クサイ豚骨ラーメンを科学する。part 3.芽胞形成菌について
さて、part 3です。
続きものなのでpart 1とpart 2を読んでいないと
これからほんの少しだけ難しいお話となります
私のお店、博多ラーメンでぶちゃんのスープは発酵タイプのクサイ豚骨ラーメンで、一連の研究のメインの検体としても使用している。
神奈川県にある食品微生物センターへ菌検査の依頼をかけたところ
経験による仮説の通り耐熱性の菌「好気性芽胞形成菌」が検出された。
一抹の不安でもあった食中毒菌の検出は無し。
では、その好気性芽胞形成菌とは何か?
字面からも読み取れるとは思うが
空気を好む好気性の菌で芽胞と呼ばれる加熱、乾燥、紫外線、化学薬品などに強い耐性を持つ「胞子膜」を形成し死滅を免れることができる菌の「総称」である。
勘のいい方はお気づきかと思うが
「好気性」がいるということは「嫌気性」の芽胞形成菌も多く存在する。
余談だが、この嫌気性の芽胞形成菌にはウェルシュ菌やボツリヌス菌などの食中毒菌として聞き覚えのある方も多いであろう微生物の名前が挙げられる。
この芽胞形成菌、好気性でも嫌気性でもとにかく劣悪な環境下での耐性に優れており、なかなか死滅することがない。
それゆえ土壌や植物など自然界に普遍的に存在する微生物である。
芽胞形成菌を滅菌させるには...
芽胞形成菌を死滅させるにどうすればよいか。
一般的には2気圧で121℃で20分の加熱が必要である。
覚えなくてもよいがこれを高圧蒸気滅菌法(オートクレーブ)というらしい。
※後に説明するが別の死滅条件もある。
ざっとだが好気性芽胞形成菌についての説明とする。
この、最初の菌検査で味を占めた私と樹庵氏
次々と工程の異なる当店の豚骨スープを検査へ出した。
樹庵氏が短期間で準備したのは
①ゲンコツ(大腿骨)のみで炊いたスープ
②豚頭のみで炊いたスープ
③い草類(藁)を煮沸した藁汁
④豚頭+藁の藁豚骨スープ
結果は以下の通り
なんと
全て陰性。菌の検出は無し。
当店のスープと同じ材料の豚頭スープからは検出されると予想していたがハズレ。
※後にこの理由も仮説が立つことになる。
私は
part 1で説明した「種スープ」を入れる前の仕込み途中のスープ。
仮称・でぶちゃんフレッシュスープを検体に出して検査を待った。
結果はこちら
種スープが入っていない為に
完成した熟成スープの2,100cfu/gと比べると少ないが予想通り
120cfu/gの好気性芽胞形成菌が検出された。
果たしてこの樹庵氏の検体と私の検体
材料が同じもので、何故結果に差が出たのか。
※これも仮説は立っているので後に説明をする。
この結果で満足するような樹庵氏と私はではない。
ここまで来るとやはり気になるのは.....
他のクサイ豚骨ラーメンのお店のスープである。
調べない訳にはいかない2つのお店。
そう...
極悪スメルズ
「ラーメンきら星」と「ラーメン健太」
この両店のスープを
菌検査に出してしまったのである!!
part 3はここまで
part 4までお待ちください。
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