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風景

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身の回りにある様々な風景を撮った写真は撮影者ではなく、見る人の心を映し出す鏡。
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#響灘

水面

 風のない響灘は 遥か遠く見渡すかぎり湖のよう 誰の足跡もない砂浜には おびただしい数の 黄や黒や赤や白の貝がらが きれいに形を留めていたり 原形が分からないほどに砕けていたり 繰り返し打ち寄せては 引いていく波にもまれながら やがては波に乗って大海原へと旅立ち 生まれ故郷に舞戻るその時を待つ 囁くような波の音 打ち寄せる柔らかな泡粒 岩場にしがみつく生き物たち 打ち上げられた海藻 太古から移動しつつある岩礁 大陸から渡ってくる涼し気な海風 数十万年もの時の流れを経て 今

茜色の空

そよそよと風薫る海原は 漆黒の安寧へ溶けていくその間際 茜色の空を朧げに映し出す 大海原を覆う雲は 茜色に染めた シルクのヴェールがたなびくように 幾重にも絡み合いながら 東の空へと流れてゆく どこまでも どこまでも ただ流れ やがて消えてゆく どうせなら できるなら 地球の果てまで 流れていって まるごと全部 包んでしまえばいい その茜色の優しさで 何もかも全部 癒やしてしまえばいい この日の気象衛星写真を調べてみると、この時に見ていた高層雲はそれから中国から関西、

黄昏響灘

Keith Jarrett It’s All In The Game

はまゆう咲く丘

 北九州市のとなり福岡県芦屋町「夏井が浜」では、はまゆうの花が見頃を迎えている。 夕焼け色に染まる響灘を背景に、薄暗がりで咲き誇る姿は、決して艶やかなものではなく、むしろ控え目すぎるほどに慎ましい。 神奈川県三浦半島を北端とする温暖な海岸沿いなどに自生する常緑性のヒガンバナ科多年草で、浜の近くで咲くことや、神事に使う木綿(ゆう)に花が似ていることから「浜木綿(はまゆう)」と名づけられた。 7~9月には白い線状の花を咲かせる。 そしてこの花は夕方~深夜に満開になるという。 つ