超一流の考え方
プロの世界でやっていくためには物の考え方も時には斜めに見る必要がある。
誰もが知っている超一流投手Aは(実名は伏せさせていただきます)その年の春のキャンプで初めての実践の場を迎えた。
春のキャンプは若手にとってはアピールの場であり、最初のクールから全力で自分を出していくことが常である。しかし投手Aはもちろんチームの不動の選手であり開幕に照準を合わせた自分流の調整を任されている選手だ。3月の終わりの開幕に照準を合わせる選手にとって2月の頭から早いペースで身体を作るとピークの開幕前にコンディションを落とす可能性がある。よってその年の初めての実践も2月のキャンプも終わりに差し掛かった頃だった。
その日は南国のキャンプ地といえども寒い日で、しかも雨が降っていた。気温の低さとぬかるんだマウンド。決して条件は良くなかった。そして投手Aは大量失点を許してしまう。普段ならいとも簡単にベンチへ戻るマウンド捌きもその日は影を潜めた。アピールする若手ならその日だけで降格かもしれない。ライバルの不調に喜ぶ選手もいただろう。
登板を終えて戻って来た投手Aはさぞかし首を傾げて帰ってくるだろう。そう思った。そして戻った投手Aはこう言った。
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