シェア
「木枯らし1号!」 そう呼ばれて、もうほとんど腰を浮かせていた小林一郎少年はパイプ椅子の上に尻餅をついた。いや、聞き間違いだろう。小島徹の次は、間違いなく小林一郎のはずだ。そうすると、壇上から校長先生がもう一度、はっきりとした口調で 「こがらし、いちごう!」 と読み上げた。小林少年は今度こそ立ち上がって、それと入れ違いに、黒い筒を手にした小島少年が隣の席に腰を下ろした。 小林一郎少年は、こうして木枯らし1号少年になった。春と呼んでも差し支えない、うららかな三月だった。