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涙に溶けたレモン色。

そう、そこは……いつだったか忘れたが、別れ話をした喫茶店。
本当に些細なことだった。彼が私の浮気を疑って……。
もちろん、浮気なんて当たり前にしていないのだが。
何度説明してもわかってもらえなくて。
まぁ、多分、彼は私と別れたくて難癖つけてきたのかも知れない……。
実際に別れてみたら、彼にはすぐに彼女が出来た。
本当は彼が浮気していたようだ。
……あの時、私はレモネードを飲んでいたのだけど。
急に「別れよう」と言われ動転して、レモネードの味がわからなくなった。
それからは……そこの喫茶店には一度も顔を出していない。
久しぶりに、入ってみようかな?
 
SE ドアを開ける音
 
……うん、何にも変わっていない。私たちが別れ話をした時のまま……。
確か……席は窓際だった。……あぁ、空いてる。
注文、良いですか?……レモネードを一つ。

SE グラスを置くコトン、と言う音
 
……やっぱり……。
やっぱりまだ、わからないや……レモネードの味。
酸っぱさも、少しの甘さも……全部しょっぱい涙の味に変わってしまう。
私は彼が、本当に好きだった。結婚も考えていた。
なのに……どうしてだったんだろう……。
トラウマでレモネードの味がわからない。
閉店間際の喫茶店、まばらに散らばる人々。私の涙の味。
ボーっといろんなことを考えていると、カランとレモネードの氷が、溶けていく音がした。


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