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MEG ザ・モンスター

夏はやっぱりサメ映画である!本作はアマプラの評価が微妙だったので、無料になったら見ようと思っていた。先日確かめたら100円になっていたので購入。最初の5分で引き込まれ、15分後には気づいたら涙がはらはら溢れていた。まごうことなき傑作!2時間を超す長尺だが、一点の瑕瑾もない。

21世紀のサメ映画はここに始まる!アマプラの評価はまったく当てにならない。★5つしか有りえないだろう。深海の底にさらに深い海が広がっていて、そこに200年前の巨大サメ「メガロドン」が彷徨しているというアイデアからしてファンタスティック!

ちなみにメガロドンは、ウィキによれば「約2300万年前から360万年前の前期中新世から鮮新世にかけて」実在していたとか。平均10m以上もある史上最大級の捕食者魚類で、一説によれば20m以上の個体も存在したともいう。いわば海のティラノザウルスだ。この古生物的知見から構想されたのが本作である。デカい。ジョーズとは比較にならない。

映画開始1時間で、やっと仕留めたと思ったら間違いでクジラだった。そこからがいよいよ本番。人類最強の男ジェイソン・ステイサムの本領発揮である!てか映画の冒頭、主人公ジョナスは助けを求める友人を見捨て、他の乗員を救うため深海の現場を去る。あのジェイソンが仲間を見捨てる?信じられない。

その時点では正体不明の謎の巨大生物に襲われたため、逃げるしかなかった。でも誰にも信じてもらえず、ジョナスはタイの港町でやさぐれている。そこに再びメガロドン出現。深海潜航艇を救うため、過去のトラウマを乗り越えて立ち上がる人類最強の男!

米国と中国の合作映画である。上海沖の海洋研究所「マナ・ワン」がメガロドンに狙われる。舞台はもっぱら中国で、ジェイソン・ステイサムのお相手も中国の美人女優。脇役には東洋系が起用され、いかにも白人顔の俳優は避けられている。

たとえば「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」の最初の頃、お父さん役で出ていたクリフ・カーティスが重要な役どころを演じる。ニュージーランドの俳優で、マオリ族出身。東洋系にも見える。配役を工夫して、中国の観客に受け入れられるのを狙っている。実際、興行収入は中国が米国を上回った。その意味でも21世紀的なサメ映画だ。

とにかくカネをかけている。最初の「マナ・ワン」の紹介シーンで、建設に資金を提供した大金持ちが視察にやってくる。横柄だが愛嬌があって憎めない。海底へのエレベーターがあまりに貧相なので「オレのカネはどうなってるんだ?」と嫌味をいう。「エントランスはもっとピカピカじゃないとダメだろ」。

ところがエレベーターが開いた先は、まさに現代のテクノロジーの粋を思わすピッカピカの研究施設で、目を奪われる。こういう美術にカネをかけない(かけられない)映画はダメなのだ。邦画『シン・ウルトラマン』のカトクタイの基地を思い出した。雑居ビルの一室の金貸しの事務所のようで狭くて惨め。『シン・仮面ライダー』はもっとカネがかかっていないそうで見る気にならない。

本作は美術やSFXにカネをかけているばかりではない。カネが問題ではないのだ。台詞が1つ1つ洒落ていて、脚本がすごくよく出来ている。

どうやら原作が良いらしい。Steve Alten 作の Meg: A Novel of Deep Terror(1997)で、このあと作者は次々と Meg シリーズを発表している。もっと複雑でスケールの大きなSF小説作品のようだ。さすがアメリカ、サメ作家が存在するらしい!これを20年がかりでジェイソン・ステイサム映画に落とし込んだ、という次第。

原作に重要な登場人物として日本人タナカが出てくる。それで映画にも黒縁メガネで小太りのトシが登場するようだ。おちゃらけキャラなのだが、仲間を救うために命を投げ出す。決して日本人差別に終わっていない。

黒人のチームメイトが船から投げ出され、「助けてくれ!」と悲鳴をあげる。入れ墨の白人女性キャラから「あんた海で働いてるのに泳げないの!」と文句を言われ、「人種差別するなーっ!」と言い返し、思わず笑ってしまう。黒人は差別され、プールを使えないので泳ぎが下手だというネタだが、さすがに今ではそんなことはないだろう。こうしたギャグが無数に盛り込まれている。

クライマックスで、いよいよサメが上海の海水浴場を襲う。中国人の海水浴客たちの描き方がじつにえげつない。制作側が海辺に集う俗衆どもに憎しみを抱いているとしか思えない。

とりわけ小太りのガキの扱いがたまらない。ガキのくせに相撲取りのような体形だ。なのに母親がスマート美人なのが解せない。

そっくりな奴を近所のスパ銭のサウナでよく見かける。ミストの真ん中の席にひとり悠然と座っている。3分もするとオレはすぐ出、体を洗い、風呂に入り、サウナに戻る。すると!同じガキが同じ席にそのまんまの姿勢で鎮座してやがるのだ。暑さというものを感じないのか?

このガキが海に駆けて行って、サメの餌食になりかける。心のなかでメガロドンに向かい「食え!食え!」と叫んだが、助かってしまうのが残念極まりない。

いまウィキで見たところ「2018年9月7日には合計興行収入が4億7,353万ドルを記録し、『ジョーズ』の記録(4億7,065万ドル)を抜いてサメ映画史上最高額に達した」とある。2020年にはテレビでも放映され、原作の翻訳もある。この夏、続編が公開される予定。

こんな名作を見ぬまま数年も過ごしてしまったとわ。人生の禍根であり、痛恨である。アメリカでは続編もなかなか好評らしい。日本で公開されたら映画館に駆けつけたい。




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