桂選手が30歳、山下斐紹選手が29歳、マルティネス選手が25歳、郡司選手が24歳、石𣘺選手が21歳となっており、山下選手のみ左打という構成となっています。ここに18歳左打の味谷選手が加わるということは以下のことが考えられます。まずは大野奨太選手の退団の可能性です。17年オフにFA権を行使して中日に入団した大野奨太選手ですが、移籍してからは出場機会が少なく昨年は0試合に終わり、今季も前半戦は2軍暮らしが続いてました。後半戦は主に福谷浩司投手とバッテリーを組んでいましたが、福谷投手が骨折により戦線離脱をすると出場機会を失い現在は2軍に居る状況です。またFAで加入した際に4年契約を結んだとされており、その契約が今季限りで切れるということもありドラフトで捕手を獲得したということで退団する可能性があります。そして次に考えられるのは山下選手を捕手としてカウントしない可能性です。山下選手は昨年オフに育成選手として契約すると、ファームで自慢の長打力を発揮して6月には支配下選手契約を勝ち取りました。現在の起用法では捕手としての起用は少なく、一塁手や指名打者としてファームで出場していることから来季からは捕手登録ではなく内野手登録として計算しているのではないかと考えられます。左打の高校生捕手が来季から加入するということは山下選手の扱いもそのように変更される可能性があることが想定されます。そして最後に想定されるのが郡司選手の外野手へのコンバートです。19年にドラフト4位で入団した郡司選手ですが、捕手としてのインサイドワークやキャッチングのレベルが1軍クラスの選手と劣る点や打撃力に関して大島洋平選手を除く外野手と比べると勝っている点からも今オフにも外野手のコンバートの構想が進むのではないかと考えられます。新監督に就任予定の立浪氏も解説者の立場として両翼の深刻な打撃力不足に関してコンバートを含めた柔軟な選手起用を唱えており、いざ監督就任となった際には有言実行する可能性が大いに考えられます。その証拠に今秋のフェニックスリーグでは郡司選手に左翼守備に挑戦させており、これに関しては来季への布石であると考えられます。その証拠にドラフトでは市場でNo.1とされていた慶應大学の正木智也選手を指名に行かずブライト選手鵜飼選手を指名したこともあり、仮に正木選手指名と郡司選手コンバートを決行した際に左翼のレギュラー争いを両者で行う可能性があり、同門同士で競わせるのは非常にナンセンスであり慶大側もいい顔をしないとされるため、正木選手を指名しなかったのではないかと考えられます。そのことが郡司選手のコンバート案を加速させたのではないかと考えられます。いずれにしても捕手は飽和気味になるので今後の起用法が非常に気になります。

5位 星野 真生 豊橋中央高校 内野手

5位では豊橋中央高校の星野真生選手を獲得しました。近年の中日の5位は地元の高校生枠となっているのが定番であり、16年東邦高校の藤嶋健人投手・17年中京大中京高校の伊藤康祐選手・18年山梨学院高校の垣越建伸投手(岐阜県出身)・19年菰野高校の岡林勇希選手・20年帝京大可児の加藤翼投手と見事にスカウト陣の思惑となっている枠になっています。過去にも大島選手や祖父江大輔投手など地元選手を5位で指名するのが伝統となっており、今回の星野選手はそういった経緯があっての指名と思われます。勿論戦力として計算をしており、小柄ながらパンチ力のある打撃とダイナミックな守備は将来性豊かで、筆者も今夏の愛知県大会4回戦で東邦VS豊橋中央の試合を岡崎市民球場で観戦した際に試合前のシートノックから星野選手の守備に魅了され、注目していたところプレイボール直後の初回に東邦の知崎投手から先頭打者本塁打を放って度肝を抜かれました。豊橋中央の選手の中でも一際目立っていたあの星野選手が中日に入団すると思うと非常にワクワクします。

6位 福元 悠真 大阪商業大学 外野手

そして中日最後の指名となった選手は大阪商業大学の福元悠真選手です。福元選手は智弁学園高校時代から4番を張っていた強打者で今春のリーグ戦ではMVPを獲得するなど大学でも着実に実績を積んで指名にこぎ着けました。180センチ90キロの体格から放たれる強い打球が持ち味の選手なのでその打撃をプロの世界でも存分に発揮して欲しいです。守備に関しては課題があると考えられ、現在は主に指名打者を務めているせいか守備機会が少ないのが懸念材料です。セ・リーグは指名打者が無いので守備に就く必要があることから今後守備に関しては徹底的に鍛える必要がありそうです。

総括

全体のバランスを見ると投手1名捕手1名内野手1名外野手3名の構成となっており、高校生は2名大学生が3名社会人(独立)が1名と右打の大学生外野手を3名獲得したということは一種のギャンブルに思えます。藤井淳志選手の引退や遠藤一星選手、井領雅貴選手、武田健吾選手が退団するのでその部分の補強はある程度読めましたが世代を分けて指名すると予想されたのでこの結果に関しては非常に驚きです。同世代をこれだけ指名したということはそれだけ競争意識を高めていくということでもあるので、来季以降のレギュラー争いを期待したいです。特に今季は二塁手と外野手で1年間苦しい思いをしたのでまずはここのテコ入れから始めて欲しいと思います。二塁手に関しては今回のドラフトで指名していないので現存する選手の底上げ、従来レギュラーだった阿部寿樹選手は来季はまたポジションを争う立場に戻ると思われ、ベテランの堂上直倫選手や中堅の三ツ俣大樹選手らとの争いに若手の根尾昂選手・石川昂弥選手・土田龍空選手などが加入してくる可能性はあります。そして外野手に関しては大島選手以外は横一線のスタートだと思います。立浪氏が今春キャンプで臨時コーチをしていた時からその能力を買っていた岡林選手が現在一歩リードしていると思われますが、いざ就任したら横一線になると思われ、そうなると今回ドラフトされた3選手や新外国人との争いが激化し選手層はより一層厚くなると思います。既存選手に加え新戦力や既存選手のコンバートを含めて来季新監督に就任する予定の立浪氏の手腕に期待です。点数は敢えて付けませんがスカウト陣が満点と言ったように満点ドラフトになることを期待しましょう。

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