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高校卒業式をライブ配信してみた

はじめに

 3月上旬に某県立高校で行われた卒業式。実際に学校体育館に入って式に参加出来たのは卒業生、3年担当教員、来賓数名、保護者各家庭1人という限られたメンバーだった。そのため本来は式に参加できるはずだった残りの保護者などに向けてライブ配信を行った。

 このnoteは高校生(私)が準備に関わった当事者として、ライブ配信に至った経緯やそのセッティングなど、一連の出来事を書いた記事である。

はじめは却下された学校での生配信

 このライブ配信が企画される半年前、私は文化祭(例年と異なりお客さんをいれず在校生のみで行った)にてライブ配信(限定公開)を実施することを提案していたのだがその際は却下された。その理由は、学校が公式に生徒の顔や名前、展示などの個人情報を含む物をインターネットを使用して公開することは、生徒を守るという観点から実現できないからとのことだった。個人的な感覚になるが「インターネットを使う=リスクがあってNG」という風潮があるのではないかとその時には感じた。

 しかし、卒業式ではライブ配信が可能となった背景には何があるのだろうか。私なりの推測をいくつか記しておく。

・一般的に文化祭よりも大切とされる学校行事だから

・限定公開とそのリスク性が先生方の間で認知が高まったから

・卒業式には毎年地元テレビ局が取材に来るので、外部に晒されて当たり前になっている行事だから

ライブ配信の実施決定

 ライブ配信(YouTube Live)を行うことが決定したのは1月下旬だった。それ以前から学校体育館で式に参加できない人向けの対策をとることは決定していたようだが、どのような形式で実施するかまでは未定だった。(具体的に出ていた案は、Zoomなどのビデオ会議サービスを使って参加してもらう、録画配信する、生放送するなど)

 YouTube Liveを使用することとなった理由は以下の通りである。

・実際の式の時間に合わせてライブで行う方が臨場感がある

・体育館外の参加者の発信は必要なく一方向の配信で問題ない(Zoomなどで双方向でやり取りする必要はない)

・ライブ配信をするのであればYouTube Liveがメジャーである(YouTubeは配信する側も見る側もやりやすい、慣れている)

配信に関わったメンバー

 配信係という位置付けは基本的に、卒業式の行事をするための係分けの一つとして設けられたようだ。司会進行係や受付係と並列に配信係も存在した。配信係の内訳としては、以前から緊急事態宣言下で学校のICT化を中心的に行われたPCなどに詳しい先生が集められたグループのメンバーとほとんど同じであった。

 そこにある種の特例として私も参加した。理由は過去に学校でのライブ配信計画を具体的に提案した経験があったからである。

配信準備1-寄せ集め

 準備の初期段階で行われたことは、インターネットや経験で得た知識をメンバー同士で共有すること、私物や元から学校にあった機材を持ち寄って小規模な実験をすることであった。この段階で、学校でライブ配信をする際はどのようなレベルまで可能なのか、追加でどのような物品を購入するべきなのかが決められた。

 配信の肝であり学校にもメンバーの私物としても持っていなかった高性能ビデオキャプチャ兼スイッチャは、細かな仕様書を作成した上で学校として業者から購入したが、その他のカメラやマイクなどはメンバーの私物を持ち寄ることで対応することになった。

配信準備2-内輪での実験

 必要な機材が揃ったところで、実際の配信現場である体育館での実験が始まった。まずはどのように機材をセッティングできるのかを試し、最適だと思われる位置に固定した。次に、有り合わせも含む用意した機材を使えば、どのような映像をとることができるのか、どのような映像をつなげていけば良いかを試しながらワークフローを決めていった。それらと同時に、パソコンで必要なテロップを入れる作業の準備や音量調節なども行った。最後に実際にYouTubeでライブ配信をしてみるところまでをして終わった。

 他の場合では撮りたい映像から逆算して機材やワークフローを決めていくのかもしれないが、今回は用意したものも配信することもほとんどが初めてのことであるので、このような順序で行った。

配信準備3-保護者との連携

 最後の準備として、卒業式当日に配信を視聴する対象者である保護者に向けて、テスト配信を行った。どのようなワークフローで配信するのかを予め知ってもらったり、YouTube Liveの視聴を試してもらったりするためである。

本番【卒業式生配信】

 卒業式本番の配信は少しトラブルがあったものの無事に終了した。合計の視聴者は500人だった。アーカイブは少しの時間残したが、約1日後には非公開とした。

 トラブルに関してだが、放送の途中に音が入っていない部分があったことだ。元から学校の配信に対する捉え方としては、あくまで体育館で行われる式の副次的なものであって、完璧な物は求めない(求められない)し、完璧を保証できないということだった。そのため、すぐに別の配信を立てて対策をしたり、後日音声付きの映像を公開するなどの対応は取られることはなかった。

機材・ワークフローの詳細

【用意した機材】
・パソコン…1台
今回使用した物はSurface Pro 7

・モニター…2台
今回使用した物はパソコン教室にあったフルHDモニター

・カメラ…2台
ある程度の光学ズームが出来ること、給電撮影が出来ること、HDMI端子から1080pで映像出力が出来ることが条件

・マイク…1台
会場の環境音を集音出来ること、3.5mmジャックで出力することが条件

・ワイヤレスマイク…2台
レシーバーが3.5mmジャックで出力することが条件

・ビデオキャプチャ兼スイッチャ…1台
今回使用した物はATEM Mini Pro HDMIを2系統以上、音声を2系統以上入力でき、HDMIモニター出力では全ての入力されたソースを同時にモニター出来ることができ(マルチービューが可能なこと)、UVCにてパソコンに映像を送ることが出来ることが条件
(実際には今後も活用していくことを踏まえて、この条件よりも少し高めに設定してある)

卒業式ライブ配信.001

【設置・配線】
設置・配線については上図の通り(電源が必要な機材は別途全てコンセントから電源供給しておく)

手元で操作や確認が必要な機材は体育館2Fギャラリーに集約しておく

ステージや生徒に取り付けが必要なワイヤレスマイクは予め設置しておく

ATEMの音声入力が2系統なのに対し、マイクは3つあるため、ワイヤレスマイクのレシーバー1と2を差し替えながら使う

【パソコンの設定】
パソコンには3つのアプリケーションをダウンロードしておく

・Chrome
ブラウザアプリ、YouTubeの配信設定を行う、Google製なのでYouTubeとの相性が良い

・OBS
映像とテロップを合成する・合成した映像をYouTubeに送信するアプリ

・ATEM Software Control
ATEM Mini Proを細かく設定するアプリ、マイクから入ってきた音の調節やワイプの大きさなどを調整する

スクリーンショット 2021-03-28 22.21.15

【ワークフロー】
ワークフローは上図の通り

それぞれのプログラム中に話をする代表者以外にも、卒業生を満遍なく映したいという思いから、話す人をワイプで抜き取って小さく映し、画面全体では卒業生を少人数ずつ撮っていくことをした。

今回の式では話を聞く場面は3回(祝辞*2、答辞)あったので、卒業生を3つのグループに分けて、1回の話あたり1/3がカメラを動かしながら(なめるように)順番に撮られていくようにした。

さいごに

 まずは、この話を、個人情報を保護する(具体的な人名を出さない、実際のライブ映像を載せない)などの条件付きでnoteに公開することに許可をくださった先生方、ありがとうございます。拙い文章、図ではありますが自分の記録としてでなく少しでも見てくださった方のお役に立てれば嬉しく思います。



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