いわゆる、怪しい話。

子供の時から周りには怪しい話が、普通にあった。
母方の祖母が世間でいうところの、拝み屋とか、霊能とかいった存在で、その変わった力を使って商いをする、などといったことはなかったが、彼女のことを知っている人から、色々と相談を受けていたようだ。自分の家では何かあると、例えば急激な痛みに襲われたとか、対人関係で問題が発生したとか、言った場合、当たり前のように先ず 祖母、秦野のおばあちゃまに連絡をいれていた。

10歳ぐらいまで住んでいた日本建築の家の、見事な庭を新築の一軒家にしてしまい、夏にはうるさいぐらいカエルがないていた池も埋め立ててしまってからは、西部劇が好きな父親の趣味で、田舎にしてはあか抜けた、アメリカ風に内装された明るい家には似合わない、色々なおかしなことがおきだした。
小学校低学年の妹や弟が、いきなり自分の部屋に入ってくることが、たびたびあった。理由はいつも同じで、窓からいきなり誰かがのぞいた、誰かの手が出てきたといったもの。子供たちの部屋は線路に面していて、しかも二階周りはレンガべいで、囲まれていたにもかかわらず。
自分は 怖い、というよりうらやましかった。
いいなあ、見えるって霊能力あるんだ。
おにいちゃま、全然よくないよ、見えたって。
そう言われても見てないからわからない。

その時母は末の妹を体内にやどしていた。ある日二階の夫婦の寝室で休んでいたらしい。階下では父とその後輩連中が談笑していた。
いきなり、ノックもなしに寝室のドアがあき、一瞬顔がのぞいて、すっと引いた。
失礼なことするわね、こっちは疲れて寝ているのに。母は、少し気に障ったので階下に言ってそのことをいうと、そこにいた全員がきょとんとしている。そのうちの一人が言った。奥さん、誰も上にいっとらんですよ。
そこで初めて、母は気が付いた。誰かが階段で上がってくれば足音がするはずだ。一体どういった子が生まれてくるのだろうと心配になり母は泣いたらしい。

この話も母がしばらくたってしてくれたものだ。その日は自分たちは早く二階に行ってしまっていた。自分が覚えているのは、父が怒鳴っていた声。

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