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自社HPリニューアルが大変な理由と、ベンダー選定で失敗したこと 〜自戒を込めて〜

コロナ禍で大変な状況ですが、昨年の経験談をお伝えできればと思います。

前職で自社(従業員200名程度)のコーポレートサイト(HP)のリニューアルの制作ディレクション(アートディレクション含む)を担当した時のお話をさせていただきます。


コーポレートサイトリニューアルって楽しそう?

Web制作に関してはこれまで多くのサイト制作をしてきましたが、自社のコーポレートサイト制作は、クライアントワークよりも大変だという感覚を持っています。

そう思う理由はいくつかありますが、

まずは決裁権はないが「①ステークホルダーとしては社員全員が対象であると言う点」。特にリリースした後、社員からの市民権を獲得できなかった時。各部署から制作部隊に向けて指摘やコメントが殺到し、それが連鎖反応で悪い評判となる場合があります。

次に、「②営業部門が稼いだお金を使って制作している点」。予算をつけて制作しているのだから良いもの作れよ、と言う見えないプレッシャー。

最後に、「③制作終盤で社内(役員など)からの横槍が入り、修正業務が膨大になる点」。これはクライアントワークでも同様のことが起こりますが、社内はそれ以上に情報を得やすく、言いやすい環境です。

これらを打開するには、

①は不具合などない品質の高い状態でリリースすること(自社サイトだからと言う甘えを排除すること)
②は周りの社員に業務が楽そうであることを見せないこと(大変さをさりげなくアピールすることも必要)
③は社内のキーパーソンはしっかりと抑え、事前に確認を取ること。そして上司を味方につけ、横槍が入った時でも太刀打ちできる状態にしておくこと

が必要なアクションだと思います。
もちろん、大変さばかりお伝えしましたが、ポイントごとの制作工程では楽しいところも多くあります。事前にプロジェクトが炎上しないようにすることが、楽しくするための前提ですね。


リニューアルの目的

さて、今回リニューアルするコーポレートサイトですが、制作だけであれば自身で手を動かしてコンテンツ作り(社内調整)からサイトデザイン、コーディングまでできるのですが、
・それなりのボリュームであること
期限があること
営業/マーケティング要素を組み込むサイトにすること
が要件としてありました。

ここでリニューアルを行う社内体制ですが、メイン担当者は自分1人で役員2人が上役としている3名体制(途中から増員しました)。役員1名がRFPを作成して全員でのレビューを挟み、各役員が声がけした5社に相談、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)提出という流れでスタートしました。

リニューアルの目的は、一部前述してありますが、大きくは下記3点。
・Webマーケティング力(リード獲得能力)の強化
・マーケティング強化に向けての自社オウンドメディアの立ち上げと運用
・企業ブランディングの強化による採用力強化

見ていただくとお分かりですが、目的は「マーケティング力強化」がメインとなっています。ここに力を入れるべくマーケティング会社に相談しました。


マーケティング会社に相談

マーケティング専門の会社に相談すべく、5社と面談しRFPを説明。提案を受けていただいたのが5社中4社。お断りいただいた会社はコンペには参加していないという会社でした。

今回の最大の失敗はここのお話です。

4社から提案いただき、社内3名で投票形式で選定したのですが、1社はそもそも全員一致で厳しそうなので除外。さらにもう1社は最初の提案日前日に日程延期の連絡があり、加えてこちらからの連絡に対するレスポンスが悪かったなどの理由があり、結局は2社から選ぶことに。

1社は従業員50名ほどの会社(仮にA社とします)。マーケティング実績に加え、クリエイティブに関しても期待値を上げてくれそうな印象。ただし、自社ツール(サブスクリプション)の導入が前提の提案内容。

【A社】
・マーケティング力:○ 
・クリエイティブ:◎
・Web制作:○
・金額:△(自社ツール)

もう1社は従業員数名の会社(仮にB社とします)。マーケティング実績に関しては、役員の知り合いのマーケターがオススメするお墨付きがある会社。クリエイティブやWeb制作に関しては懇意にしている別ベンダーとやれるとのこと。

【B社】
・マーケティング力:◎(役員のお墨付き)
・クリエイティブ:△
・Web制作:○
・金額:○

上記より、最終的には結果を出すことが自分には求められていたので「マーケティング力:◎」であるB社にました。クリエイティブやWeb制作の部分は最悪自分が手を動かせばなんとかなると思ったという理由もありますが、ここから徐々に見えない部分が露見していくことになります。(このnoteではこのB社を否定するわけではなく、あくまでも自戒を込めてとなりますので、ご了承ください)


ベンダー決定

制作を依頼する会社の選定が終わり、いよいよキックオフ。
スケジュールとしては、6ヶ月で下記項目をパラレルで進行していきます。

 (項目:期間)     
・カスタマージャーニー:1ヶ月
・コンテンツ制作/ライティング:2ヶ月
・Webサイトデザイン:1.5ヶ月
・Webサイトコーディング(Wordpress):1.5ヶ月
・事例記事取材/制作:2ヶ月
・オウンドメディア用記事制作:2ヶ月

先ほど、「今回の最大の失敗はここのお話です。」と記載しましたが、何がそうなのかというとポイントは以下になります。

(決定したベンダーが)
①WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)を書けない
②プロジェクトの課題管理ツールの用意がない(Backlog/Redmainなど)
③デザイン/Web制作の会話ができない

(結果として)
④オウンドメディアは某有名企業を真似たインデックス型コンテンツを提案されたのだが、後々考えると管理が面倒でその必要がなかった
⑤最初の受入テスト(UAT)では表示崩れ含む不具合項目が簡易的に確認しただけで300項目以上
⑥最終的に表示崩れ含む不具合項目は800項目超
⑦納期遅延

上記だけ見てしまうと自分がB社の責任者を悪く言ってるだけのように見えますが、私の思いとしては同じような苦労をして欲しくないと思っております。それは、発注側も受注側もお互いにと言うことです。

なので、次項よりベンダー選定する時には事前に確認すべきポイントを共有しておりますので、読み進めていただけると嬉しいです。


①WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)を書けない

早速ですが、プロジェクトを進行/マネジメントするにあたり、自分が「プロジェクト3種の神器」と思って必要としている
 ①WBS(スケジュール)
 ②課題管理ツール
 ③コミュニケーションツール/方法
があるのですが、その「①WBS」を提出して欲しいと依頼しても要求したものが提出されないのです。

大項目ぐらいは書いてくるのですが、何度お願いしてもBreakdownしたもが提出されないのです。キックオフして2ヶ月が経過し、流石に自分で作って共有しました。。。

■ベンダー選定時の確認ポイント①
・担当PMがWBSを書けるか


②プロジェクトの課題管理ツールの用意がない(Backlog/Redmainなど)

続いて、プロジェクト管理ツールは「カード型の課題管理サービス(無料版)」を提案いただいたのですが、運用方法に疑問を感じたので、自社が契約しているBacklogを使ってもらうことに。

この辺りで、「Web制作経験がないのでは?」と思い始めました。(マーケティング会社であれど、Web制作のマネジメントをしていると言ってたのに。。。)

■ベンダー選定時の確認ポイント②
・Web制作のディレクション経験があるか、課題管理ツールは何を使ってどのように管理しているか


デザイン/Web制作の会話ができない

デザインとコーディングに関しては、B社がいつもお願いしているという下請けベンダー(C社)が行うことになり、B社の責任者を通じてこちらの要求を伝えました。

まずデザインですが、自分の社長からヒアリングしているコーポレートサイトに持ちたい印象(例えば「伝統的な」とか「スタイリッシュ」「シンプル」などのキーワード)と、メンバーでまとめたデザインの参考にしたい参考サイト(6サイト分)、そしてサイト内のパーツでのこだわり(例えばヘッダーの好みなど)をまとめたものを資料にして送付しました。もちろん、このためのヒアリングがある前提です。

出来上がったデザインを見ると、ほぼ参考サイトのままのデザインが3案上がってきました。あれだけヒアリングされてこちらの思いを伝えたのに、結果的に思いが伝わってなかったです。(もちろん、伝えられなかったと言う点もあったと思います)

デザインFIXにはかなりの時間を要しましたが、その後のコーディング工程では、「ここはこうして欲しい」と言う話を技術的な根拠を添えて伝えても、技術的な話は分からないの一点張りで、会話がスムーズに進まないことも多々ありました。こう言うことが多いと、コミュニケーションロスが発生しやすい状況になります。

■ベンダー選定時の確認ポイント③
・発注者の要望を理解して形にできる能力があるか
・ある程度の技術的な知識を持ち合わせているか
 ・「HTML/CSS(Sass)/JavaScript/PHP」がどんな役割を果たす言語か理解しているか
 ・レスポンシブデザインを理解しているか


④オウンドメディアは某有名企業を真似たインデックス型コンテンツを提案されたのだが。。。

インデックス型コンテンツとは、SEOで上位に上げたいキーワードごとにメディアを作る手法で、コンテンツ(記事)を作り切ったら運用しなくても(更新記事を書かなくても)良いという状態にでき、SEO的にも効果が出ているものだそうです。

通常のオウンドメディアだと上位にあげたいキーワードを「カテゴリー」というもので分けて管理します。

どちらもWordpressでの構築を前提としてますが、前者はキーワード毎にWordpressを構築する必要があり管理が煩雑ですが、後者は一つのWordpressでOKなので管理が楽です。

今回はメインのキーワードは4つにありましたので、4サイト立ち上げることになったのですが、このままだと記事制作するユーザ(ライター)は4サイト分のID/PW/URLなどを持ち合わせる必要があるし、Wordpressのアップデートなどはサイト数分必要だしと、管理的な課題があったのです。

そこで、Wordpressのマルチサイト機能を使い、親子サイトとして管理する方法を取り入れることに渋々なったのですが、後々考えるとこれもカスタマイズが必要で、様々な制約が出てくることの始まりでした。。。
マルチサイト構成に関しては下記を参考に調べました。

上記サイトにも一部記載がありますが、Wordpressはプラグインを使いすぎるとサイトが重くなったり、カスタマイズしたものはWordpressのアップデート時に不具合に繋がったりと何かと苦労するポイントが多いのです。

これらの理由で普通に「オウンドメディア」としてWordpressのシングルサイトとしておけば良かったと思ってます。もちろん、インデックス型コンテンツで結果が出ているという記事もあるので、これ自体を否定しているのではなく、自社としての運用体制や今後の展開などを考えると、管理/運用コストが膨らむ要因だなと感じたためです。

■ベンダー選定時の確認ポイント④
・提案内容が自社の管理/運用体制にあっているか
・提案手法の経験/実績があるか
 (ベンダーが試したい手法だから提案していないか)


⑤最初の受入テスト(UAT)では表示崩れ含む不具合項目が簡易的に確認しただけで300項目以上

これらは①②③から容易に想像できたので、受入テストを2回に分けて設定しました。迎えた最初のUAT、私が1時間確認しただけで100項目もの表示崩れ、バグ、仕様違いなどがあり、ここまで酷いかと落胆したのを覚えています。

ここからプロジェクトは火を吹いたことは言うまでもありません。毎日が大変な日々でしたが、このnoteを書くきっかけになったので良い経験だと思ってます。

「なぜこうなったか?」

と言うのを分析してみたのですが、
①B社の責任者はC社から上がってきたサイトを確認せずに私に報告してきた
②C社の窓口(マネージャー)がテストをほとんどしてなかった
③私のチェックポイントをB社C社ともに認識してなかった

と言うことだったのかなと思います。

■ベンダー選定時の確認ポイント⑤
・受入テストでの確認ポイントを言えるか


⑥最終的に表示崩れ含む不具合項目は800項目超

⑤から最終的には800項目超にも及ぶ課題が上がり、毎日修正箇所の確認作業と指摘事項に関する質問のやりとりなど、とてもストレスフルな毎日でした(笑)。

本当におかしな話ですが、⑤から⑥に到るまでに、チェック方法や確認ポイントを1から10まで教えてたりしました。指摘項目の確認中に「こんな指摘事項は無視して早くリリースさせろよ」と言うB社の責任者の発言には言葉を失うこともありました。

■ベンダー選定時の確認ポイント⑥
・受入テストに入る前の責任者の役割を具体的に言えるか


⑦納期遅延

これらの事情があり、最終的には2ヶ月以上の納期遅延(リリース遅延)になり、さらに優先度の低い課題も含めた正式リリースにはここから1.5ヶ月先になりました。

もちろんですが、これは「債務不履行」にあたり「損害賠償」の対象になります。B社の責任者が途中で「納期を守るつもりはない」と言う発言をしたのを強く覚えていますが、これは受注者側からするとあってはならないことです。この後、完全に態度を改めて謝罪してきましたが。。。

発注者にも気をつけるべき「下請法」などがありますが、ポイントはお互いが相手を思いやり信頼関係を築いて進めることが重要と言うことです。なので、私にも多くの落ち度があったと思います。猛省。。。


最後に

と言うことで無事にリリースし、社内外からの評判良く、冒頭でお話したリリース後の集中砲火を避けることができました。

今回お伝えしたかったポイントは、「コーポレートサイト制作で押さえるべきポイント」「ベンダー選定のポイント」についてです。

どのような案件も、要求・要件の確認からQCD(質/コスト/納期)のコントロールを行い、緊張感を持って進める必要があります。

ぜひ、私と同じうような苦労をしなくて済むように、何かの一如になればと思います。


終わりに、

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