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東京五輪組織委の恐るべき無責任さ(1)

「#Tokyoインパール2020の記録」掲載開始                      

作家の本間龍です。今月からnoteを始めることにしました。ここでは私の執筆テーマである広告とメディアが世論に与える影響(東京五輪、憲法改正国民投票、その他の広告トピックス)などを中心に、ほぼ週一回のペースで、「#東京インパール2020の記録」(電子書籍「東京五輪ボランティア問題アーカイブ」シリーズにまとめています)の新記事を掲載していきます。  

「#東京インパール2020」とは、東京五輪を、太平洋戦争で旧陸軍が実施した、世界史上に残る愚劣無残な「インパール作戦」に匹敵する愚行であると提議し、記録していく作業です。五輪スポンサーとなった全国紙(朝日、読売、毎日、日経、産経)とテレビ、ラジオなどの大手メディアがほぼ無視している無償ボランティア問題を中心に、東京五輪のあらゆる問題点を記録、報告していきます。ほとんどのメディアが五輪万歳の翼賛報道機関と化す中で、愚直に問題点を指摘していきますので、ご支援いただければ幸いです。

東京五輪の問題点とは   

私は「ブラックボランティア(角川新書)」や複数のメディアで、東京五輪の様々な問題点を指摘してきました。それらは多岐に渡りますが、特に大きな問題点は、以下の二点だと思っています。

A)商業イベントで莫大なスポンサー収入があるにも関わらず、11万人以上  のボランティアを、ほぼタダで働かせようとしていること  

B)酷暑下の開催にも関わらず、選手、観客、ボランティアの生命と健康   に対する責任の所在が不明確なこと

 2019年の夏、組織委は複数の五輪テスト競技会を実施しましたが、酷暑に対してほとんど有効な対策を打ち出せませんでした。酷暑が五輪開催の最大のアキレス腱であることは数年前から指摘されていたにも関わらず、開催があと一年に迫ってるのに、なぜもっと切迫感、責任感のある動きがとれないのか。まるで緊張感が感じられない姿勢に大きな危機感を持ちました。 

 そこで組織委に対し、特にボランティアと観客が熱中症にかかった場合の責任の所在について質問を送り、9月4日にその回答が届きました。これらのやりとりはすでにウエブマガジンのWEZZYにて公開していますが、今回noteを開始するにあたり、こちらに再録します。まずはその質問と回答全文を以下に紹介します。

<組織委に対する質問と回答>

(1)オリパラ期間中にボランティアや観客が熱中症になった場合、その責任の所在はどこにあると考えているか。
(2)オリパラ期間中のボランティアと観客を酷暑から守る部署、最終責任者は誰か。部署名と責任者の肩書き、名前を明示してください。
(3)オリパラ期間中、ボランティアや観客に熱中症による後遺症または死亡者が出た場合、組織委はその人たちに対する補償責任を負うのか

(組織委回答)
・東京2020組織委員会(以下、組織委員会)が募集・運営する大会ボランティアにつきましては、ケースバイケースの判断とはなりますが、基本的には組織委員会が責任を負うものと考えております。大会ボランティアのみなさまに対しては、熱中症を防ぐために、研修で暑さ対策に関する周知徹底を行うとともに、活動時には暑さ対策グッズとして、水や体調管理ブック等を配布する予定です。また、休憩時間を十分に取れるようなシフトの考え方を検討しております。ただ、大会ボランティアは、あくまで任意参加ですので、無理をせずにご参加いただければと考えております。なお、大会ボランティアについては、保険(組織委員会負担)に加入いたします。
・観客のみなさまにつきましては、組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合に組織委員会の責任となると考えております。組織委員会では観客のみなさまに対し暑さ対策に関する情報提供やファーストレスポンダーによる会場内の巡回のほか、仮に熱中症にかかってしまった場合に使用できる会場内医務室の設置や救急車での搬送体制など、安心して観戦できる環境整備に努めてまいります。観客のみなさまにつきましても、無理をせずにご観戦いただければと考えております。

<質問>
(4)ボランティアを加入させるとしている保険の補償内容を明示してください。                              (回答)
・検討中です。

※回答は「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委  員会 戦略広報課」から送られてきました。

組織委の回答に垣間見える責任逃れ体質                  

いつものことですが、組織委広報の文章はダラダラとした長文で、非常に分かりにくくなっています。こちらが箇条書きで質問している場合、その項目ごとに回答するのが社会通念というものですが、そういう最低限の書式的知識が欠落しているようです。私は過去に3回ほど組織委に質問していますが、彼らの返答はいつも上記のように雑然としています。こちらの質問に的確に答えず、聞いてもいないことを長々と書き連ねるのが、この組織の特徴です。

 では中身を見てみましょう。ボランティアの熱中症の危険性に関しては「基本的には組織委が責任を負うものと考えている」と渋々認めてはいるものの、「ケースバイケースの判断」「ボランティアはあくまで任意参加」という文言を入れ、無条件に責任を負うものではないことを匂わせています。

 ですが、その任意参加するボランティアに対し、組織委は「1日8時間、連続5日、合計10日以上の参加」という厳格な条件を出課して採用しています。そうした条件のもとで働いてくれる人々の健康を守る全責任が組織委にあるのは当然であり、「ケースバイケースの判断」などと逃げ道を作ることは許されないはずです。

 また、「大会ボランティアについては、保険(組織委員会負担)に加入いたします」などとまるで保険を用意しているから問題ないと言わんばかりですが、その保険内容については未だに検討中であるとしています。保険があるから心配するなと言って11万人以上の人々を集めながら(組織委が集めた大会ボランティアは8万人、東京都が集めた都市ボランティアは3万人)、どんな保険なのか内容を未だに明かせないというのは、後出しジャンケンにも似たズルさを感じさせるのではないでしょうか。

 そして、観客に対してはさらに態度が曖昧です。「組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合に組織委員会の責任となると考えております」などとまわりくどい条件をつけるのなら、どのような場合が「組織委の責めに帰すべきと判断」されるのか、きちんと明示すべきですが、詳細についての説明はありません。

 また、「仮に熱中症にかかってしまった場合に使用できる会場内医務室の設置や救急車での搬送体制など、安心して観戦できる環境整備に努めてまいります」などと書いていますが、そんなことはイベントの主催者が準備すべき最低の安全対策であり、だから安全だと納得できるシロモノではありません。

 観客は全員が高額なチケットを購入して全世界から集まってくるのであり、有料であるからには安全を保証されていると認識して会場にくるのです。そうした人々に対する責任を「責めに帰すべきと判断される場合は組織委の責任」と言うのは、ボランティアに対する「ケースバイケース」と同じく、完全な逃げの姿勢ではないでしょうか。

 そして最も悪質なのは、質問(2)を完全に無視していることです。上記にある通り、責任を取るつもりがあるというのなら、なぜその責任部署と責任者の名前を回答しないのでしょうか。これでは、いざ多数の熱中症患者が発生した時に、責任追及が曖昧になってしまいます。

 何度も言いますが、11万人以上のボランティアと、全世界から集まる数百万人の観客が熱中症にかからないようにするのが、組織委最大の責務です。その責務を負う最終責任者が誰なのかは、日本国内のみならず世界に発表する義務があるはずです。様々な疑問を明確化させるために、組織委に対して再度、以下の質問を行いました。

<組織委への2回目の質問と回答>            

※各質問に対し、まとめてではなく個別に回答してください。

1)前回の回答でボランティアの熱中症責任は「ケースバイケースの判断とはなります」とありますが、具体的にどのようなケースが組織委の責任となり、逆にどのようなケースが組織委の責任とならないと考えているのか、明示ください。また、その判定はどこの誰が行うと考えているのか教えてください。
2)前回も尋ねましたが、オリパラ期間中のボランティアと観客を酷暑から守る部署、最終責任者は誰か。部署名と責任者の肩書き、名前を明示してください。
3)前回の回答で観客が熱中症にかかった場合「組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合に組織委員会の責任となると考えております」とありますが、「組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合」とはどのようなケースを想定しているのか、明示してください。また逆に、組織委の責任ではないと想定しているケースも明示してください。また、その場合、どこの誰がその判定を行うと考えているのかも、明示ください。
4)オリパラ期間中、熱中症被害を受けた人が苦情(訴訟等含む)を申し立てる事態が予想されます。その場合、それに対応する部署はどこになりますか。その部署名と責任者名を教えてください。
5)ボランティア保険の詳細内容が決定するのはいつでしょうか。発表予定を教えてください。

<組織委回答>
ご質問1)及び3)について
前回ご回答申し上げましたとおり、東京2020組織委員会が募集・運営する大会ボランティアにつきましてはケースバイケースの判断とはなりますが、基本的に組織委員会が責任を負うものと考えております。
また、観客の皆さまにつきましても組織委員会の責めに帰すべきと判断される場合に組織委員会の責任となると考えております。この点もケースバイケースの判断となります。
熱中症となる原因は様々なものが考えられるところであり、その責任の所在は、具体的な状況下において個別に判断されるものであります。どのようなケースにおいて責任が生じるかを一概に示すことは難しく、かえって誤解を生じかねないものと考えております。                 ご質問2)及び4)について
暑さ対策は、組織委員会の特定の部署や個人が実施するものではなく、組織委員会が組織として実施するものであり、組織委員会が法人として責任を負います。

ご質問5)について
ボランティア保険の詳細内容については調整中となります。追って、大会ボランティアとして活動いただく方々にお知らせする予定です。

組織委員会としては、皆様の様々なご意見も伺いながら暑さ対策を検討実施してまいります。ご理解とご協力のほど宜しくお願い申し上げます。

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
戦略広報課

一貫して無責任な組織委の姿勢                      

一読してわかる通り、今回の回答も前回同様、無責任と欺瞞に満ちています。まず(1)と(3)ですが、前回の回答で「ボランティアと観客の熱中症責任を組織委が負うかどうかはケースバイケース」と組織委側が書いてきたので、ではそのケースバイケースを明示せよと質問したのですが、「誤解を生じかねない」などと言って具体例を挙げることから逃げています。

 自らがケースバイケースだというのなら、どのような場合に責任が生じるか、その具体的なケースを提示しなければ、組織委の考えは伝わりません。想定しているケースを明示しないのは、実際には何も考えていないか、言質を取られることを恐れて逃げているとしか思えません。

 また、質問(1)と(4)では、その「ケースバイケース」が組織委の責任となるかどうかを判定するのはどこか、苦情の申し入れ先はどこかとも尋ねていますが、その部分は完全に無視されています。なぜこの質問に返答しないのか、自分たちが答えたいことしか答えない体質がにじみ出ています。 

 つまり組織委の回答を要約するならば、「熱中症になる観客が出たら責任をとる場合もあるし、とらない場合もある。でもどんな場合が想定されるかは言わないし、何か問題が起きたときの連絡先も公表しない」ということなのです。これがまともな組織のとる態度でしょうか。

東京五輪最大の懸案を担当すべき部署が「ない」? 

 他方で、 前回回答を無視した(2)については、今回は珍妙な回答をしてきています。ボランティア担当部署はどこか、そしてその責任者は誰かという至極簡単な質問に「暑さ対策は、組織委員会の特定の部署や個人が実施するものではなく、組織委員会が組織として実施するものであり、組織委員会が法人として責任を負います」などと、まるで小学生の学級会ような「集団責任論」を主張してきました。                      会場内で熱中症により死者が出た場合、組織委自体が責任を負うのは当然です。しかし、どのような企業や組織でもそうであるように、組織委の中にもボランティアと観客対応部署があるはずであり、そこには責任者がいるはずです。これだけ酷暑問題が叫ばれているのに、その対応責任者の名前を出さないのは、万一の場合の責任を不明確にしようとしているとしか考えられません。

 実は、報道陣に対しては、ボランティア関連の総責任者は副事務総長の坂上優介氏(UDトラックス会長)だと明らかにされています。ですが、組織委の組織図にボランティア対応部署、または酷暑対策部署の記載はありません。つまり、東京五輪最大の懸案を担当すべき部署が、組織図上は存在していないのですが、こんなバカなことがありえるでしょうか。もしいまだに専任部署が存在しないのなら組織として怠慢ですし、責任逃れのために分散させているか、または隠しているとしたら大罪です。

 坂上氏は大型トラック製造会社のトップであり、組織委においてはいわばお飾りです。もちろん酷暑対策の専門家ではないし、そもそも専任の担当部署がない状況で、有効な酷暑対策などできるのでしょうか。そして万一の際、その責任を取れるのでしょうか。

 無責任企業の代表格である東電や関電でさえ、原子力部門の責任者の名前は明示されています。そして、東電の責任者たちはいま、刑事告訴されています。責任者とは、いざという時に責任をかぶるための役職なのです。それなのに組織委が担当部署と責任者を明示しないのは、万一の際の責任追及を曖昧にしようと画策しているとしか考えられません。

このような組織に五輪を実施する資格があるか?

 いかがでしょうか。この回答で、組織委の無責任な姿勢がより一層鮮明になったのではないでしょうか。このような、責任感のかけらもないような組織が、ボランティアと観客の命と健康を守ることが果たして可能なのか。所詮は巨大スポーツ興業なのだから、この程度のレベルでも仕方ないのか。今後もこの問題は徹底追及し、組織委がボランティアや観客に対する責任から逃れられないよう、弁護士や医師団体とも連携していこうと考えています。 

                 

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作家。著作は「ブラックボランティア」「広告が憲法を殺す日」「電通巨大利権 東京五輪で搾取される国民」「メディアに操作される憲法改正国民投票」「原発プロパガンダ」等。東京五輪タダボラ問題や、広告とメディアが世論に与える影響を研究。クラシック音楽、映画、スコッチと葉巻を愛します。

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応援させて頂きます。『世界』買ってきましたが、色々と忙しく、まだ読んでおりません。申し訳ございません。
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