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勤続25年の女より

金曜日、16時ちょっと過ぎ、早めに仕事が片付いた。
暇だなあ、今日は夜にジムに行くし、早上がりしようかなあ、と何の気なしにふとYahooのトップページを開いた。

サァッと、血の気が引いた。

友達から次々とLINEが届いた。

会社はすぐに退勤した。


2021年11月1日、V6が解散する。



先に公式以外の情報を見てしまったから、

嘘でしょ、前兆もなくいきなり解散発表なんて、

と半信半疑、否、認めたくなくて以外と冷静だった。

事務所のHPを見て、本人たちのメッセージを読んで、ああ、これは現実なのだ、いつか来る日が今とうとう来てしまったのだ、と頑張って、頑張って、一度飲み込んだ。

会社を出て、まっすぐ家に帰った。
すぐ、メンバーからのメッセージ動画を見た。

ちょっと前まで反抗期で口数が少なかったのになあ、と大して近くもない過去を今でも微笑ましく思い出すのに、そのオカダくんがイノッチと共に場を回していた。

涙が湧きあがってきた。

いつもはちょっかいを出して、明るく場を盛り上げる健ちゃんが話を振られるまでずっと黙っていた。
坂本くんと長野くんは、いつもの優しく落ち着いた声色で語りかけてくれた。
森田さんは、しっかりと自分の言葉で気持ちを伝えてくれた。

大人になって、こんなに声を上げて泣けるものなのかというくらい、わあわあ泣いた。


いつものV6、いつもとは違うV6。
彼ららしい姿で、言葉で、そこにいるのに、柔らかい布で包まれて窒息していくような心地で見ていた。



まさに憔悴状態で1日を終えた。
次の日は彼氏と出かける予定があったけれど、キャンセルした。
どうしたって、彼らのことが頭から離れないから。


同じ時間、一緒に彼らを応援してきた母が心配だった。
声の掛け方がわからなくて、連絡することができなかった。
多分それは母も同じで、向こうから来ることもなかった。

別件で連絡を取っていた父に母の様子を聞くと「大丈夫そうやで」と言う。
そこから何時間も経って、深夜に母から1通LINEが届いた。


『大丈夫な訳ないよね』

物心ついたときから彼らのファンだった私の生活は、V6とその音楽と共にあった。

初めて生で見た芸能人はV6だった。

小学校の運動会の創作ダンスをはV6の曲で踊った。

高校受験の時は、V6を聴きながら死に物狂いで勉強した。

「あなたにとってV6とは?」なんて言って友人に聞かれたときは「人生だよ」と真面目な顔して答えていた。

報道が出てから、たくさんの人が私を心配するメッセージをくれた。
身近な人、もう何年も会っていない友人、SNSで繋がっている人。
周りから見ても、V6は私を成す大きな一部だった。

いつか来る日が今とうとう来てしまったのだ。


20周年を迎えた辺りから、その「いつか」は漠然と意識をしていた。

私が想像していた「いつか」は甘っちょろいもんで、2年に一度のコンサートが3年に一度になって、4年に一度になって、いつしかソロ活動だけになってしまって、フェードアウトしていくのだろう。
それでも、グループはずっと存在してくれるのだろう、と。


子供のときからの夢があった。


自分が結婚するときは「結婚します」と書いたうちわを持って、旦那さんになる人と一緒にコンサートに行って、メンバーにお祝いしてもらうのだ。
そして、子供ができたら私の母も一緒に、親子3世代でコンサートに行くのだ。


私の人生には、この先もずっとV6がいる。同じ時代を歩んでいく。
「いつか」を意識しながらも、そんな未来があることを信じて疑わなかった。

今、その「いつか」が訪れた当事者としてわかるのは、フェードアウトなんて中途半端な終わりの迎え方を、あの6人がする訳がなかったということ。
いつだって「今が最高であること」を示し続けてくれた彼らが、惰性でグループを存続させる訳がないということ。



25年という月日は、子供だった私を大人にした。
同じ時代を一緒に生き、私の手を前へ前へと引っ張ってくれた6人。
グループの活動を優先するために諦めたこと、我慢したことなんて、数え切れないくらいあるのだろう。

でも、いつだって彼らはその時々の最高の答えを私たちに示し続けてくれた。

今回至った答えも絶対に間違っていないと、心から思える。
V6は6人とジャニーさんとたくさんのスタッフさんとファンとが作り上げた、一つの作品だ。
訪れる美しい幕引きは最高のV6の姿を私たちの目に、心に焼き付いて、一生消えないものになるのだろう。
「プロ」の彼ららしい決断だ。
私はV6のそんなところが好きだったのだ。


動画を見た後からずっと「The One」が頭の中で流れ続けていた。
3月14日のニコ健のタイトルも、3月15日の健ラヂの選曲もこれだった。
きっと私は、彼らと同じ方向に目線を上げることができている。

ただ、今だけ、もう少しだけ、寂しくて、「居なくならないで」と泣いてしまう私を許してほしい。




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