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歯科医師国家試験 合格率 低い理由&推移


歯科医師国家試験 合格率 低い理由&推移


近年、歯科医師国家試験の合格率が過去になく低迷しています。

歯科関係者でない方は、

「歯学部の偏差値が低下しすぎて、今の学生のレベルでは国家試験に受からなくなっているのでは?」

と想像するかもしれません。

実態としては、そのようなことはなく、

「歯科医師国家試験に受かる人数を厚生労働省が少なくしている」

という調整がメインの理由だと言われています。

昔は、「歯学部に入って進級していけば誰でも歯科医師になれる」という時代も存在したようですが、今は全く違います。

そこで、この記事では、

・現歯科医師国家試験の合格率の推移
・歯科医師国家試験の低い理由

について紹介していきます。

歯科医師国家試験 合格率 推移


無断転載・無断使用は固くお断りします。

まず最初に、歯科医師国家試験の合格率の推移についてです。

こちらのグラフを見ればわかるように、2014年以降から現在まで歯科医師国家試験の合格者人数が2,000人程度で推移していることがわかります。

この2014年という時期は、次の章で紹介する歯科医師会の働きかけの影響にもつながってきますので、よく覚えておいてください。

1990年代には90%程度もあった合格率がここまで低下しているのは、驚きです。


無断転載・無断使用は固くお断りします。

文部科学省は、⻭学部⻭学科の⼊学定員⼀覧(令和5年度)という資料で、全国27大学29学部の歯学部定員を公表しています。

⻭学部⻭学科の⼊学定員⼀覧(令和5年度)

全国27大学29学部の歯学部定員は2,652 人となっており、国家試験合格者が2,000名程度であることを考えると、600人程度の人は国試に落ちるという仕組みになっていることがわかります。

しかし、実際は、歯学部の不人気から、入学者数は2,200人程度であるため、200人程度が落ちる試験と見ることもできます。

ここに、

・国試に落ちた方々
・留年を繰り返して卒業した方々

が加わるため、歯科医師国家試験の受験者数は3,000人程度まで増加するという仕組みになっています。

その結果、6割程度の合格率が推移しているのが現状というわけです。

歯科医師国家試験 合格率 低い理由は?

現在、歯医者のイメージとして、

・コンビニより多い歯医者
・歯医者の5人に1人が年収200万未満
・歯医者はワーキングプアで敗者

と揶揄されるようになったこともあり、厚生労働省も歯科医師会もこの現状に危惧しています。

なぜなら、歯科医師数が過剰となってしまった結果として、

・歯科医師が余ってしまい、患者の奪い合いになる
・普通にやっても稼げなくなる
・稼ぐことを目的とした歯科医療が増える
・その結果、患者が不利益を被る
・歯科医療は命にも関わるため、とても危険

という点が現実化しており、医師不足が叫ばれる医科とは逆の状況となってしまっているのが歯科の現状です。

国民に対して、安全・安心で質の高い歯科医療を提供する観点から、現在の過剰な歯科医師数は、危機的状況ともいえるかもしれません。

こうなってしまった最大の理由は、歯科医師数の多さです。

そこで、厚生労働省は、何年も前から「歯学部の定員削減」を各大学へ呼びかけてきました。

令和3年2月19日「歯科医療提供体制等に関する検討会」

グラフを見ると定員が削減された様子がわかりますが、歯学部不人気による受験者数の減少で、元々定員割れしていた各大学が、受験者数に定員を合わせたという見方もあります。

各大学歯学部の入学状況及び国家試験結果等(令和5年度)

また、定員削減に大きく寄与しているのは、国立大学の定員削減(30%以上)が大きく、ほとんどの私立大学は、20%程度の定員削減にとどまっています。

一部、30%以上削減している私立大学もありますが、受験者数の大幅減少による自然削減とも捉えられます。

実際、私立大学の経営は、定員を削減することによってマイナスになる影響が大きく、厚労省の呼びかけに対して、求められる程度の定員削減を行ってこなかったというのが多くの方の見方です。(ある程度は削減していますが、厚労省の呼びかけ程度の削減ではありませんでした)

そんなやりとりが10年以上近くも続いたため、厚生労働省は、強行手段に踏み切ったのです。

それが、合格者数の絞り込みだと言われています。

これには、歯科医師会とのやりとりも影響しているとみられます。 

歯科医師会が示した2014年の「歯科医師需給問題の経緯と今後への見解」において、

「年間新規参入歯科医指数は、1,500名を上限と考える」

という見解を表したのです。

歯科医師需給問題の経緯と今後への見解


出典:厚労省「歯科医師需給問題の経緯と今後への見解」

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000071236.pdf


この見解は、厚労省の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」においても参考資料として使用されていることから、合格者数の絞り込みにおいて、ある程度の影響力があったものとも推測できます。

つまり、

◎厚生労働省
 →入学定員を削減してほしい
 (歯科医師数を削減したい)

◎歯科医師会
 →入学定員を削減してほしい
 (歯科医師数を削減したい)

◎私立大学
 →入学定員を削減しない

という3者の意図から、

私立大学が求めれた水準の入学定員削減をしないので、
厚生労働省が歯科医師国家試験合格者数を絞り込む

という調整により、歯科医師数の人数調整を図っている、というのが、歯科医師国家試験の合格率が低い理由につながってきます。

まとめ

まとめると、このような流れになります。

歯科医師数が増えすぎたことにより、歯科を取り巻く様々な問題が発生
 ↓
文部科学省は、各大学に歯学部の定員削減を呼びかけ
 ↓
私立大は求められた程度の定員削減を実施せず(10年以上)
 ↓
歯科医師会が合格者は1,500人以下が望ましいと示す
 ↓
厚労省は、強行手段として合格者の絞り込みを実行
 ↓
2014年以降から合格者人数が2,000人程度で推移

現在、歯学部に属する学生にとっては、歯科医師国家試験の合格者数減少により、試験に合格する難易度は上昇しました。

しかし、歯科医師になった後の待遇は少しずつではあるものの、変わってくるかもしれません。

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