わが街の伝統産業 石川県・小松市
第86回 石川県小松市 〜「勧進帳」の舞台・安宅の関がある小松市は人間国宝を数多、輩出した『九谷焼』の街
石川県小松市。金沢市の南部に位置し、人口は約105,000人。建設機械メーカー大手のコマツの企業城下町。小松と聞くと、市内にある「安宅の関」を舞台とした歌舞伎の「勧進帳」が有名です。兄・源頼朝から逃れるため、源義経と武蔵坊弁慶が山伏に変装して奥州・藤原氏へ向かう途中「安宅の関」で、役人にバレそうになった義経を弁慶が機転を利かせて手打ちにし難を逃れ、その後、弁慶は義経に非礼を詫びた話です。江戸時代から400年続く歴史ある歌舞伎の定番となっています。
その小松市の伝統産業が『九谷焼』。伝統工芸王国である石川県を代表する逸品です。約350年以上前に、九谷村で始まったことから『九谷焼』と呼ばれるようになったようです。一旦は廃窯となったものの、約200年前に小松市内の花坂街町で、本多貞吉が良質な陶石を見つけて本格的に磁器の生産が始まったのが現在の九谷焼につながったといわれ、市内には九谷焼の工房や窯があり、人間国宝である名工を数多、輩出しています。
小松市は『九谷焼』の原料となる陶石の産地でもあります。明治時代に入ると殖産興業により、『九谷焼』は海外に積極的に輸出されるようになりました。『九谷焼』は日本を代表する色絵陶磁器で、最大の魅力は絵柄にあります。「上絵付けを語らずして九谷はない」といわれるほど色絵装飾は豪華絢爛です。
九谷といえば「九谷五彩」。上絵付けの特徴として、赤・黄・緑・紫・紺青の五彩手という見事な色彩効果と優美な絵模様を表しています。豪華絢爛な「赤絵金襴手」の『九谷焼』で、「ジャパンクタニ」とも称されました。
その『九谷焼』は、1975年(昭和50年)に国の伝統的工芸品に指定されており、また、翌1976年(昭和51年)には石川県無形文化財に指定されました。人間国宝を輩出した土地柄らしく、伝統の技法を踏まえながら、作家一人ひとりが創意工夫によって様々な『九谷焼』が作られています。
最後に、小松市内には北陸を代表する粟津温泉があり、中でも法師旅館は718年に創業された1300年の歴史がある北陸最古の温泉です。館内にある小堀遠州ゆかりの庭園は、四季によって趣がある名園です。
提供:伝統産業ドットコム
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