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わが街の伝統産業  愛知県・半田市

第62回 愛知県半田市 ~醸造業と海運業で栄えた黒壁の蔵が立ち並ぶ半田運河は200年続く醸造半島

 愛知県半田市。人口は約11万6000人。周辺には半田運河があり、酢や酒などの醸造業が盛んで、江戸時代に江戸へこれらを運ぶ海運業で発展した街。

 運河沿いには黒壁の蔵が立ち並んでおり、今でも当時の雰囲気が感じられます。また、半田駅に立つとひときわ大きな高い建物が目につきます。これがお馴染みのミツカン本社です。

 半田市の醸造産業は、徳川御三家筆頭の尾張徳川家の保護を受けたことに始まります。運河を利用した廻船業の発展に伴い、当時の日本の中心地である江戸に酢や酒などが運ばれ、繁栄を築きました。

 中でも酒は、江戸と上方(当時の大坂)の中間に位置することから、「中国銘酒」として親しまれ、18世紀末ごろには江戸に入る酒の3割程度を占め、半田を中心とした酒造業は一大産地になったようです。

 半田市の酒造業の中心は、1844年創業で『國盛』の銘柄で知られる中埜酒造。国の繁栄を願い、それとともにわが酒の盛んなることを願って名付けられた清酒。

 1985年(昭和60年)に昔から使っていた酒蔵を「酒の文化館」として観光施設とし、日本酒に関する知識や半田市を中心とした酒造りの歴史を今に伝えています。利き酒コーナーもあり、清酒の試飲もできる施設となっています。

 清酒の製造工程から発生する酒粕を利用したのが「酢」。1804年に造り酒屋を営んでいた中埜又左衛門氏がミツカンを創業して、酒粕から粕酢を醸造するのに成功しました。江戸で「すし」に出会ったのが開発のきっかけだったようです。

 成熟した粕酒だけを原料としたお酢は、飴色の深い色合いと芳ばしい風味、口当たりのなめらかさが特徴で、和食に最適な仕上がりになっています。

 1974年(昭和49年)に「味ぽん」が登録商標され、1997年(平成9年)には発酵技術を応用して納豆に参入。2015年(平成27年)11月にミツカンミュージアムが開館され、お酢づくりの歴史や醸造の技術、ものづくりへのこだわり、すしや鍋などの食文化の魅力を伝えている施設もあり、家族連れで楽しめる施設となっています。

 半田市を中心とした知多半島地域は、清酒や酢のみならず、八丁味噌やたまり醤油を生み出した醸造文化を築いた土地柄で、「醸造半島」とも言われています。

 酒づくりに適した気候風土や良質な酒米と豊かな湧き水に恵まれたことに加え、運送に便利な運河を中心とした海上交通が整備されていたことが半田市の醸造業と海運業が発展した大きな要因です。

  提供:伝統産業ドットコム

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