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とりさんヨロズ紹介頁:裏『夜行堂奇譚』

ハイ。とりさんヨロズ紹介頁の裏です。
裏では、読んだ事ある前提でとりさんが好き勝手に書くことをコンセプトにしていこうかなぁと思っています。
ということでココからはネタバレ満載ですね。
要注意です。

はい。伝えましたからね?
ネタバレしたからって怒っても遅いですよ?







【本編】


前回紹介した『箱洩穢呪』と書籍【壱】穢向ですが
かなり加筆されています。
詳細がかなりわかりやすくなっているので書籍版が非常にお勧めですが
たった一つの修正点が大きく印象を変えています。
『箱洩穢呪』では外道箱を千早が回収したときに
「なるほど、間に合ったみたいだな。」
と独り言ちる。
このセリフが単行本の穢向では抜かれているんですよね。
とりさんは、このセリフ大好きなんですよ。

本書の主人公である桜千早は事故により右腕を失う。
右腕を失った事により、霊能力に目覚める。
他者に理解されない世界との交信が可能になったことにより
彼岸と此岸のどちらにも所属できない孤独に苛まれている。
そんなキャラクターだと読み取っている。
なので、彼岸の住人である霊達にも此岸の住人である人間に対しても
等しく肩入れして、等しく距離を置いている。
その指標は自分が納得できるか、と仕事かどうか。
人間の指標から逸脱しているキャラクターとして描かれているのに
その行動指針は極めて人間臭い。
自分が「助けたい」と思ったら人間・霊関係なく手助けするし、
自分が気に入らなければ依頼主であっても、
それが自分の異能で助けえたとしても助けようとしない。
それどころか、霊の復讐が成った事を善しとした。
そんなセリフにとりさんは思えるのだ。
それは、桜千早が此岸と彼岸のどちらにも所属していないという立ち位置を、そしてどちらにも「所属を理由に肩入れしない」「中庸でいるべきである」と考えているであろう精神性をよく表しているセリフであったろうと愚考している。
恐らく、公に出版することとなった時、人の命が失われる事へ肯定的に捉えられる危険があるためにオミットしたのであろうが…。分かってねぇな!と声を大にして言いたい。
さて、この「夜行堂奇譚」はバディー・ホラーと紹介されることがありますね。
外道箱の話は千早一人で行動する話なので出てきませんが、千早の相棒として描かれる「大野木さん」も面白い。
異能故に彼岸と此岸の狭間にいることを余儀なくされ、自分の信念で中庸であることを選択している千早に対し、大野木さんは飽くまで仕事として彼岸と関わる仕事をおしつけられている。
真面目に、飽くまで此岸の住人であろうとしているのに千早と関わるうちに彼岸に引き付けられていっているように思える。どっちつかずの千早に対し、此岸に押しとどめる役割が大野木さんなのだろう。
ただ、大野木さんの方が帯刀老との関係性から考えると彼岸に引っ張り込まれそうな危うさがあるのだけど。
滅茶苦茶読み応えのある小説で最近凄くはまっているシリーズです。
是非にこれを機会に読んでみてくださいませ。

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