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【エッセイ】歩くひと

私は車で作業場まで移動している。
決まった道をルーティンのごとく走る。

その道に数年前から突如といっていい。
そのひとが現れるようになった。
決まった朝の時間になるとそのひとは現れる。
季節は関係ない。
そのひとを見かけたら私はいつも見惚れてしまう。
なぜならばそのひとの「歩き方」がとても魅力的なのである。
体は大きく上下に時にはやや斜めに揺れ、手首は肩の位置まで上げる。
視線は常に真っすぐ。ただ道を見ているのだ。
その姿はダイナミックであり威厳さも感じられるその歩き。
歩道でその人と出会ったら私は横に避けるであろう。
それはそのひとの危険な香りからではなく、威風堂々の歩きを邪魔したくないからだ。
もっとその歩きを見ていたい。
しかし後ろの車からの「早く進め」というプレッシャーも予想される。
なので毎回しかたなくだが、通り過ぎるその瞬間を脳内に刻むのである。

今日の朝も見かけることができた。
相変わらず素晴らしい歩きである。
いい一日になりそうだ。

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