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観戦記: 2024 J2 第16節 横浜FC vs 清水

5/18(土)に行われたアウェイ横浜FC戦の観戦記を書きたいと思います。遅くなってしまいましたので、丁寧に試合を振り返るというよりは、横浜FCの狙いは何だったのか、今後に向けての清水の収穫と課題は何かを中心に書いていきたいと思います。

2-0で横浜FCに内容も結果も完敗

まずはハイライトです。

前半の立て続けのセットプレーに耐え切れず、前半16分に失点。その後、システム変更をするものの、横浜FCもしっかり対応して膠着状態に。後半の立ち上がりこそ、エンジンをかけて押し込む形が増え、後半9分に乾がいわき戦以来の復帰、北爪の同時投入で局面の打開を図ろうとするものの、局面はあまり変わらず。後半30分に西澤とタンキを投入し、再び4-4-2の形に戻したことでようやくシステム上のミスマッチを作り良い形ができはじめたものの、最後のところは崩せず。横浜FCに典型的な前からのプレスとショートカウンターの形に持ち込まれ、最後の後半ATに、伊藤翔選手に恩返し弾となるダメ押しのゴールを決められて2-0で終了となりました。
試合全体のスタッツがこちらです。

横浜FC vs 清水の試合全体のスタッツ

ボール支配率やパス数では上回ってはいるものの、シュート数が18 vs 9、となりました。その背景には、ボール奪取位置が36.2m vs 32.3m、ボール奪取回数が72 vs 57と横浜FCの前からのプレスが機能したこと、逆に清水は機能しなかったことがあります。そして、その理由は後半には改善されましたが、清水の攻撃が中央に偏っていることもありますね。また審判のジャッジ基準という側面では、横浜FCがあれだけ裏取りをしているのに、オフサイドはわずか1となっています。

前半の展開

スタメンとシステムは以下でスタートしました。

横浜FC vs 清水 スタメン

清水は予想通り。吉田→原への変更により、試合の流れで4-4-2から3-4-2-1にいつでも変更できるように、CBもできる原を右SBに置きました。
一方の横浜FCは、予想と2名を変更。ひとつは古巣対決となる伊藤翔に代えて、左のトップ下にベテランの小川を起用。また右CBは岩武ではなく、ガブリエウを起用。今季初めて(?)、ンドカとガブリエウというパワー系の2人を同時先発させました。

前半序盤の横浜FCの狙い

横浜FCの考え方は非常に整備されていました。キックオフ直後に、福森から右サイドにロングボールをいきなり送り、その後清水のスローインに対して、前線から激しいプレスをかけたことからも、その狙いのがわかりましたね。
おそらく横浜FC戦のやり方を、他のチームも真似してくると思いますので、まずはこのシステムにおいては横浜FCが何をやってきたのかを、守備と攻撃に分けて丁寧に解説したいと思います。

横浜FCの前線プレッシング


まず横浜FCの守備(非保持)のプレッシングの局面。この日の横浜FCは、山根・中野を含む前線の5枚とボランチ1枚の合計6名で積極的に前プレスをかけます。これまでのチームの中でもここまで前線に枚数をかけてプレスをしてくるチームはなかったように思います。
まずは基本的には相手38番の高橋選手が、スプリントをして、清水のCBに中切りで寄せる(この図の場合は住吉)。この時に縦のパスコースとなる清水のボランチには、横浜FCの4番ユーリララと7番井上が背後にぴったとついてパスを出させない。こうするとCBは、SB(この場合は山原)にパスを出さざるを得ない。そこに10番カプリーニが中を切りながらプレスをかける。山原からの縦パスのコースにいる矢島には8番の山根がしっかり押さえる。これでボールを奪い切るか、清水の選手が苦し紛れに長いボールを蹴るか、という展開が多く見られました。最終ラインに蹴られた場合は、CBのンドカ・ガブリエウが高さで跳ね返す。このやり方を徹底しているように見えました。
清水が前線プレスを突破して、ゾーン2(ミドルサード)まで両WGは最終ラインまで戻って5バックを形成。前線の高橋とボールサイドと逆にいるトップ下(この場合は小川)を残して、2ラインで人数をかけて守る形を取ります。

横浜FCのセット時の守備

最終ラインは清水の3-4枚に対して5枚と数的優位を作られていること。これにより北川やカルリに縦の楔が入った際には1名が強く前に出ていける形。またこの試合小川選手がいやらしいポジショニングをしていて、もし横浜FCがボールを奪えば、ロングボールで裏を取るよ、という意図が明確でした。これにより、原選手も、思い切って上がることはできないでいました。
逆に攻撃時には、前線プレスからボールを奪えれば、トランジション早く、ショートカウンターを発動し、そのままゴールまで迫る形。
セットしてボールを奪った場合には、両WGの中野と山根がスプリントして、清水の最終ラインまで上がり、5トップの形にして、5対4の数的優位を作る。

横浜FCのボール奪取時の攻撃

そこに対して、中盤を省略して、横浜FCの最終ラインから清水の最終ラインの裏をめがけてロングボールを出す。通れば、小川あたりが抜け出して、一気に清水のゴールライン付近まで持ち上がる。跳ね返されても、最前線で数的優位なのでカプリーニあたりがセカンドボールを狙う。福森という素晴らしいキッカーがいるので、最後はコーナーキックやフリーキックを獲得できれば良いという割り切りでした。
そしてFKやCKの狙いも明確でした。ゾーンで守る清水に対して、キックフェイントやショートコーナーを使うと、ラインを動かすため、選手を見失う傾向にある。特にファー側でそれが顕著ということを見抜かれていたのでしょう。何度か同じように、ショートやニアでのそらしを利用して、ファーに一番ヘディングの強いガブリエウが走り込むという形を
中盤で繋ぐことなどしない、という割り切りのおかげで選手が迷いなくプレーをできていたと思います。
この守備・攻撃戦術のためには、お気づきの通り両WGに、上下動を繰り返すという相当な運動量が求められます。ただここを山根選手、中野選手はさぼることなくやっていました。清水の矢島、ブラガは運動量で勝負するタイプではないので、このギャップを突くような戦術でもありましたね。

横浜FCの先制点までの流れ

この横浜FCの戦術が完全に嵌り、前半の立ち上がりは完全に横浜FCペースになります。長崎戦、山形戦もそうでしたが、清水はこのように立ち上がりから一気に来られると少し弱いところがありますね。そこも含めて横浜FCの狙い通りだったのでしょう。
前半6分、まさに横浜FCの狙い通りの形、GKからのビルドアップでユーリララ、ンドカと繋ぎ、ライン際にいた中野にパス。中野はすぐに、清水の最終ラインの裏に走り込んだ小川にパス。小川はPA付近までボールを運び、インサイドに走り込んだ中野にパス。クロスはブラガがクリアしてCKになります。意図的にピッチを縦に広く使われて、清水側のプレスが間延びして効かずに、コーナーキックを奪われるという展開。これがこの試合1本目のCKでした。
前半9分には、今度は右サイドで井上がボールを受けて、カプリーニにパス。カプリーニはフリーな状態から、左サイドに大きなサイドチェンジ。裏に走った中野に繋がり、中野からユーリララに下げて、ユーリララのシュート。これも清水の最終ラインの右サイドの裏を使われた形。
その直後のGKも、権田にしては珍しくキックミス。中央でユーリララに跳ね返されて、小川に繋がれ、カプリーニにシュートを打たれます。確かにキックミスではあるものの、小川選手を誰も見ていないことが気になりました。逆に彼がうまく清水のDFラインとボランチの間、CBとSBの間にポジションしていたということもありますが。
前半12分にも、前半6分と同じような形でCKを獲得されます。最終ラインの福森から、今度は清水の右サイドの裏に走った高橋にロングパス。ポケット付近で受けた高橋が、小川にバックパス。さらに中野にパスをしてシュート。宮本がブロックしてCKを簡単に獲得します。これで2本目
前半13分にも、ンドカのロングボール原がはじき返したセカンドボールをカプリーニに拾われ(これも狙い通り)、カプリーニはすぐ裏にボールを出します。短く乾いた芝の効果もあり止まったボールに高橋が追い付き、クロス。一度ははじき返しますが、福森、ユーリララとつないで、ユーリララのミドルシュート。ゴールになってもおかしくない良いシュートでしたがワンたちあってまたしてもCK。これで3本目
初めての右サイドからのCK。キッカーは福森で変わりませんが、インスイングでゴールに迫るボールを蹴れます。ニアに入った高橋がファーにそらして、ドフリーになっているガブリエウがシュート。わずかに外れますが決定的でした。
続いて前半15分。宮本のプレスバックによるボール奪取。奪ったかのように見えましたが、カプリーニの上手い転び方により審判はファールの判定。これでセットプレーとしては4本目。福森はまたファー狙いのキック。ジェラが下がりながらの難しい処理。クリアのボールがガブリエウに渡り、ミドルシュート。ディフェンスにかかり、またまたコーナーキック獲得。これでセットプレーがなんと5本目
清水は当然ながら、福森擁する横浜FCの得点源であるセットプレーには警戒していたはず。簡単にセットプレーを与えないこともチームとして統一していたはず。それでもこれだけセットプレーを獲得されてしまいました。さすがにここまで続くといつかはやられることになります。
前半17分の右からのCK。今度は井上とのショートコーナー。何度も連取したのでしょう。井上はオフサイドにならないように、ちょうど真横へのパスで福森に戻し、福森はダイレクトでファーサイドに鋭いクロス。ンドカ、ユーリララ、ガブリエウと走り込み。ラインを上げたことでついていけなかったブラガ、原のマークが完全に外れ、ガブリエウがフリーでヘディング。難しい確度でしたがゴールに吸い込まれました。
今季セットプレーはゾーンで守る清水。同じようなショートコーナーからファーの形でいわき戦の2失点目含めて、今季何度もやらているのでここは修正が必ず必要でしょう。

清水のシステム変更とミラーゲーム化

前半序盤の劣勢とこの先制点に相当な危機感を感じたのでしょう。秋葉監督は早くもシステムを4-4-2から、矢島を右WBに移して、横浜FCと同じ3-5-2-1に変更しミラーゲームの形にします。

横浜FC vs 清水 後半17分からの両チームのメンバー

もともと吉田ではなく原をスタメンに起用したのは、メンバー交代なしに、3-4-2-1に可変できることがあったので、このシステム変更自体は想定されたものだったと思います。一方で、本来の狙いは、最初は4-4-2でスタートしてポジションのズレをついて先制をした上で、試合を落ち着かせるためのオプションとしてこのシステムを使いたかったと思います。ところが、先制をされてしまい、清水側が自らギャップを埋めるための苦しい選択だったと思います。
これにより清水の選手たちは、それぞれ誰を見るのかが明らかになるので、小川選手が浮いてしまうようなことはなくなりましたし、また最終ラインで5枚に対して4枚というような数的優位を作られることもなくなりました。
ただこれは相手にとっても同じこと。横浜FC側もおそらくこのシステム変更は想定の範囲内だったのでしょう。下記の通り、清水のビルドアップに対しての前線からのプレスの強度は落ちません。

横浜FC vs 清水 システム変更後の横浜FCの前線プレス

これまでのJ2の対戦チームは、リードをしている状況で、ここまで前線からプレスをかけてくるチームはいませんでした。前半25分に、まさにプレスが嵌って住吉が前線にボールを蹴りだすしかなかったように、このプレスも有効でした。
また攻撃時は、3バックの脇のスペースを高橋や小川が流れながら狙う形がより鮮明になります。また序盤には見られなかったビルドアップの崩しもみせます。
綺麗にやられたのは前半33分。清水のプレスを上手く外した中野が、ユーリララにパス。ユーリララ→山根→井上→ユーリララ→井上とつないで、井上は前を向いてフリーで受けます。井上は右サイドの山根に当てて、パス&ゴー。清水のカルリ、宮本、中村の3人を引き付けて、ワンタッチでボールを運び、カプリーニに縦パスを入れてまたパス&ゴー。カプリーニは住吉を背負って井上にダイレクトでレイオフのパス。その流れで3番目の動きをしてマークの山原を完全に振り切って右サイドのスペースに走った山根選手にスルーパス。清水のお株を奪うような流れるような攻撃。山根選手のクロスの質が高くなくて助かりましたが、完全に崩されたシーンでした。
続いて、前半33分には、山原からのカルリの縦パスに対して、ガブリエウが思い切って前に出る守備をしてカルリからボールを奪取。カルリは思わずファールで止めてイエローカード。その後のFK、CKとセットプレーのピンチを招きます。その流れからも、福森の裏抜け、カプリーニの裏抜けと立て続けにピンチを招きます。
前半38分にも、押し込んだ状態で清水がボールを保持しますが、山原のところで出しところがなく、住吉にバックパス。横浜FCはこれでラインを上げて前に圧力をかけます。高橋から宮本への縦パス、宮本から中村への縦パスと中央突破を試みますが、ブラガにボールが入った時に詰まってしまい、横浜FCにボールを奪われます。逆に横浜は手数をかけずに選手が次々と裏に飛び出します。カプリーニが抜けますが、住吉が体の強さを発揮してボールを奪って事なきをえます。
その後も同じように清水は、横浜のディフェンスのセットの前でゴールを回しますが、外側で回しているだけなので、横浜FCの守備陣はほぼ定位置から動かずに守れていました。
その後も横浜FCが優勢にゲームを進めますが、最後の質の部分に助けられて、1-0の横浜FCリードで前半を終了します。

前半の総括

まず前半のスタッツはこうなりました。

横浜FC vs 清水 前半のスタッツ

清水のシュート数は、枠内シュートは最後のCKからの住吉選手の当たり損ねのものが一本のみ。パス数も200本以下と清水としては非常に少ない数。警戒していたセットプレーも前半だけでCKを6本、相手DFが上がってくるFKも2-3本取られています。ボール奪取の位置及び回数も横浜FCが大きく上回りました。更に、清水は中央の攻撃が約半数と、攻撃が中に偏ってしまいました。
前半の時間帯別のスタッツはこちらです。

前半の時間帯別の保持率とシュート数

横浜FCの出だしが素晴らしく、清水が4-4-2のシステムで先制点を奪われるまでの前半15分は完全に横浜ペース。ポゼッションは56.1% vs 43.9%、シュート数は5-0。その後システムをミラーにして、清水の保持率は回復しましたが、これは横浜FCがしっかりとセットして守っていたからであり、どちらかというと「持たされていた」形。これだけ清水が苦しめられた前半はこれまでなかったように思います。
加えて横浜FCの戦術に味方したのがピッチのコンディション。試合後に何人かの選手が語っていましたが、芝にあえて水をまかずに乾いた状態で、ボールが止まりやすい状況を意図的に生み出していました。だからこそ、横浜FCが裏に出したロングボールは止まりやすくて、ゴールに流れませんでしたし、逆にショートパスを繋ぐ清水のスタイルには合わずに、いつもよりもパススピードが出ずに、パス数が200本以下という形にもなりました。このあたり、何としてでも清水に勝ちたいという横浜FCの執念のようなものを感じました。

後半の展開

後半の立ち上がり

後半は両チームともに交代なしでスタートします。清水は変わらう3-4-2-1のシステムですが、ハーフタイムに秋葉監督から相当な喝があったのか、後半の立ち上がりは、清水ペースでゲームが進みます。
後半1分、前半では見られなかった、北川が相手最終ラインの裏に出て、CKを獲得。その後も、シンプルに攻め切るような攻撃が見られるようになります。
後半2分には山原、後半4分には宮本のシュート。そこで獲得したCKからのこぼれ球を中村が強烈なシュート。これはガブリエウが頭でブロックします。
そして後半6分のCK。山原のキックに、ニアでうまく合わせたカルリ―ニョスのヘディングシュート。入ったかと思いましたが、これは横浜FCのGK市川がスーパーセーブ。さらにこぼれ球を高橋が折り返しますが、北川には届かず。
今度は後半6分、清水が見事な攻撃。権田→住吉→山原と繋ぎ、山原が中に運びながら、自分の空けたスペースにうまくポジションしたカルリ―ニョスに展開。宮本がオーバーラップしてボールを受け、再びカルリに落として、カルリから右の原に展開。原からブラガへの縦パスが出て、2 vs 1の局面を作ります。ブラガのドリブルがうまくいかずに奪われますが、流れの中では最も良いシーンでした。

清水後半6分のチャンスのイメージ

それでも得点には繋がらず、秋葉監督は切り札を投入します。後半9分に、カルリに代えて、怪我から復帰した乾、同時に矢島に代えて北爪を投入します。システムは3-4-2-1のまま、右WGには本職の北爪を投入。乾はカルリのいた左サイドのトップ下に入ります。

横浜FC vs 清水 後半11分からのメンバー

早速、この2人が絡みます。後半9分。原→高橋→住吉と繋ぎ、住吉から山原にパス。このパスは窮屈でしたが、乾はうまく相手3人の間で受けて、トラップせずにダイレクトで山原へ。ここで相手を引き付けてパスを捌けるところが乾のうまさですね。山原もダイレクトで中村に展開。中村はうまくタメを作って、フリーになった原へ。横浜FCは山原・乾のところで編めようと重心が右に言っていますので、左サイドは少し手薄になっています。そこを、原、ブラガ、北爪と渡り、3番目の動きでハーフレーンで裏を取った原に北爪がダイレクトでのスルーパス。完全に原が抜け出します。残念ながら原のキックは相手に当たって、GKにセーブされますが、相手のプレスを交わしたうまい攻撃でした。
さらに直後の後半10分。中村が井上から中盤高い位置でボールを奪い、宮本が北川に鋭い縦パス。北川からブラガに落として、ブラガはドリブル突破。相手はCKに逃げるのが精一杯でした。CKから住吉がヘディングでゴールを狙いますがファールの判定。ただ明らかに勢いに乗る清水。前半の序盤とは全く逆の展開になります。ただこの展開で同点にできなかったことで、徐々に横浜にペースが戻ります。
そのきっかけは後半16分のシーン。乾のトラップに対してガブリエウが前に身体を入れてボールを奪取。カプリーニにスルーパスで決定的になります。乾はカルリ―ニョスと同様、この芝には苦しんでいた様子。試合勘の部分もありますが、少しボールロストが目立ちました。

後半の中盤

ここから息を吹き返したのが横浜FC。初心にかえったのか、最終ラインの裏にロングボールの戦術を徹底してきます。後半18分は、ガブリエウから高橋、後半19分には、福森から同じく住吉の裏に。走り込んだカプリーニのクロスはバーに当たります。
こうした流れを受けて、後半20分に松崎を投入しますが流れは変わりません。
後半21分にも横浜FCの良い攻撃。右サイドを起点に、カプリーニがキープ。カプリーニ→山根→カプリーニとワンツーから、裏に走った小川にスルーパス。権田がキャッチします。攻撃に転じたい清水ですが、逆に押し込まれてしまいます。
清水は3枚を交代しているのに対して、横浜FCは先発メンバーのまま。それでも運動量で清水が上回る形にはなかなかならず、後半開始早々の勢いが影を潜めてしまいます。
どちらのチームも疲れが見える中で、横浜FCは最初のカードを、清水は最後の交代カードを切ります。
後半28分に高橋→櫻川、小川→伊藤の交代。伊藤翔選手は古巣対戦となりました。しかしこの高橋利樹選手と小川慶治朗選手は、運動量豊富で何度も裏に走り抜けていて、素晴らしかったですね。小川選手をスタメンで抜擢した四方田監督も見事でした。

後半の終盤

清水は後半30分に、宮本→タンキ、原→西澤を交代。システムを「戦術乾」の4-4-2に戻し、乾を今季初めてのボランチに起用します。

後半30分からの両チームのメンバーとシステム

これにより、システムのギャップを作ることになり、また清水が勢いを取り戻します。
若干窮屈な形ですが、乾、西澤、松崎、中村の4人が流動的にポジションを変えることで、それまでマークする選手が明確だった横浜FC側の守備にも迷いが生じ、少しではありますが、マークが離れます。
ここでいやらしかったのは福森選手。西澤のタックルを受けて、足を痛めるそぶりをしてうまく時間を使います。その流れで横浜FCは、福森→岩武、井上→和田、中野→中村と3枚の交代枠を使い切ります。
ここから時間稼ぎモードに入る横浜FC。清水はタンキという明確なターゲットに向けたロングボールも織り交ぜながら、それでも同点ゴールを目指します。
後半44分には松崎が右サイドでの仕掛けから深い位置でFKを獲得。この日最大のゴールコールで清水のサポが盛り上げます。キッカーは西澤健太。ただキックが大きくなり、シュートには至りません。この流れの中で6分のATに突入。左右から崩しにかかりますが、横浜FCの守備は最後まで崩れません。
ATの3分にはカウンターから、伊藤翔→中村でクロス。カプリーニにたっぷり時間を使われてしまいます。
さらにAT6分に同様の形。和田→伊藤翔→中村→櫻川。櫻川のヘディングミスでしたが、走り込んだ伊藤翔の目の前に落ちて、伊藤翔によるゴール。これで清水としては万事休すでした。この終盤で、この暑さの中、山原や高橋には体力は残っていませんでしたね。
2-0で敗退。清水の連勝記録は7でストップしました。

後半の総括

後半だけのスタッツは以下の通りです。

横浜FC vs 清水 後半のスタッツ

清水は、特にパス数やボール支配率について、前半よりも改善しました。それでもシュート数やゴール期待値は横浜FCに上回られる結果になりました。横浜FCが相変わらず高い位置で、回数多くボール奪取できていることもそうですね。前半、後半通じて完敗に近い形だったと思います。
時間帯別のスタッツはこちらです。

後半の時間帯別の保持率とシュート数

後半序盤の15分間は、清水は5本シュートを放つなど、勢いがありました。一方で、それ以降の30分でシュートは横浜の7本に対して1本。ボール支配率は増えましたが、効果的な攻撃には繋がっておらず、多くの課題を残しました。

試合の総括

四方田監督のコメントがすべてを表しているように思います。

ゲームの入りから自分たちの攻守における前がかりの勢いがピッチで本当によく表現できましたし、押し込んだ中からセットプレーですが、先制できたことは非常に大きかったと思います。相手が3バックに変えてきたりして、後半はやや押し込まれる時間帯もありましたが、慌てずに守れたことと、後半途中からまた押し返してハイプレスが効いて、相手陣に攻める時間を長くできました。相手もフォーメーションをいろいろ変えながらなんとかゴールを取ろうと戦ってきましたが、それらに自分たちもうまく対応して、最後はうまく試合を締めながら追加点を取れたことは、あとにつながる非常に良い勝利だったと思っています。

試合後 四方田監督

この日先発に抜擢した小川選手の狙いも大当たりでしたね。

--小川 慶治朗選手とカプリーニ選手のシャドー2人でスタートしたのは9試合ぶりですが、その狙いは?
守備の強度を上げることと、(相手の)背後への狙いを含めての慶治朗の起用でした。

試合後 四方田監督

ピッチコンディションやVARがないというJ2の審判基準も含めて、今後対戦するチームは「STOP THE SHIMIZU」を合言葉に、横浜FCの戦い方を研究して、多くのチームがそれを模倣するのではないでしょうか。

  • 守備は引いて守るのではなく、前線から人数をかけてハイプレスする

  • 清水の縦パスに対して、背後からファール覚悟で激しく当たりにいく

  • 相手に保持されたら5枚で守り、ラインを下げてでも中央を固めて最後はやらせない

  • 攻撃は、中盤を省略して相手の最終ラインの裏および跳ね返された場合のセカンドボールを奪う

  • シュートに落ち込めなくても、CKや深い位置でのスローインをできるだけ獲得する

  • FKおよびCKでは、ショートコーナーやニア逸らしなどワンクッションをおいて、相手のゾーンを動かしてから、ファーサイドで勝負させる

  • セットプレーのこぼれ球を狙って、二次攻撃をする

この辺りが、清水の対策として思いつくところです。後半戦に向けて、清水が、こうした清水対策に対して、どう上回っていくのか。個人の質の面ももちろんそうですが、戦術面でも対策が必要のように感じます。

こうした状況下で清水が、どのようなステップアップ、積み上げを示していくのか、後半戦のJ2での戦いが本当に楽しみですね。

国立では必ずやり返しましょう

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