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「は……? 寮監、ですか?」 新卒で入社したベンチャーで、人事部門に配属されて3年目の春。 それは、突然の辞令だった。 「うん。八島くん、確か独り暮らしだったよね?」 「はい、そうですが……」 ベンチャーと言ってもITとかではなく、イギリスのアンティークを専門で扱うこの会社は、社長の趣味で立ち上げたものだと聞いている。 その道楽が高じてついに、イギリスの名門学校よろしく若手社員向けの寄宿舎まで造ってしまったらしい。 「やってくれるなら、家賃は全部会社持ち
※いくたはなさんの『龍と虎』に登場するこのふたり、「直江綱」(左)と「宇佐美満」(右)のお話です ※百合百合しい内容となっていますので、苦手な方は回れ右で ====== 「んっ……」 唇と唇が触れ合うだけの、青い口吻。 まだ数えるほどしかしていないとはいえ、とうに片手の指では足りぬくらいの回数を重ねてはいる。 それなのに、いまだ直江は頬を朱に染めては、唇が離れるとすぐに顔をそらしてしまう。 ――もっと、その恥じらう顔を見ていたいというのに! わた
※いくたはなさんの『龍と虎』に登場するこのふたり、「馬場春」(左)と「山縣昌」(右)のお話です ※百合百合しい内容となっていますので、苦手な方は回れ右で ====== 「ふぇっ……へくちっ」 寝室から山縣のかわいらしいくしゃみが聞こえたので、わたしは読みかけの本をぱたりと閉じる。 「起きたのか、山縣。調子はどうだ?」 「ぅー……頭がボーッとしてます……」 部屋の中を覗き込みながら声をかけると、力のない山縣の声が返ってきた。 いつもの元気の塊のよう
【登場人物紹介】・サンダイ先生(年齢不詳) 売れてると言えなくもない、青年誌で連載作品を持つ漫画家。 魚と肉、どちらも好き。いつも迷う。 ウナギが食べたいけどお金がないときの救世主は、スーパーで売ってるサンマの蒲焼。 ・葉梨(はなし)ちゃん(年齢非公開) サンダイ先生のアシスタント。美大出身。 魚よりも肉派。ハラミ最強。 焼き肉のときに「白ご飯」を頼まないひとを見ると、心の中の【このひととは友達になれないリスト】にそっと追加している。 ※前回の話はコチラ ・
【登場人物紹介】・サンダイ先生(年齢不詳) 売れてると言えなくもない、青年誌で連載作品を持つ漫画家。 好きな悪魔は「ルシファー」(堕天使って設定がもうカッコいい)。 小学生の時に「絵本を書こう」という国語の課題で、堕天使が出てくる話を書いて先生にドン引きされた。 ・葉梨(はなし)ちゃん(年齢非公開) サンダイ先生のアシスタント。美大出身。 好きな悪魔は「ベヒモス」(図体デカい割に名前の響きがかわいいので)。 中学生の頃は「ベヒモス」という名前のゲーム会社が作った
【登場人物紹介】・サンダイ先生(年齢不詳) 売れてると言えなくもない、青年誌で連載作品を持つ漫画家。 好きなケーキはベリーのタルト。というかタルト生地が好き。 祭りの思い出といえば、屋台の福引で当てたゲーム機の中身が、でっかい消しゴムだったこと。 ・葉梨(はなし)ちゃん(年齢非公開) サンダイ先生のアシスタント。美大出身。 ケーキよりもエクレア派。ただしカスタードのみのやつは認めない。 祭りの思い出といえば、おじいちゃんと二人で射的の屋台を荒らしてもとい、制覇し
【登場人物紹介】・サンダイ先生(年齢不詳) 売れてると言えなくもない、青年誌で連載作品を持つ漫画家。 紅茶よりは珈琲派。そして甘党。 煙草を吸ったことはないが、学生時代にワルぶりたくて、ビクビクしながらコンビニで禁煙パイポを買ったことがある。 ・葉梨(はなし)ちゃん(年齢非公開) サンダイ先生のアシスタント。美大出身。 珈琲よりも日本茶。むしろ日本酒。 「歩き煙草するヤツは殴り倒してオーケー」をマニフェストに掲げる政党があれば、迷わず投票すると心に決めている。
【登場人物紹介】・サンダイ先生(年齢不詳) 売れてると言えなくもない、青年誌で連載作品を持つ漫画家。 ペンネームの由来は「Sun Die」から。 デビュー前、徹夜で投稿作品を描き上げたときに、窓の外で輝く太陽を見て思わず口についた言葉をそのままペンネームにした。 ・葉梨(はなし)ちゃん(年齢非公開) サンダイ先生のアシスタント。美大出身。 仕事はリモートでのやりとりなので、まだ実際に会ったことはない。 本人曰く「田舎の生まれ」らしいが、出身地などの個人情報は頑な
私は自分でいうのもアレだが、腕のいいマーケターだと思う。 子供向けから老人向けまで、どんなものでもバズらせてきた。 しかし、今回の依頼には参った。 「毒舌」なんて、どうやって宣伝したらいいんだ! くそったれ、こんな仕事とってきた営業はどこのどいつだ!! と、叫んだところで、はたと思いつく。これだ!!!! そして私は、「自分がしゃべり続けるCM」を作った。
「注意報ごっこ?」 最近、どうやらそんな遊びが流行っているらしい。 どんなものかと聞いてみたが、さっぱり要領を得ない。 まぁ、なんにせよ流行りなんてものは一過性のものだから、すぐに飽きてしまうだろう。 と、思っていたのだが。 「注意報発令ー!」 「こっちでも発令中だぞー!」 オフィスの中に、今日もいろんな注意報と、笑い声が飛び交っている。 もしかして、ブームに乗り遅れているのは、私だけ?
我が家には、代々伝わる家宝のコップがある。 別に有名な陶芸家が作ったとかではない、なんてことないただの湯呑みたいなもんなのだが。 これがまた、しゃべるのである。 私はおかんからこのコップを受け継いだのだが、おかんはその昔仕事で大失敗したときに、お祖父ちゃんがすごい金言をくれたおかげで乗り越えられたと言っていた。 「ほんとかよ」と思っていたけれど、おかんがぽっくり逝ってしまった翌日、「元気だしや」としゃべり出したのを聞いてしまったら、信じるしかない。 それからも、時々